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苦手な方はご注意ください。

東方外遠記シリーズ

AnotherStory 異世界の強者達の大乱闘

作者: 颯人

参加してくださった先生の簡単なキャラ紹介


終作先生から終始終作


男性で年齢不詳。身長は大体178cmで体重不詳である。


半神半魔のハーフであり、始祖神と大罪「強欲」の力を持つ悪魔の種族。今回は始祖神の種族のみにして登場。


性格は紳士的な人格であり、その仕草、行動など一挙手一投足のどこを取っても模範的な紳士であると言わしめられる。口調はどのタイミングでも全て敬語である。


能力 全てを見る程度の能力

ありあらゆる、あり得ないであろう確率の未来の分岐まで見通せる。能力無効化などの影響も完全に無効化される。彼に見れぬものなし。



ファム先生から安倍桜


女性で年齢不詳、身長は大体150cmで、勿論体重は不詳。


白狐の妖神と人間のハーフ。

それぞれが馴染むことで人間でも妖怪でも神でもない何か、に成っている桜のみの種族である。


性格は気さくで誰でも話しやすいものの、上から目線での物言いがかなり強い。


能力 ありとあらゆる術を操る程度の能力


一度見れば同じ物と本家の対抗策を、二度見れば改良した物を。三度見ればソレの応用した物を使うことが出来る。能力だろうと、観測出来れば再現可能。



狼天狗先生から狼


男性で年齢不詳、身長は163cmで体重は50kg


種族は狼天狗というものであり白狼天狗と黒狼天狗のハーフ。毛の色は白ではなく鼠色っぽい。


性格は明るく元気で頑張り屋であり、優しい言葉遣いをする。


能力 自然を操る程度の能力


その名の通り、地や水、風と言ったあらゆる自然を操ることができる。


甘味処アリス先生から日向大和、博麗霊乃


日向大和


男性であり年齢不詳、身長は大体175cmくらい、体重は不詳。


種族は人間であるが、頭に大角がある。ただ、物理的にこのツノには触れることはできず、ただのお飾りとかしている。


性格は性格は非常にサバサバとしており、大人の男口調で話す。だが武器を振るうときや攻撃するときなどは粗野で乱雑な口調が目立つ。


能力 運命に弄ばれる程度の能力


たった1つの運命に弄ばれるため、決して死なない。この運命とは言わばやがて遂げる結末であり、それを達成するために死なない。死んでも復活する。この復活能力は根源でも、外なる神由来のものでも、一切妨げることはできない。



博麗霊乃


女性であり、年齢不詳。身長は大体145cmくらいであり、体重は不詳。


種族は人間である。


性格は非常に穏やかで、あまり戦いを好まない。ただし悪を許さぬ正義の人であり、非常に思慮深い。


能力 知を持って武を制す程度の能力


自らの知識の限り力を支配することができる。例えば、霊乃は切断力という言葉を知っているので、全ての斬撃の切断の力を無効化できる。つまるところ、これがあれば概念によるものでなければ斬られない。同時に、自らやその攻撃に切断力を付与すれば、霊乃の全ての攻撃には切断力が含まれる。この能力はその力の威力も司ることができ、その数値は無限〜零まで自由に変更可能。

霊乃の知る力

・概念の力

・武器を切断する力

・知識量の力

・筋力

etc



紅夜ノ阿灸先生からティアーシャ


女性であるが、男性の心を持っている。年齢は10代後半くらい、身長は150cm前後で、体重は不詳。


種族は吸血鬼であり、性格は男性っぽく口調も結構乱雑である。


ちなみに元々は普通の人間の20代の男性サラリーマンだったが、事故に合って亡くなり転生した。そして転生した後の姿が今のティアーシャの為、男性の心を持っている。


能力は無いが、血を吸った相手のスキルを取得することが出来る。また『解析者』というティアーシャをサポートするガイドがいるが、今回は出てきません。



九十九竜胆先生からサナ・ブルクハルト・ヒガシヤマ、黒峯 帝


サナ・ブルクハルト・ヒガシヤマ


女性であり、年齢は20代前半くらい。身長は170cmで体重は不詳。


種族は人間だが、ロシア人と日本人のハーフである。


性格は時々偉そうな振る舞いをするが、根は素直。勝敗に拘りを持つものの、負けた時は素直に負けを認める実直な性格。


能力は輝火(かがほ)といい、能力名の由来は、彼女の出す火が金色に光り輝きながら燃え盛るからである。この金色の火は極端に温度が高く、最大8000〜10000度もあるので、使用者本人以外は近づくだけでその熱に焼かれてしまうという恐ろしい能力。


黒峯 帝


女性であり、年齢は20代前半くらい。身長は156cmで体重は不詳。


種族は人間で、純日本人。


性格としては、人に対しての当たり方が酷く冷たい。


能力は氷帝(ひみか)といい、能力名の由来は、氷を操り、纏う姿が宛ら『帝』の様だった事から。彼女曰く、「私がその気なら絶対零度の基準すら塗り替えられる」と豪語する程に強大で、能力が強過ぎるが故にコントロールが利かない事もある。


灼熱地獄も氷河に変えられるので、火は全く苦手としない他、本気を出した際の冷気が絶対零度の定義である-273℃を遥かに凌駕し、その温度実に-6000℃にもなる。



八雲優一先生より大丈仁


大丈仁


男性であり身長175cm、体重は60kg代。


種族は人間である。


性格は明るく、常にニッコリ笑っている。アホ毛が特徴。



私の作品より白谷夏姫、白谷磔


白谷夏姫


女性であり、年齢は10代前半。身長は160cmで体重は43kg。


種族は月人と人間のハーフで磔の娘である。


性格は真面目で頑張り屋、だが時々世間知らずな台詞を吐くこともあり、融通が効かないことも。敬語とタメ口が混ざる口調で話す。


能力は今回は使用しないので説明を省きます。


白谷磔


男性であり、年齢は24程度。身長は172cmで体重は68kg。


種族は人間だが、ごくわずかに神の血も流れている。


性格は基本的に誰にでも優しく、困っている人を放っておけない性格で、意外と常識人で苦労人。たまにはっちゃけます。


能力 何事にも動じずに行動する程度の能力


相手がどんなに強力な技を使ってこようが、磔の知らない力や技を使ってこようが、この能力で相手を分析し、動じずに最善の行動をすることが出来る能力。


簡単に言ってしまえば油断も隙も無くなり、常に相手より有利に戦えるという能力だが戦闘以外ではこの能力は発動せず、相手との力の差が有りすぎると上手く発動しない。



用語説明


世界を越えし者


凄く簡単に説明すると常人達よりも圧倒的な膂力を発揮することが出来る。詳しい解説が見たい方は私の作品の『東方外遠記』の世界を越えし者とはの話を見てください。


説明がかなり長くなるのでここでは省略させて頂きます。

「ふぅー、弓術の鍛練はこんなもんか。やっぱり複雑な動作をしながら射ると命中率が悪くなるな。」


とある世界で一人の男が矢を回収しながら呟く。彼はどうにも鍛練の結果に納得出来ていないようだ。


「まあ、いきなりは上手くならないしな。鍛練あるのみか。」


独り言を呟く彼は、黒色の短髪で黒のYシャツを着て、袖を肘が出るギリギリの所まで捲り、その上に赤色のスーツの上下を着て黒色の革靴を履いている格好をしている。


「止まった状態ならほぼ百発百中なんだけどな。」


「いや、そもそも跳躍して体を回転させながら弓矢を放って的の真ん中に当てれてるのが可笑しいですよお父様。」


彼の独り言を聞いてジト目で呟く少女が彼の後ろに立っていた。黒色の長髪でポニーテールの髪型であり、少女の服装は白くて半袖・襟の広いシャツのようなものの上に、左肩側だけ肩紐のある、赤いサロペットスカートのような物を着ており、ボタンが前面中央にあって膝上くらいからそのボタンを空けている。靴は茶色のブーツを履いている。


「これくらい出来ないと戦闘の時に不利になるだろ?止まったまま弓矢を射ることなんてほぼないぞ夏姫。」


「確かにそうだけど、お父様はアクロバティック過ぎるんです。」


少女の名前は白谷夏姫、夏姫がお父様と言う彼は白谷磔。要するに父と娘だ。


「出来て損はないだろ夏姫?」


磔は呆れ顔をしている夏姫を見て苦笑いしながらスーツのポケットにしまってあるスマホを取り出し、行った鍛練の結果のデータを打ち込む。


磔と夏姫がいる世界、その名も『現想郷』と名付けられている。幻想郷と漢字の読み方は一緒だが世界に関してはかなり異なる部分がある。


「そうですけど、お父様はもう少し変態機動な動きをなんとかしてください!」


一つとして、現想郷は現代の暮らしの文化も取り入れているという点。本来は忘れ去られた者の最後の楽園というのか幻想郷なのだが、その本来の部分に加えて現代の暮らしも取り入れているのが現想郷だ。


「変態機動って、もうちょい何か言い方変えようぜ夏姫。まあ間違ってはいないけどさ。」


なので、普通に電話や通信が出来るようになっており、世界の見た目は幻想郷は明治時代前半付近の建物や習慣が目立つが、現想郷は令和時代と何ら変わらない習慣や建物が並んでいる。


