~ぽっちゃり令嬢の両親のご登場ですわ!~
がーん。
頭を思いっきり鈍器で殴られたような感覚。
そこからは、無我夢中で走ってその場から逃げたため、よく、覚えていないのです。
そのときの泣きながら走る私の顔はきっと、本当に無様だったでしょう。
涙でお化粧がぐしゃくしゃになるのも構わずに走り続けました。
(この頃、私はお化粧をとにかく分厚ーーーくしておりましたので。)
とにかく走って走って、自分の家まで逃げ帰りました。
家に帰ると、使用人が私を見て、びっくりしたような顔をしました。
そして、すぐさま、その中の一人が私の父と母に報告に行きました。
すると使用人から私の様子を聞いたらしい、父と母は慌てた様子で、私のもとへと来てくれました。
玄関口で、父と母は私を抱き締めてくれました。
リーフィティア侯爵と外ではお堅くいる父ですが、実は娘である私にとてつもなく甘いのでした。
母も父と同じく、私を甘やかしました。
「クラリス、可哀想なクラリス。お前は悪くないよ。」
「クラリスのどこに不美人な要素があるっていうの。」
今思えば、私は幼少から、立派な体型な方だったので、周囲からからかわれることもありました。
それでも、そんな私を両親は、可愛い、世界一可愛いと愛してくれました。
そして、食べている姿が可愛い!と、私に食べ物をたくさん与えました。私も好きなものをもらえて喜んでいたので、父や母はより一層食べ物を私に与えました。
そんな家庭で育ったものですから、このふくよかな体型をあまり気に止めずにここまで来てしまいました。
両親は悪くないし、恨むことができないのが、こんなにも辛いとは...と思いました。
父は、以前はスリムな体型でしたが、今では少しだけ太ったようです。
母は、以前と変わらず、その美貌を保ち続けていました。
そこで、私は気づきました。母はきっと日頃から美に気を配っているのだ、と。
私が知らないだけで、母は見えないところで努力していたのでした。
それを思うと、両親に甘えて、食べ物を食べた後にだらけてしまい、太りに太って婚約者に見捨てられた自分が、情けなくて仕方がありません。
私は両親の腕の中で決意しました。
(美しくなって、エルス様とあの女を見返してやる...!)
しかし、後に私は、さらなる困難に気づくことになります。
見返すべき相手は二人だけではなかったのです。