~悲劇のヒロイン気取りですわ...~
この時の私はまだ自分の置かれた状況が分かっておりませんでした。
と言うより、勘違いしておりました。
絶対に誰かが、自分に同情してくれると、思っておりました。
エルス様たちが悪いのだから。
捨てられてしまった私は可哀想な令嬢。
そんなような悲劇のヒロインを気取っていたのです。
「今日は...お茶会だわ。」
正直そんな気分ではございませんでした。
でも、失恋はお茶会で癒す!!!(お茶、というより、メインはお菓子ですわね)
同性のご友人の方々に、文句をたくさん言ってもらえれば、スッキリするはずですわ!
ダイエットする、という決意はどこへ行ったのでしょう。
婚約者と浮気相手にあんなにズタボロに言われてもなお、私はダイエットを後回しにしようとしたのです。信じられないですね。
「目が腫れているわね...」
ドレッサーの前で目元を触りながら呟く。
すると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
「クラリスお嬢様?入ってもよろしいですか?」
メイドの一人だ。
「大丈夫よ。」
「失礼致します。」
彼女はレイラ。私が幼い頃からこの屋敷で働いていました。そのときレイラも、まだ子どもだったが、一生懸命働いていました。私のお姉さんのような存在です。
「クラリスお嬢様、目が...」
やはりレイラは気づきました。まあ、これだけ目が腫れていたなら誰でも分かるかもしれませんが。
「ええ。どうしたらいいのでしょう...これからお茶会なのに。」
「お嬢様。このレイラにお任せください!」
レイラは自信満々ににっこりと笑った。