「ん?夏姫、あと数秒後に誰かここに来るんだが心当たりあるか?」


「いえ、ないですよお父様。気のせいじゃな「おや、磔さんじゃないですか。」曲者!?」


白谷と夏姫の目の前の空間が一瞬歪んだかと思えば、その後に真っ白のタキシードで身を包んでいる男性が現れた。


「お前、誰だ?」


「ふむ、一度お会いしたことがあったはずですよ。そちらの少女は白谷さんの娘、白谷夏姫さんですね?」


「何故私の名前を!?お父様、この人は怪しすぎます!すぐに成敗してあげます!」


夏姫が何処からか取り出した弓矢を構えてタキシード姿の男に向けて矢を放とうとするが、磔が手で夏姫を制する。


「落ち着け夏姫。お前、まさか終始終作か?」


「半分正解で半分不正解と言った所ですかね。私はあの致し方ない必要クズではありません。」


終始終作、この人物は自由気ままなマイペースな人物であり、他人を弄るのが大好きな迷惑人である。口調はテキトーでヘラヘラとしたのが特徴だが、今回は何故か親切丁寧な口調である。


「となると、終見記(おみき)の状態の終作って事か?」


「ご名答です。以後お見知りおきを。」


終作は半魔半神の種族であり、悪魔の種族と神の種族を持ったハーフであり、今回の親切丁寧な口調になる時は神の種族の力を持った人格で来ている場合である。


「むむ、やっぱり怪しいです。」


「聞いていた終作の態度や口調が違うからですか夏姫さん?」


「何も話していないのに!?やっぱり貴方はここで成敗します!」


「止めろ夏姫。」


磔は今にも終作に飛び掛かろうとする夏姫の頭を叩いて蹲らせる。頭を叩かれた夏姫は不満顔で磔を見詰めていた。


「終作は始祖神という神でもあるんだ。今回はその人格で来たんだよ、わかったか夏姫?」


「理解が速くて助かりますよ磔さん。さて、私がここに来た理由を説明致します。」


終作はタキシードの内側のポケットから1枚の紙を取り出し、磔に渡した。


「えっと、大乱闘をしたい?おいおい、その為にこの世界に来たのか終作?」


「ええ、磔さんが管理しているこの世界。実は私も気に入っているんですよ。なので盛り上がるイベントをしてみたいのです。私の提案を受け入れて貰えないでしょうか?」


終作は渡した紙を読んでいる磔に頭を下げる。夏姫は磔の後ろから紙の内容を覗き見ていた。


「いやまあ、イベントをすること自体は反対も何もないんだけどよ。参加者とかどうやって集めてくるんだよ?」


「……あっ。」


普段は終作のもう1つの人格、悪魔の時の能力、『次元を操る程度の能力』を使って他の世界の人達を拉致するような形で呼んでいた。


だが今回の終作は始祖神の状態で来ており、その時の能力は『全てを見る程度の能力』になっている。


ちなみに『全てを見る程度の能力』とはありあらゆる、あり得ないであろう確率の未来の分岐まで見通せる能力である。


「あれ?もしかして、誰も呼べないって事?」


「そういうことになりますね。」


終わり



























「って勝手に話を終わらせてんじゃねえよ!!」


「ですがお父様?終作さん以外で誰が他の世界に行って参加者をこの世界に連れてくるんですか?」


「俺が連れてくるよ。夏姫、終作、ちょっと待っててくれよ。」


磔は2人にそう伝えた後、全身から透明な闘気を噴出させ、その場から消えた。


「お父様が消えた!?」


「ふむ、あの力(・・・)を使いましたね磔さん。それなら参加者を連れてくるのも可能でしょう。」


磔が消えた事に夏姫は驚き、終作は何処か納得した表情でタキシードに付いた汚れを払っていた。


「あの力?一体何の力なんですか終作さん?」


「私から言ってもいいのですが、磔さん本人から聞くのがいいでしょう。それに、そろそろ戻ってきますしね。」


終作がそこまで言った瞬間に磔が現れた。何故か人が10人くらい入りそうな程の大きさの鋼鉄の箱を担ぎながら。


「ふぅ、取り敢えずめぼしい参加者は集めてきたぞ。」


「お父様?その箱は?」


「あー、1度に運べるようにするにはどうしたらいいか考えてたら箱詰めにすればいんじゃね?と思ったからこの箱を持ちながら参加者を集めてきた。」


磔は夏姫に説明しながら担いでいた箱を乱雑に放り投げる。物体と物体がぶつかる音が響いたが気のせいだろう。


「それ誘拐ですよお父様!!」


「誘拐じゃねえよ夏姫、ただ拉致してきただけだ。」


「もっと酷くなってませんか!?」


夏姫がギャーギャー騒いでるのを磔は無視して箱の蓋を開ける。その瞬間に桜の花びらを模した弾幕が箱から放たれる。


「おっと、いきなり攻撃は勘弁してくれよ。」


「うっさいわね!私が休める唯一の時間を奪ったあんたに攻撃してもいいでしょ!?」


箱から最初に出てきたのは桜色の髪が腰まで伸びており、桜の花を模したリボンで髪を留めている。服装は脇空き型の巫女服(桜の模様の刺繍付き)を着ていて背は少し低めの女性が額に青筋を浮かべながら磔を睨んでいた。


「こうしか方法がなかったんだよ桜。埋め合わせはきちんとしてやるからさ。」


磔を睨んでいる女性は安倍桜(あべのさくら)と言い、白いきつね耳と10本細めの尻尾が生えていている。今はきつね耳と尻尾がピンと逆立っている、どうやらかなりお怒りらしい。


「ふん、期待しないでおくわ。それと、あんたの後ろでビクビクしている子は娘かしら?」


「そうだよ。後で纏めて紹介するからちょっと待っててくれよ。あと夏姫はビクビクし過ぎだ。」


夏姫は桜の顔を見るのが怖いのか、磔の後ろで服を掴んで体を震わしていた。


「ここここの人怖いんです!お父様はよく平気ですね!?あとどうしてきつね耳と尻尾が生えているんですか!?」


「慣れだ慣れ。桜は白狐の妖神と人間のハーフなんだよ。」


磔は苦笑いしながら怖がっている夏姫の頭を撫でつつ、近くに置いてあったおはぎを桜に渡す。


「用意周到ね、まあ受け取っておくわ。不味かったら覚悟しておくことね。」


「痛たたた、あれ、ここ何処ですか?」


次に箱から出てきたのは鼠色と白色が混じり合っている髪で白い半袖のTシャツに、ベージュのハーフパンツを履いている少年だった。


「あっ、君は白谷磔だね!噂は色々聞いてるよ。僕は(ろう)、気軽に狼と呼んでくれたらいいよ。」


狼は磔の姿を見て軽く会釈をする。狼も獣耳と尻尾が生えていた。


「おうよろしくな。白狼天狗と黒狼天狗のハーフか、珍しいな。」


「分かっちゃいましたか?磔は中々できるみたいだひゃん!!」


狼が磔と会話している最中に悲鳴を上げた。どうやら夏姫が狼の尻尾を突っついたらしい。


「夏姫、他人のデリケート部分を気軽に触るなよ。」


「ご、ごめんなさい!!」


「いきなりは止めてよ、尻尾は敏感だから。」


狼は膨れっ面で夏姫に注意し、夏姫はペコペコと頭を下げていた。


「あれれ~、ここは何処だ?何か面倒くせぇ予感がする。」


次に出てきたのは紅い髪をしているが毛先に行く毎に蒼くなる特殊な髪で二対のツノが生えているおり、紅と蒼の混合した瞳でどちらも決して混じっておらず紫色にはなっていない。


服装は白いタンクトップに返り血の様なペイント。右手にはアブホースの紋章が描かれた銀製のガントレットを付けており、真っ黒いダボダボのズボンを履いている青年がキョロキョロと辺りを見渡していた。


「貴方は、確か桐月アルマさんですよね?」


「ギヒヒ、そうだせ俺が桐月アルマだ。覚えてくれよ、そこのスタイルが良いお嬢ちゃん。」


アルマはニタニタしながら夏姫の体をじっくりと見詰める。アルマの目線に気付いた夏姫は体を隠すように縮こまった。


「どどど何処を見て言ってるんですかアルマさん!?」


「いやぁ初々しいねぇ。ギヒヒ、こりゃ弄りがいがありそうだ。」


アルマは怪しい笑みを浮かべたまま夏姫に近付いていく。それに気付いた夏姫は涙目で磔にしがみつく。


「人の娘をからかうのはそこまでにしとけよアルマ。」


「いいじゃねえか磔、最愛の人と過ごす時間を邪魔されたんだ。これくらい許せよ、でないと禿げるぞ?」


「うっせえよアルマ。」


磔はため息をつきながらアルマと会話する。夏姫はアルマが怖いのか桜の所に向かっていた。


「およよ、磔の娘に嫌われたか?おいでおいで~、怖くないよ~、俺は怖くないよ~。ちょっと頭のネジを外してあげるからさ~。」


「それで夏姫の恐怖心が無くなると思ってんのかしらアルマ?」


「ギヒヒ、その声は桜か。その様子だとまだ相手は見付けてないな?やーい行き遅「うっさい!」おぅふぃ……。」


アルマは桜の姿を見た瞬間に憎たらしい笑みで女性に失礼な発言をし、桜のラリアットを喰らって地面に倒れる。


「アルマさん、今の発言は失礼過ぎます。反省してください。」


いつの間にか桜の隣に博麗霊夢に髪色や髪型、服装もそっくりな少女がいた。ただ、博麗霊夢よりも身長など色々と小さい。


「お久し振りです白谷さん。」


少女の名前は博麗霊乃(はくれいれいの)と言い、磔に向けてお辞儀をする。


「久し振りだな霊乃。あと白谷だと娘と名前が被るから磔でいいぞ。」


「分かりました。ってあれ?もう一人いるはずなんですけど?」


「悪い悪い、ちょっと服に付いた汚れを払ってた。ついでにトイレにも行ってきた。」


霊乃がキョロキョロと辺りを見渡している最中にいきなり上空から頭に大角がある男性が降りてくる。


「よう久し振りだな磔。」


「ああ、久し振りだな大和。」


頭に大角がある男性、日向大和(ひゅうがやまと)が磔と握手をする。


「俺との約束を覚えているか磔?」


「もちろん覚えてるさ。まあ果たせるかどうかは怪しいけどな。」


「何時かでいいさ。楽しみに待ってるからな。」


大和は磔の肩を叩きながらそう言い、霊乃がいる所に向かっていった。


「おい、お前が俺をここに連れてきたのか?」


「そうだが?っておいおい、いきなり水砲を飛ばすのはどうなんだお前?」


磔は後ろから声を掛けられ、振り向くと目の前に水の塊が迫って来ていた。だが特に動揺することなく水の塊を右手で誰もいない所へ弾く。


「水砲を弾くって、お前人間か?」


水砲を磔に放った人物、腰ほどまである白銀色のロングヘアーで前髪は右目側だけピンで止めてある。年齢は10代後半くらいで右目は深紅色、左目は瑠璃色の珍しい組み合わせで、肌は色白。尖った犬歯が僅かに見えることから恐らく吸血鬼だろう。


服装は質素な黒色のワンピースで背中に羽を通すための穴が空いており、その穴から藍色の羽が出ていた。


「お生憎様、俺は人間だ。えっと、ティアーシャだったか?」


少女の名前はティアーシャといい、磔に名前を呼ばれた瞬間に殺気を磔にぶつける。


「何で俺の名前を知っている?」


「そこは秘密だな。あと一つアドバイスだティアーシャ、殺気を飛ばす時は飛ばしていい相手かどうかを判断してから飛ばせよ。」


ティアーシャの殺気を受けても磔は平然としていた。それを見たティアーシャは不満顔で殺気を静める。


「お父様、ここら辺から殺気を感じたのですが、あっ!初めまして白谷夏姫と言います!」


殺気を感じ取った夏姫が磔に向かって来るが、ティアーシャを見た夏姫はティアーシャの方へ向かい、手を取ってブンブンと上下に降る。


「何で夏姫はこんなにテンションが高いんだ?あっ、魅惑に掛かったのか。」


ティアーシャは吸血鬼であり、魅惑というスキルを常時発動している。夏姫はその魅惑に掛かっていた。


「けど、なんでお前はなんともないんだ?」


「それくらいの魅惑は意志力でどうとでもなる。あと夏姫は友達を増やしたい気持ちと相まってテンションが高い。ましてや同じ女性同士でその可愛らしい容姿なら尚更だろ?」


「俺はそんなに可愛いとか言われたくない。」


ティアーシャが青筋を額に浮かばせながら言うが、それを見た夏姫が頬を膨らませていた。


「ティアーシャさん!女の子なんだから俺とか言ってはいけませんよ!あと口調も!」


「ここでもそれを指摘されるのかよ、勘弁してくれ。」


夏姫とティアーシャのやり取りを磔は微笑ましそうに見ていた。


「これで全員か?」


「一応ボクもいるんだけどね。」


「ん?ぬいぐるみ?」


磔の足元に奇妙なぬいぐるみらしき物体が磔のズボンを引っ張っていた。


「確か、パシェットだったか?」


「そう、霊乃の相棒のパシェットさ。主催者である君に挨拶をしておきたくてね。」


パシェットはそう言い、ピョンと跳躍して磔の肩に乗る。


「ふむ、鍛練は怠ってないみたいだね。」


パシェットは磔の頭をペシペシ叩きながらそう評価する。パシェットの言動を見て磔は自分の師を思い出していた。


「もしかして、霊斗か?」


博麗霊斗、この場にはいないが磔の師匠であり、よき相談相手である人物。パシェットの言動はその人物になんとなくそっくりだった。


「厳密には違うけどね。ボクは君の師匠の人格を埋め込まれた単なるぬいぐるみさ。」


「となると、霊乃も師は霊斗なのか。どうりで見たことある技を使ってるなと思ったよ。」


パシェットは磔の頭をペシペシ叩き終わると肩から地面に向かって降りる。


「君は霊乃の兄弟子みたいなものだね。どちらが勝つか楽しみにしてるよ。」


「見付けましたよパシェット!そこを動かないでください!」


霊乃はパシェットを見付けた瞬間に走ってパシェットのいる所まで向かって行った。


「あれ?あと二人くらいいる筈なんだけ「動くなよ?」今日はアンラッキーデイだな全く。」


磔が辺りを探そうとした時に後頭部に刀の先端部分を突き付けられる。


「こっちの質問に答えろ。私達は何故こんな所にいる?お前が連れてきたのか?」


「そうだな、俺が連れてきたんだよ!」


磔がそう言い切る前に刀の先端が磔の頭を貫いていた。


「っち、とんだ迷惑人「無断で拉致した事は謝るよ。」何っ!?」


だが残像を残して磔は刀を突き刺してきた人物の後ろに回り込んで肩をくすめていた。


「あれは残像だ。っと初めましてだな、俺は白谷磔、あそこにいるタキシード姿の奴に言われてあんたらを連れてきた。文句ならあいつに言えよ?」


磔は一礼して刀を突き刺してきた人物を見る。炎と書かれている軍帽を被っていて髪は後ろで纏めており、服装は上の方は下着だけ着けていて、下の方は軍隊が着るようなズボンとブーツを履いている。左手には先程磔の残像の頭を突き刺した刀を持っている。


「まあ、親切丁寧に謝罪されるだけだけどな。サナ・ブルクハルト・ヒガシヤマさん?」


「貴様何故私の名前を知っている?一体何者なんだ?」


「ちょっと色々と極めたただの人間だよ俺は。っと確かもう一人いた筈……。」


磔が左の方を向くと、凍らされたアルマの姿と、髪を氷と書かれているサークレットで纏め、肩が出ている半袖の服を着ており、胸の辺りには青いリボンが付いている。下は踝よりもほんの少し上までのスカートを履いている。


「何をやっているんだ帝は?」


「恐らく凍らされている人物、アルマって言うんだがそいつに何か弄られたからじゃないか?」


サナはため息をつきながらアルマを凍らさせた人物に近付く。それに続いて磔も後ろに付いていく。


「貴方がこの人物をけしかけたの?」


「んなことしてねえよ、黒峯帝さん。そいつは弄るネタが無いか探すために帝に接触したんだろうよ。」


アルマを凍らさせた人物、黒峯帝は興味が無さそうな表情で磔を見ていた。


「あっそ。じゃあこのままでいいってことね。」


「放置プレイは好きじゃないんだよな、ギヒヒ。」


アルマはいつの間にか氷を粉砕しており、サナと帝の姿を交互に見てサナの方へと近付く。


「おんやぁ?ないすばでぃなお姉さんじゃないか。その格好で一体何人の男を骨抜きにしばばば!」


「磔と言ったか?この他人を煽るのが上手い奴はなんとかならないのか?」


サナは憎たらしい笑みを浮かべるアルマを能力で出現させた炎で跡形もなく消滅させる。


ちなみにサナは炎、帝は氷に関する能力を持っている。


「軽くあしらっとけ、真面目に対応してたら疲れるぞ。それとサナ、何か上着でも着れないのか?色々と目に毒なんだが?」


磔はサナから目線を逸らしながら指摘する。サナは上半身は下着のみの格好なので豊満な胸とか結構の割合で見えている。


「(しかし、かなり大きいな。どれくらいあるんだ?Gくらいか?いや下手したらHより大きいかもな。しかも大きいだけじゃなくて形も綺麗で動くと結構揺れるんだな。あー、腕を組むな!ただでさえかなり大きいのにもっと強調されるだろうが!)」


磔はサナの姿を見て脳内で色々と考えるが、考えがバレるととんでもないことになるため頭をブンブン横に振って思考を切り替える。


「戦闘するときに邪魔になる。私はなるべく身軽の方が戦いやすいんだ。」


「いや、限度っていうものがあるだろ!?あと少しは恥じらえよ、俺は別にそのままで良いんだけどさ。」


何言っても無駄だと察した磔はため息をつく。だが体が復活したアルマが磔の台詞を聞いてニヤニヤしていた。


「ギヒヒ、磔は胸の大きな人が好みなのか!」


「ななな何言ってんだよアルマ?おおお俺は別に大きい小さいは気にしないぞ?ああ気にしないとも!」


アルマの発言を否定しようと磔はするが、目線は泳いでいるし冷や汗もかいて体を震わせているため、全くと言っていい程説得力がなかった。


「お父様そろそろ大乱闘を始めま……。」


夏姫が大乱闘の催促を磔にするために近付いてくるが、サナの姿を見た瞬間にある部分をじっと見詰めていた。


「貴方はサナさんでしたよね?くだらないことかも知れませんが、聞きたいことがあります。」


「何だ?余程変なことではない限り答えるが?」


「その、どうやったらそこまで胸が大きくなりますか!?」


勇気を振り絞った表情で夏姫は言い、サナは怪訝な表情をし、磔は顔を青ざめ、アルマは腹を抱えて笑っていた。


「……何でそんなことを聞く?」


「それは、お父様が胸の大きい人が好きだからです!!」


夏姫の爆弾発言により、辺り一体が静まった。そして数秒くらい経った後、磔が夏姫の肩を掴んで前後にブンブン振り回す。


「うおぉぉぉぉぉぉいこらぁぁぁぁ!!大きい声でなに言ってんだよ夏姫!?」


「事実じゃないですか!?お母様も大きいですし!お父様の好みを言って何が悪いんですか!?」


「なあ頼むから黙ってて?いや黙ってくれない?いや黙ってくださいお願いします。」


そこまで磔は言った後、ハッとして辺りを見渡す。サナは若干顔を赤くしており、帝と桜は冷たい眼で磔を睨み、アルマは涙を流しながら大爆笑していた。


「変態……。」


「あんたが変態だとは思わなかったわ。」


「理不尽だ、俺何もしてねえのに。何で帝と桜から罵られなきゃならねえんだよ。」


帝と桜の口撃により磔は両手両膝を地面に付き項垂れた。その様子を見たある人物が磔の肩をポンッと叩く。


「えっと、ドントマインド!」


「フルで言うな、せめて略せよ大丈仁。」


白の薄いシャツの上に黒のカーデを纏い、黒のズボンを履いている男性、大丈仁が笑顔で磔を慰める。


「ここの世界も中々面白そうだね。それより、そろそろあそこにいるタキシード姿の人が話したそうにしてるけど?」


「分かった、教えてくれてサンキュ。」


磔は一息ついて立ち上がる。表情は元に戻っていたが若干引き攣っていた。


「メンタル強くない磔?」


「そう見せてるだけだ仁。本当は家に帰って不貞寝したいくらいなんだよ。」


「えー、皆様集まりましたね。まず謝罪を、私の我が儘で拉致紛いな事をしてしまって申し訳ありませんでした。」


「「「えっ?あいつ誰!?」」」


終作は皆の前で深々と頭を下げる。これを見た桜とアルマと大和は驚愕の表情を浮かべていた。


「桜とアルマと大和はどうしたの?そんな鳩が豆鉄砲を喰らったような表情になって?」


「確かに、磔さんは何か事情を知っているんですか?」


「桜やアルマや大和が知っている終作はな、あんな性格じゃなかったんだよ。」


狼と霊乃は特に動揺していない磔に事情を聞く。


「まあ、今の終作とは正反対の性格をしてたんだよ。ろくでなしなトラブルメーカーがあんな完璧紳士な態度をしていたらそりゃあんな表情にもなる。」


「どの世界にもトラブルメーカーはいるんだな。あと夏姫、髪を触るな。」


「綺麗だったのでつい、ごめんなさいティアーシャさん。あと桜さんも触ってましたよ。」


ティアーシャは髪を触ってくる夏姫の手を叩く。同じく桜も髪を触っていたが、叩かれる前に手を引っ込めた。


「少し手入れがなってないわよ?髪は痛むと見映えが悪くなるからきちんとしておきなさいよ?」


「別に見映えなんてどうでもいいんだよ。動くのに支障がなければそれでいい。」


「ったく、いい容姿なのに勿体無いわね。」


ティアーシャがそっぽを向くのに対して桜は何か勿体無いような目でティアーシャを見ていた。


「磔、前から思ってたんだけどよ。桜ってまさかなぁ?」


「言いたい事は分かるぞアルマ。桜はロリコンまたはショタk「ぶっ殺す!」こぶっ!!」


磔が言い切る前に、桜が胴回し回転蹴りで首もとを蹴って磔の顔面を地面に叩き付ける。メキョっという音が鳴ったが気のせいだろう。


「お父様!?お父様生きてますか!?」


「死んだんじゃないのぉ~♪」


「生きとるわ!!迷言をぶっこむなよアルマ!!」


磔はガバッと起き上がってアルマに指を指しながらツッコミを入れる。


「何なのこの人達?」


「下手に動かない方が良さそうだな帝。」


サナと帝は周りの雰囲気に付いていけずに怪訝な表情を浮かべる。


「話が逸れましたけど、今の性格の終作さんが来てくれて良かったですねお父様。」


「まだちょっと慣れない部分はあるけどな。いててて。」


「胴回し回転蹴りをまともに受けてピンピンしているなんて、磔はすごいな。」


仁が感心した表情で磔を見て、磔はなんとも言えないような表情で夏姫の頭に手を置き、その後に終作が頭を上げた。


「ではこれから皆様には全員参加の大乱闘をしてもらいます。」


終作がそこまで言った時、一瞬景色がぶれた後に闘技場の舞台の上に皆立っていた。その瞬間に観客席から歓声が沸き上がる。


「凄いですね!立派な闘技場ですよ!」


「はあぁ……、大乱闘か。面倒くせぇな、自滅とかってあり?」


狼がはしゃいでいる傍ら、アルマは面倒臭そうにため息をつく。


「無しですよアルマさん。」


「ちぇっ、ありだったら磔を掴んで担いで道連れにしてやろうと思ったのによ。」


「お前は何処のゴリラだアルマ?」


「ではルール説明です。と言っても簡単です、体力が無くなる、または死んでしまったら脱落です。死んでしまっても蘇生されて観客席に転移しますので。」


死んでしまうという単語を聞いた夏姫は顔を青くして辺りを見渡す。それを見た磔は安心させるために夏姫の頭を撫でる。


「あと即死系の技は禁止です。すぐ決着が付いてしまうと盛り上がらないですからね。では3分後に開始します、あとパシェットさんはこちらに来てください。」


「はいよ、霊乃、ガンバれ。」


霊乃の肩に乗っていたパシェットは飛び降りて終作の所へと向かっていく。


「ふぅん、中々面白くなりそうね。」


桜はニヤリとしながら手を鳴らす。どうやら早く大乱闘を開始したくてウズウズしているらしい。


「誰を狙ってもいいし、誰からも狙われる。これは気を引き締めないとね。」


狼は深呼吸しながら状況を分析していく。


「ギャハハ、こりゃ早いところ決着を付けた方が良いな。爆弾とか降ってきたら面倒くせぇからな。」


アルマは口笛を吹きながら空を見上げる。ちなみにサドンデスとかではないので爆弾とかは降ってこない。


「そういや、こういう入り乱れての戦いはあまりしていなかったな。楽しみだな!」


大和は屈伸や首を回しながら体の調子を確かめていた。


「パシェットは今回いないから戦闘方法は考えないといけないですね。」


霊乃は腕を組みながらどうやって戦っていくかの作戦を練っていた。


「見せ物にされるのは気分が良くないんだが、自分の実力を示すいい機会だから我慢するか。」


ティアーシャは頭を抱えていたが、いい方向に気持ちを持っていくために自分の頬を叩いていた。


「何だか話が進んでいるけど、要は戦えばいいってことか。全員蹴散らしてやるわ。」


サナは右手で軍帽の位置を直し、持っている刀を肩に担ぐ。どうやら自信があるらしい。


「即死系が駄目なら使える技は限られる。でも色々試せるいい機会ね。」


帝は歓声がうるさいのか片耳を塞ぎながら辺りを見渡す。


「よし、体の調子はバッチリ。せめて終盤までは生き残らないとね。」


仁は軽くジャンプしたり手首や足首を回して気持ちを昂らせていた。


「さて、夏姫も敵になるから俺は離れるぞ。まあ鍛練の成果を出せよ?周りの奴等は夏姫が全力を出しても文句は言わねえから。」


磔は夏姫に助言を送って距離を取るために歩き始める。これからは敵同士になるのだから。


「うぅ、緊張します。こういう時は深呼吸ですね!ヒッ、ヒッ、フー!」


夏姫は緊張し過ぎて深呼吸ではない呼吸をしていた。2回目の呼吸をしようとした瞬間に、辺りから再び歓声が沸き上がった。


「宣伝と案内をありがとうございます、射命丸文さん。」


「いえいえ、盛り上がるイベントは皆で共有しないといけませんからね!霊夢さんも誘ったのですが、面倒くさいからやだって言われて断られました。」


「えー、皆様お待たせいたしました。これより、異世界から来ました強者達の大乱闘を開始いたします。」


終作がマイクを使って挨拶をすると割れんばかりの歓声があちこちから沸き上がる。


「ルールは先程も説明しましたが、体力が無くなるか死んでしまったら脱落という風になってます!あ、あと気絶しても脱落になりますよ!いやぁ、誰が勝つと思いますかパシェットさん?」


文がルールを説明した後、隣にいるパシェットにマイクを渡す。ちなみに進行席は文、パシェットの並びになっている。


「一応こちらの方で戦力は均一になるようにはしているけど、誰が勝つかは予想が難しいね!」


「では何人か戦闘能力に変動があるのでモニターをご覧ください!」


文がそう言うと後ろにある巨大モニターが光り、それぞれの戦闘能力について記載されていた。


全てを見抜く始祖神 終始終作


攻撃力、防御力は半分になり、能力の使用禁止。


万魔の術師 安倍桜


攻撃力、防御力はそのままで不老不死の為、復活する際は普段の3倍の体力を消費するようになる。


自然を操る天狗 狼


攻撃力、防御力それぞれ1.5倍になる。


感情の魔王 桐月アルマ


攻撃力、防御力は0.75倍になり、不死の為、復活する際は普段の2倍の体力を消費するようになる。


開始後の5分間はとある力の使用禁止。


運命の守護者 日向大和


攻撃力、防御力は0.75倍になり、開始後の5分間は能力の覚醒の使用禁止。


未来永劫の知識人 博麗霊乃


攻撃力、防御力はそのままで『知を持って武を制す程度の能力』の弱体化。


開始後5分間はラストスペルの使用禁止。


転生せし吸血鬼 ティアーシャ


攻撃力、防御力は3倍になり、吸血鬼の弱点の全克服状態になる。


輝火の将軍 サナ・ブルクハルト・ヒガシヤマ


攻撃力、防御力は0.75倍になり、能力が弱体化する。


氷帝の将軍 黒峯 帝


攻撃力、防御力は0.75倍になり、能力が弱体化する。


終世者の息子 大丈仁


攻撃力、防御力は2倍になる。


若き月の姫君 白谷夏姫


攻撃力、防御力は2倍になる。


絶対を覆す騎士 白谷磔


攻撃力、防御力は0.25倍になり、開始後5分間は武器の使用は弓矢のみ使用可でとある力の使用禁止。


一部の超技術の使用禁止。


「俺だけハンデ凄まじいんだけど!?」


「頑張ってください磔さん!!では始めますよ。」


「「レディー、ゴー!!」」


文とパシェットの合図によって大乱闘はスタートする。壮絶な戦いが今始まる!


「俺流剛掌波!!」


「妖桜『白桜』!!」


「魔符『清風燐(しんぷうりん)』!!」


「幻想郷奥義『幻想波動砲』!!」


「霊符『夢想霊砲』!!」


「水砲・改!!」


種子島煉砲(タネガシマメテオ)!!」


「氷牙!!」


「雨符『垂れ桜』!!」


「乱符 スピンシュート!!」


「「へっ?」」


青いレーザー型の衝撃波、大量の桜の花びら型の弾幕、紫色のオーラを纏った弾幕型突風弾、虹色の巨大レーザーが2つ、巨大な高圧の水の塊、大量の飛炎球と巨大氷柱、大量の桜色の斬撃、螺旋状に回転する赤色のレーザーが磔とアルマに降り注いだ。


「「なんでさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


磔とアルマの絶叫の後に凄まじい爆音が鳴り響き、闘技場全体まで衝撃波が走った。


「よし、厄介な奴等を一網打尽に出来たわね。まさか皆考えている事が同じだったことには驚いたけど。」


桜は手に付いた汚れを払って弾幕を放った場所を眺める。あれだけの攻撃をまともに喰らったらひとたまりもない。


「てんめぇら事前に打ち合わせでもしたのか!?」


「見事な絨毯攻撃だったな~、危うく死にかけるところだったぜ。」


だが磔とアルマは桜達の後ろに回っており、絨毯攻撃を回避していた。ただ、アルマは若干髪の毛が焦げていたが。


「まっ、あれであんた達を倒せるとは思ってなかったけどね!」


桜は磔とアルマを見て何処か安心した表情でソードブレイカーという武器を持って磔に斬りかかる。


「嫌な信頼だなそれ!」


磔は斬りかかってくる桜のソードブレイカーを横に移動して避け、更に背中を押してアルマの方へと移動させる。


「桜ちぁん!?何で俺に向かってくんのかな!?」


アルマは慌てた表情をしたかと思えば、異空間からナイフを二つ取り出して桜の両目に目掛けて投げる。


「ふん、そんなので目眩ましになると思ったのかしら!」


「そんなことこれっぽっちも思ってませんから~!!『全て打ち砕く怒涛の右(ラース・ザ・ライト)』!!」


桜はソードブレイカーでナイフを弾くが、その隙にアルマは異法と呼ばれる技で右腕を引き千切り、赤と黒を基調とした2m台の巨大な金槌に変化させて桜を殴り飛ばす。


ちなみに異法とは魔力を肉体に流し、硬化したり、形状を変化させたり、性質を変化させたりすることができる魔法の事である。


「っぶあ!!」


桜はソードブレイカーを盾にして金槌を受け止めようとするが、受け止め切れずに吹き飛ばされ、闘技場の壁に激突した。


「ホームラン!って場外とかないからこれじゃ脱落させられないじゃん、面倒くせぇ。サボろうかな?」


「アルマ、サボるのは別にいいけどこの大乱闘は皆の世界の人達も見てるからな?」


欠伸をしながら何処かへ行こうとするアルマに磔がそう説明する。なので今回の参加者の世界の人達にこの戦いが見られているということ。


「マジで!?なら俺の格好いい所を見せないとな。ギヒヒ、その為にまず磔、お前から犠牲になれ!」


「あー、意気込むのはいいけどよアルマ。後方不注意だぞ?」


磔に飛び掛かろうとするアルマだが、磔に後ろを向けというジェスチャーをしていたのを見て、後ろを向く。


「八極拳 无二打(にのうちいらず)!!」


アルマが後ろを向いた時、終作が目と鼻の先まで来ておりアルマの心臓目掛けて終作は拳打を放つ。


「アァーーーーーーー!!やなかんじーーーーー!!」


心臓を殴られたアルマは口から血を吐きながら遠くへ吹き飛ばされる。


「容赦ねえな終作。」


「容赦なんかしていられませんからね!」


若干引き気味に磔はなりながらも終作に向けて弓矢を構えて矢を放つ。対する終作は磔から放たれる矢を避けたり拳で弾いたりしながら近付く。


「磔さんが弓矢を使うなんて知りませんでしたよ。」


「一応一通りの武器は使えるからな!今回がたまたま弓矢だっただけだ!」


一本ずつではなく十本ずつ矢を放つやり方で磔は終作に攻撃するが、全て避けられて懐に潜り込まれる。


「ですが、弓矢を使っていては接近戦は不利になりますよ?」


磔の懐に潜り込んだ終作は至近距離で磔の放つ矢を身を屈めて避けてから状態を起こしてアッパーカットを放つ。いわばガゼルパンチを磔に放った。


「っぉ!!危ねえ!!」


磔は終作のガゼルパンチをバク宙で避け、弓で終作の脇腹目掛けてなぎ払う。


「くっ!!やりますね。」


思わぬ反撃をもらった終作は少しよろめく。その隙を逃さずに磔は脚全体を棒のようにピンと伸ばし、高まった脚力で勢いよく空間に振るうことで剣を持たず斬撃を発生させる技の『斬脚』を放つ。


「では自分も使いますね、『斬脚』!!」


終作も磔と同じ技を使って相殺させる。それを見た磔は少し驚いていた。


「終作がその技を使うなんてな。結構驚いたぜ。」


「何度も見てきてますからね。使えて当然です。」


「神霊 夢想封印!!」


磔と終作が隙を伺いながら会話している時に上空から七色の巨大弾幕が降り注ぐ。それを見た磔は後ろに移動して避け、終作はその場で弾幕を弾いた。


「仕留め損ねましたか。」


七色の巨大弾幕を放ったのは霊乃であり、霊乃もまた隙を伺って攻撃した。


「いい線いってましたよ。ですが、この程度では私は倒せませんよ霊乃さん?」


「あれは半分牽制なので。威力は低く設定してあるんですよ!!」


霊乃と終作の拳が激突する中、磔は2人から距離を取っていた。


「よぉ、まさかお前からこっちに来るなんてよ。」


だが距離を取った先に大和が指を鳴らしながら待ち構えていた。


「うそーん。」


「磔相手なら遠慮は要らねえな。陽鳥『極東日輪の神栄鴉(ヤタガラス)』!!」


大和は背中に黒い翼を出現させて飛行し始め、そこから磔に向けて無数の弾幕を放つ。


「翼が生えやがった!?レット○ルでも飲んだのか!?」


「何言ってんだ磔?それよりも、余所見禁止だぜ。」


大和がそう言った瞬間に磔の脇腹に弾幕が当たり、地面を滑りながら飛ばされた。


「痛って!!戦闘能力補正で思ってた以上に防御力が下がってやがる。」


飛ばされた磔はすぐに起き上がり、すくそばに迫っている弾幕に向けて矢を放つが、それじゃ足りないと感じてレーザー弾幕を放って相殺させる。


「後ろががら空きだぜ磔。」


磔が弾幕を相殺している間に大和は背中に回り込み、飛び蹴りを放つ。


だが磔は後ろに回っていた大和の存在に気付いていたらしく、前を向いた状態で大和に矢を放ち、翼を打ち抜いた。


「ノールックで翼を正確に打ち抜くのかよ!!」


「おらぁ!!」


翼を打ち抜かれた事でバランスを崩した大和の顔面に磔はドロップキックを放って吹き飛ばす。


「ぐっ、やるじゃねえか。」


数メートル飛ばされた大和だが、体勢を整えて静止する。だがその間に磔の姿が消えていた。


「見失ったか、まあいいか。残っていればいずれ戦えるからな。」


大和から距離を取った磔だが、後ろから殺意を感じて横に移動する。


「う~ん惜しかった。気配は消したはずなんだけどな。」


磔が先程までいた位置に仁が大太刀を突き刺していた。もし横に避けなかったら磔は心臓を突き刺されていただろう。


「ほんの少しでも気配が分かれば避けるのは容易いんだよ仁。ほら、かかってこいよ。」


「では行きますね!!」


仁は大太刀を構え、磔に突っ込んで行く。その間に磔は弓矢をしまって指を鳴らしていた。


「武器を構えないで勝てると思っているのかな!?」


少しムッとした表情で仁は大太刀を磔の腰辺りをめがけて横に切り払うが、磔は跳躍して大太刀を回避して仁の後ろに回り込んで後頭部を蹴り飛ばす。


仁の持っている大太刀は霊剣といい桜の花びらが描かれている鞘に納められている大太刀で、大きさは仁の体に合わせて大きくなったり小さくなったりするが、基本的、本人の背丈とほぼ変わらず、重さは仁が扱うときのみ軽くなるという大太刀。


「狙いはいいが、切り払う速度が遅い。」


「いたた、その場で軽く2メートルくらい飛ぶなんて無茶苦茶だね磔。」


体勢をすぐに整えて仁は大太刀を振り下ろす、だがこれも磔は体を半身にして避け、続けて仁が放ってきた中段蹴りを左肘と左膝で挟んで止める。


「痛っ!!やっぱり磔は無茶苦茶だ!!そんな方法で攻撃を回避する人なんていないよ!?」


「案外世の中にはいるもんなんだぜ仁?まあ多いとは言い切れないけどな。」


「普通の攻撃なら駄目、なら心斬『桜道』!!」


仁は大太刀で磔の肩を斬りつけるが、磔の肩は血はおろか傷一つ付いていなかった。


「何のスペルだ仁?見たところ俺の体に傷は付いていない、となると!!」


先程仁が使ったスペルは相手の体ではなく心を斬り、その人の心の中に眠る恋心を思い出させて戦意を喪失させる技。そんな技を喰らったなら普通の人は戸惑い、動けなくなる。


「気が付いたみたいだね。そう、このスペルは直接は傷を付けるのではなく相手の心の中にあ、る?」


仁はそこまで言った瞬間に急に呼吸がしづらくなる。何故なのかと感じ下を見ると磔が仁の鳩尾にボディブローを放っていた。


「悪いな、俺にそういう『操作系』の状態異常は効かねえんだよ。」


口から涎を吐いた仁は踞ろうとしたが、磔は仁の顎を膝蹴りで跳ね上げ、後ろ回し蹴りで遠くへ吹き飛ばした。


「さて、そろそろ本格的に「風符『魔江切(まこうぎり)』!!」って何だこれ!?」


突然目の前に突風を纏う尖った針が現れ、磔の顔を貫こうと迫ってくる。


「うおっと、危ない危ない。」


「余所見は禁物だよ磔!!その針は磔の体に突き刺さるまでずっと付いてくるからね!」


「面倒くさいスペルを使ってくんなよ狼!!」


磔は走って迫ってくる針の追跡から逃れようとするが、針は一向にスピードを落とさずに磔を追跡していた。


「なら打ち落とす!」


逃げ切れないと判断した磔は弓矢の矢を放って針を打ち落とそうとするが、矢が針に当たった瞬間に矢が切り裂かれた。


「言っておくけど、その針は風で貫通力を高めているから生半可な攻撃は通用しないから!」


「そういうことは先に言え!!」


逃げようにも逃げられない、壊そうとしても生半可な攻撃だと効果がないと考えた磔は弓矢をしまった。


「手で受け止めようとしても風で切り裂かれるからおすすめはしないよ?」


「んなこと分かってるんだよ。んじゃ初お披露目と行きますか!!『雷』!!」


磔は地面を踏み込み、その衝撃で上に飛んできた瓦礫を掴んで黄色い闘気を瓦礫に纏わせて針に向けて投げ飛ばす。


「そんなことしても無駄だよ!!」


瓦礫くらいなら針に当たっても風によって切り裂かれておしまいなのだが、瓦礫が針に当たった瞬間に破壊音が鳴り響き、瓦礫と針が跡形もなく消滅していた。


「さっき使った『雷』は防御貫通攻撃の技術である『衝撃粉砕(インパクト)』の効果を物に付与することが出来る技術なんだよ。」


ちなみに『衝撃粉砕』は掌底を相手に打ち付け、その衝撃を相手の体の内部に与えるという攻撃であり、鎧を通り越して攻撃を与えることが可能だったり、鎧や鱗を破壊したりすることが可能。


「むむ無茶苦茶だよ磔!!」


「誉め言葉として受け取っておくよ狼。さて、狼と戦うって事でいいのか?」


「うう、僕じゃ磔に勝てそうにない。ここは戦術的撤退!!暴符『風魔ノ嵐(ふうまのあらし)』!!」


狼は磔に勝てないと判断し、突風を起こして去る。この突風は暴風以上の威力であり、更に視界も悪くなるというスペル。


「ちぃ、逃走用スペルか。まあいいや、また会ったら速攻で叩きのめせばいいだけ。一旦皆の様子を見るか。」















一方ではティアーシャと夏姫がダガーナイフと弓で鍔迫り合いをしていた。


「その弓は何で出来ているんだ?堅い感触が伝わってくるぞ?」


「これは特別な木で使った弓です。だから簡単には斬れませんよ!」


夏姫は弓に込める力を緩めてティアーシャのバランスを崩し、中段蹴りで蹴り飛ばす。


「痛って!!ってあれ?思ったより痛くねえな。」


「戦闘能力補正は思っていた以上みたいですね。あとティアーシャさん!!また男口調になってますよ!!」


「なんで年下らしき人に注意されなきゃなんねえんだ!『風刃』!!」


ティアーシャは文句を言いながら夏姫に向けて風の刃を大量に放つ。


「うわっ!!当たったらスパッと切れそうです。」


「上に逃げたのは間違いだな夏姫。」


夏姫は跳躍して風の刃を避けたが、同じようにティアーシャも跳躍して夏姫に迫っていた。


「この距離なら外さねえよな、『風刃』!!」


ティアーシャは至近距離で風の刃を夏姫に放つ。夏姫は持っている弓で風の刃を弾いたり身を翻して避けたりするが、何発かは喰らっていた。


「っく!!蹴符 ディフュージェンシェル!!」


夏姫は所々切り傷を負ったものの、地面に着地した後に回し蹴りを2回放って衝撃波をティアーシャ目掛けてぶつける。


「蹴りで衝撃波を放つって滅茶苦茶だろ!!」


ティアーシャは地面に着地せず、背中から生えている羽を使って飛行して衝撃波を避ける。


「これを避けますか。その羽はただの飾りじゃなかったんですね。」


羽を使って飛行しているティアーシャ目掛けて夏姫は矢を放ちながら呟く。小声で言ったつもりらしいがティアーシャにはきちんと聞こえていた。


「失礼な事を言う奴だ。『雷電』!!」


放たれる矢を短剣で弾きながら短剣を持っていない方の手を指鉄砲の形にして人差し指から電撃弾を発射する。


「これは、喰らったらまずそうですね。」


夏姫はジグザグに移動しながら電撃弾を避けていき、避けきれない時は矢を放って電撃弾を打ち落とす。


「……全部避けられたか。」


手の形を元に戻したティアーシャは飛行を止めて地面に着地する。


「これくらいは避けられないと、お父様に叱られますからね!」


夏姫は鼻を鳴らしてティアーシャに近付こうと1歩踏み出す。ティアーシャの口元が笑っていることに気付かず。


「ここから反げばばばば!?」


「見事に引っ掛かってくれたな。夏姫が電撃弾を全て避けた時用の保険をかけて良かったよ。」


夏姫が1歩踏み出した時に踏んだ地面に打ち落とされた電撃弾が残っており、そのため夏姫は体が痺れてしまっていた。


「恵みの雨!災いの雨!今、その力を我が手に宿さん!『水砲』!!」


ティアーシャは夏姫の近くまで走りながら詠唱し、両手を前に突きだして高圧の水の塊を夏姫の胸に当てて吹き飛ばす。


「うわあぁぁぁぁぁ!!あぐっ!!」


吹き飛ばされた夏姫は闘技場の壁に激突し、後頭部や背中を強打してしまった。そのため頭から血を流し、切り傷の傷口が開いた。


「これで終わりだ!!」


ティアーシャは夏姫の懐に潜り込み、心臓に短剣を突き刺そうとする。


「連符 ネイルシュート!!」


「何っ!?」


だが夏姫は短剣が刺さる前に右拳をティアーシャの鳩尾に突き刺す。


「ぐっ、まだ動けるなんてぁぁ!?何だこれぇぇぇ!?」


鳩尾に殴打を喰らったティアーシャはバックステップで夏姫から距離を取るが、先程の拳打の一撃の痛みがまた走った。


何故なら先程夏姫が放ったネイルシュートという技は殴打を放った場所に時間差でまた殴打を喰らうという技。


「はぁ、はぁ、今の状態だと10連が限界か。でもこれでダメージは与えられっ!?」


「こんな技があるなんてな。けどただやられた訳じゃねえよ。」


夏姫は動きだろうと足に力を入れた時に左太股から激痛が走った。左足を見るとティアーシャが持っていた短剣が太股に突き刺さっていた。


「殴打を喰らった時に、短剣を私の左足に、指したんですね?」


「体が勝手に動いただけ。」


ティアーシャは深呼吸しながら鳩尾を手で撫でる。どうやらまだ少し痛むらしい。


「そういえば、吸血鬼の弱点は今限定でないんだよな?ならあれが使えるか。」


「何を考えているのかは分かりませんけど、させませんよ!!」


夏姫がティアーシャに近付こうと踏み込んだ時に、ティアーシャは両手の手の平を夏姫に向ける。


「ええい!ぶっつけ本番でやってやる!『爆炎』!!」


ティアーシャがそう叫んだ時、手の平から巨大な炎が出現して夏姫を瞬く間に飲み込んだ。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「やっべ!!あの時みたいにまたやらかしちまったか!?」


ティアーシャが過去を思い出している間に炎は鎮火し、そこにいたのは全身真っ黒焦げになって倒れている夏姫の姿があった。


「白谷夏姫選手、脱落です!!」


文の宣言と同時に夏姫の体が消え去った。残ったティアーシャは頭をかきながら先程『爆炎』を放った場所を見詰めていた。


「……元の世界ではしばらく使えねえなこれ、折角出来たのに。」


しょんぼり顔でその場を去ったティアーシャだった。



















夏姫とティアーシャの決着が着いた時、狼とサナが互いを見て様子を伺っていた。


「君は確かサナだったね?1つ言いたいことがあるんだ。」


狼はサナの顔を見ながら言うが、若干顔が赤くなっていた。


「何だ?命乞いでもするのか?」


「いや、えっと、その、さ、サナの服装って、どうにかならないのかな?」


狼は見るのが耐えられなくなったのか、顔を横に向ける。磔も指摘していたが、サナの格好は上半身は下着のみ着けている状態になっている。恐らく刺激が強すぎたのだろう。


「能力の影響で薄着にしているんだ。どうにもならん。」


「そ、それなら、仕方無いよね。」


狼は首をブンブンと横に振って左腰の上にある日本刀を鞘から抜いて構える。


「貴様も刀を使うのか、いいだろう。かかってこい。」


「じゃあ遠慮無く行きますよ!」


狼は地面を強く踏み込み、サナに近付き日本刀を突き刺す。だがサナは冷静に刀を持っていない方の手で日本刀の側面を殴って軌道を逸らす。


「いい突きだが、私には届かん!」


軌道が逸れた事によって前のめりになった狼に、サナは右足でネリチャギを喰らわせる。


「うぶっ!!まだまだ!!」


地面に叩き付けられた狼だが、すぐに起き上がり日本刀を横なぎで切り払う。


「ほぉ、すぐに起き上がるとはな。」


横なぎの攻撃をサナは持っている刀で受け止めるが、すぐに刀を滑らせて受け流し、狼の顔面に殴打を喰らわせる。


「ぶっ!何で僕の攻撃は防がれてサナの攻撃は当たるんだ!?」


「さあな、誰が教えるか。」


サナの発言の後、狼は切り払い、切り上げ、突き、切り下ろし等を放つがサナはこれらの攻撃を刀や素手で受け流し、その度に狼に反撃の殴打や蹴りを喰らわせる。


「な、んで!?」


「貴様は技術力が足りない。どうやっても私には勝てんぞ?」


「だったら!地符 『大地ノ憤激(ボーデンツォルン)』!!」


狼は地面を思いっきり踏み、自分とサナの周りに大規模な地形変化を発生させる。


「地形変化を発生させるとはな。」


「まだまだ、こんなものじゃないですよこのスペルは!」


狼がそう言った瞬間、サナの足元の地面に亀裂が走り、上空から岩石が降り注いだ。


「中々に面白い技だな。」


「随分と余裕そうだね!足元の地面に亀裂が走って地場が崩壊しかけてるからバランスが取れないはずだよ!」


「余裕そう?いいや、冷静でいるだけだ。」


サナはバランスを崩した状態で降り注ぐ岩石を1つ残らず刀で弾き飛ばした。


「これも駄目なの!?」


「隙だらけだぞ狼。」


狼が動揺している間にサナは狼に詰め寄り、腹部を軽く殴った。軽く殴られた狼だが、何故か苦悶の表情を浮かべながら蹲り涎を口から吐き出した。


「一体、何の仕掛けが、あるんだよ!?軽く、殴られただけなのに。」


「貴様が知らない技術を使用しているだけだ。」


狼はサナと会話している間に立ち上がり、日本刀を鞘に戻して右腰の下にある刀を抜く。


「覚醒『修羅』!!」


狼が抜いた刀は黒刀<蒼悪>という名前の刀で、刃が真っ黒な黒刀。更に全身から赤いオーラを身に纏った。


「オーラが出現したか、何をしてくる気だ?」


「『縮地』!!からの雷光斬!!」


狼は0.1秒間に100回蹴ることで超高速で移動する方法の技術、『縮地』を使用する。更に蒼悪に雷鳴を落として雷を纏わせてサナに斬りかかる。


「っ!!」


サナは気配を頼りに蒼悪を刀で受け止め、流そうとするが体が痺れて流すことが出来なかった。


「これでもくらえ!!」


狼は蒼悪を片手で持ち、もう片方の手には120cm程の刀であるピアン・ブローという刀を生成して持つ。


「『風斬』!!」


蒼悪とピアン・ブローの二つの刀を構え、嵐程の風の勢いでサナの体を二刀両断しようとする。


「私の体を麻痺させたのは褒めてやる。だがそれで勝てると思ったのか?」


サナの体に蒼悪とピアン・ブローの切っ先が触れようとした瞬間、サナの体の周りから黄金の炎が燃え上がった。


「熱い熱い熱い熱い!!って蒼悪とピアン・ブローが熔けた!?」


「当たり前だ、弱体化してるとは言えこの炎は鋼が容易に熔ける温度だからな。『刀閃緋蹴(キックグレン)』!!」


狼は咄嗟に蒼悪とピアン・ブローを離したため、手が熔けはしなかった。だが黄金の炎を纏ったサナの足が狼の顔面まで迫っていた。


「っうわあぁぁぁぁぁぁ!!」


咄嗟に両腕を交差させて蹴りを防いだ狼だが、吹っ飛ばされた挙げ句サナの足が触れた部分、つまり狼の両腕が爆裂して焼き尽くされ重度の火傷を負ってしまった。


「これじゃ、刀は握れない。でも僕は絶対に諦めない!!終符『魔殺詠唱』!!」


狼は自分の上に風で出来た大きなカッターを出現させ、それを見たサナは感心した表情を浮かべていた。


「いいだろう、貴様のその技受け止めてやろう!!」


「行くぞ!!これが僕のさ「おおっと!手が滑ったぁ!!」ってわあああああ!!」


狼が風で出来た大きなカッターをサナに飛ばす寸前で、狼とサナの上空から大量の剣が降り注いだ。


「武装 『殺陣聖殲』、ごめんよ~手が滑っちゃったんだギヒヒ!」


「狼選手、脱落です!!」


「あれ?あのないすばでぃなお姉さんは脱落してない?」


アルマは文の宣言を聞いて首を傾げる。どうやら狼とサナの両方脱落させるつもりだったのだが、狼の脱落しか聞こえなかったため不思議に思っていた。


「不意打ちとはやってくれるな。と言いたいが何でもありのルールだからな、横やりが入ることは予想できてた。」


いつの間にかアルマの目の前にサナが立っていたが、アルマは特に驚きもせずに口笛を吹いていた。


「あらぁ、てっきり怒ってくると思ったんだけどなぁ?」


「そんなことで怒りはしない。だが貴様のその態度は気に入らない。」


「怒っちゃや~よ。俺はサナちゃんとは戦いたくないのよ。というわけでばいなら!」


アルマはズボンのポケットから閃光弾を取り出してサナに投げ付ける。閃光弾が破裂する前にサナは炎で消滅させるが、その隙にアルマは逃走していた。


「ふん、まあいい。次会ったら燃やしてやるか。」

















アルマが狼とサナの戦いに横槍を入れてる最中で、仁と霊乃が大太刀と御幣をそれぞれ構えて対峙していた。


「御幣を武器に使うなんて、巫女としていいんですかそれ?」


「いいんです、師匠の奥さんもお母さんも御幣を武器に使っていましたから!!」


霊乃はフンッと鼻を鳴らして仁に突っ込み御幣を振り下ろす。対する仁は大太刀で御幣を防ぐが、威力に押されて地面に叩き付けられた。


「くうぅ!!その御幣は何で出来ているのかな!?大太刀と打ち付け合って無傷な御幣を僕は見たことないよ!!」


「そういう御幣もあることを覚えてください。隙ありですよ仁さん?」


霊乃は地面に倒れている仁の脇腹を蹴り飛ばそうとするが、仁は横に転がって回避する。


「むむ、反応は悪くないですね。でしたらこれならどうでしょうか?霊符 夢想封印・集!」


霊乃は御幣は回して大量の大型光弾を出現させ、仁に向けて放つ。それを見た仁は急いで起き上がり、大太刀で大型弾幕を斬ろうとする。


「せいっ!!って斬れない!?」


「貴方の技術ではその弾幕は斬れません。ぼうっとしていていいんですか?」


「なら旋風『春一番』!!」


大太刀じゃ斬れないと判断した仁は桜色の竜巻を発生させ、霊乃の放った大型光弾を吹き飛ばす。


「竜巻、しかも斬撃効果まで付いていますね?」


「随分と余裕そうだね霊乃さん!竜巻はもう目の前に迫っているんですよ?」


竜巻が霊乃の所に迫るが、霊乃は特に慌てる様子もなく御幣を構え、竜巻に当たる瞬間に横に避けた。


「今だ!!霊楼符『夜桜』!!」


霊乃が避けた方向に仁が大太刀を上段に構えた状態で待ち構えており、霊乃に向けて振り下ろす。霊乃は難なく御幣で大太刀を受け止めるが、少し驚いた表情になる。


「何も見えません。先程のスペルの効果ですか仁さん?」


「そう、このスペルは相手の視力を奪うスペル。厳密には闇を創って暗闇状態にしているだけだけどね。」


「考えましたね。霊符『夢想霊砲』!!」


霊乃は仁がいるであろう所に七色の巨大レーザーを放つが、仁はそれを横っ跳びで避けて霊乃に近付く。


「やっぱり目が見えないと精度が落ちるね、少し卑怯かもしれないけど、勝負なので我慢してよ!」


仁は霊乃の懐に潜り込んで大太刀を切り上げて霊乃の体を斬ろうとする。だが霊乃はまるで見えているんじゃないかというくらい正確に仁の攻撃を横に移動して躱す。


「何で避けれるの!?まぐれは通用しないよ!!」


続けて突きをするために仁は踏み込むが、踏み込んだ瞬間に霊乃が仁の顎にアッパーカットを放って上空へ飛ばす。


「言い忘れていました、目が見えなくても呼吸や空間の物音とかで仁さんの位置や攻撃を察知することは可能なんですよ。」


上空へ吹き飛んだ仁の背中を霊乃は蹴り、更に上へ飛ばす。霊乃は物体が何もない空間を高まった脚力で蹴り、それによって何もない空間を歩く技術である『空歩』を使って空中を蹴り上がっていき、仁の腹にネリチャギを喰らわせて地面に叩き付ける。


「ガハッ!!ごふっ!!おえっ!!」


「さて、そろそろ決着を着けましょう。覚悟はいいですね仁さん?」


嗚咽している仁に霊乃は御幣を向けて宣言する。


「僕は、まだやれる!!結界『繚乱結界』!!」


仁は起き上がると自分の真下に繚乱結界という結界を展開する。この結界は仁を繚乱状態という状態にし、仁のステータスを大幅に増加させ、未来が見える予知能力まで付くという結界。


「自身の力を増強させる結界ですか、そのような力を隠し持っていたんですね。」


「僕のとっておきなんだこれ。さて、これを使ったからには勝たせてもらうよ!!満開『桜吹雪』!!」


仁は霊桜剣に桜色の霊力を纏わせ、防御不能の斬撃を霊乃に飛ばす。斬撃を見た霊乃はお札弾幕を斬撃に向けて放つが、お札弾幕は斬撃に当たらないですり抜けていった。


「相殺も不可能ですか、なら避けるしかないですね。」


目の前まで迫っていた斬攻を霊乃は横に移動して避けるが、避けた先にも斬撃が迫っていた。


「避けられない!!」


霊乃は身を固めて防御するが、防御は意味がなく、斬撃は霊乃の肩に当たりそこから血が流れ出す。


「防御不可、しかも未来まで見える。厄介ですね。」


「僕の切り札だからね!さあどんどん行くっ!!」


仁は続けて斬撃を飛ばそうとするが、この先起こる出来事を見てしまい驚愕の表情を浮かべる。


「斬撃『空間切断』!!」


霊乃は御幣に力を込めて斬撃を仁に放つ。霊乃の斬撃に気付いた仁は斬撃を避けようと移動するが、仁の移動に合わせて斬撃も大きくなっていった。


「くそ避けられない!!」


仁は斬撃を喰らって後ろに吹っ飛ばされて地面を転がる。数回転がった後に起き上がって未来を見ようとするが、何故か見れなくなっていた。


「仁さんの張った結界は消しておきました。これで未来も見れなくなりましたね。」


「そんな、僕の、切り札が……。」


「中々悪くない切り札ですが、今回は相手が悪かったですね。これでとどめです。」


霊乃はもう一度斬撃を放ち、仁にぶつける。斬撃にぶつかった仁は闘技場の壁に叩き付けられ、意識を失った。


「大丈仁選手、脱落です!!」


「目が見えるようになりましたね。『空間切断』が無ければ勝負は分かりませんでしたよ。」


霊乃は斬られた肩の傷の応急手当をしながらその場から離れた。

























サナから逃走したアルマだったが、逃走した先で大和と終作に囲まれていた。


「大和さん、まずはアルマさんを脱落させましょうか。」


「それには賛成だな終作、けど隙らばお前にも攻撃するけどな!」


「あらぁ?俺ピンチ?」


ニタニタと笑っているアルマだったが、終作と大和が飛び掛かってくるのを見て表情を元に戻す。


「ギヒヒ、飛び掛かるのはいいけどそれじゃ攻撃してくれって言ってるもんだぜ?怠惰 『ブラック・アイド・モンスター』!!」


アルマは両手に黒い弾幕を出現させて大和と終作に投げ付ける。それを見た二人は拳で黒い弾幕を弾こうとするが、拳に触れた瞬間に弾幕が大爆発を起こした。


「むやみやたらに弾幕を弾くのは止めた方がいいぜぇ?」


「だろうな、獄炎『北欧終焉の巨人王(スルト)』!!」


大和は鎧と大剣を身に付け、アルマの後ろから大剣を振り下ろすが、アルマは振り返りもせずに何処からか取り出した大剣で受け止める。


アルマが取り出した大剣は魔大剣・大百足(おおむかで)という大剣で、チェーンソーの様な刃をし、持ち手と刃の間にある部分には巨大な目がデザインされている。


「俺に不意打ちは意味ねえぞぉ?なんたってお前らの感情でバレバレだからな。」


「の割には最初の方で終作から不意打ちを喰らっていたが?」


「あー、あれ?あれは磔から離れるために敢えて受けてやったんだよ。磔とは戦いたくないの。」


アルマと大和は大剣を打ち付け合いながら会話し、会話の終わり際で鍔迫り合い状態になった。


「ところでよ、アルマの大剣のデザイン気持ち悪いんだが?」


「イカしたデザインだろ?結構お気に入りなのよこれ。それに、こんなことも出来るしな!」


アルマがそう言い終わる寸前で大百足の剣の刃が文字通りムカデの足が如く動き始める。


「こいつは魔力を込めるとチェーンソーのように刃が駆動するのよ。お前の大剣を斬っちまうぜ?」


「斬れるもんならな!」


互いに鍔迫り合いの状態から離れ、また大剣と大剣を打ち付け合う。今度は移動しながら打ち付け合い、その速度は音速を軽く凌駕していた。


「埒があかねえな。」


数千程大剣を打ち付け合った後、大和は身に付けていた鎧と大剣を消してアルマから距離を取る。


「諦めたのかい~?ある人が言ってたけど諦めない心っていうのは大事らしいよ~。」


「諦めるつもりなんて毛頭ないがな、魔頭『快活妖里の魔天王(五郎左衛門)』!!」


大和が手と手を叩くと数えきれないほどの妖怪がアルマの周りに出現し、一斉に襲いかかった。


「ちょっとちょっと~!?この数は卑怯なんじゃないの?」


アルマが大和に向けてブーブー文句を言う。ちなみにアルマの周りにいる妖怪の数は軽く一万を越えていた。


「知るかよんなこと。」


「辛辣ぅ!!でもこれだけの数相手すんの面倒くせえな。なら『感情解放 傲慢』!!」


アルマは頭にある角から黄金の炎を噴き出し、全身を炎で覆った。


「てめえら、HI・RE・HU・SE!」


アルマが腕を組みながら妖怪達に向けてそう言うと、妖怪達は全員アルマの言うとおり地面に平伏してしまった。


「んだよ、これは!?」


妖怪を生み出した大和も同じように地面に平伏してしまう。立ち上がろうとしても何故か体が言うことを聞いてくれない。


「感情に抗うのは無理だぜ、どんなに強い奴でもな。『感情解放 憤怒』からの『憤怒 アルマーニイレイザー』!!」


アルマのツノから噴き出していた黄金の炎と体を覆っている炎が消え、代わりに真っ赤な炎をツノから噴き出し、雷を纏った炎を口から出し始め、全方位に赤いレーザーを放った。


「くそったれが!」


大和は平伏した状態から立ち上がり、自分の元へと来るレーザーの前に妖怪を生み出して盾代わりにした。


「無駄だぜ、このレーザーは触れたもの全てを爆破させる。爆発に巻き込まれるぜ大和?」


「!!!」


アルマの指摘通り、赤いレーザーが妖怪に触れた瞬間、大爆発を起こし、大和もそれに巻き込まれてしまっていた。


「とまあ、このくらいじゃ大和はくたばらないから『感情憑依 怠惰』!!」


アルマは立ち膝をついている大和に近付き、首を掴んで体を持ち上げる。するとアルマの全身を覆う黒鉄の甲冑に身を包みこんだ。


「こいつはまず、い!」


「大和は強いからさぁ、早めに脱落させておきたいんだよねぇ。悪く思わないでちょ!」


大和は首を掴んでいるアルマの手を振りほどこうとしたが、すぐに体から力が抜け気を失った。


この『感情憑依 怠惰』という技は触れたもの、自身に触れるもの全ては脱力し、生への執着すらも失ってしまう。つまり死ぬが精神的な面で抵抗が強いものは死を免れるが脱力する。


大和は能力の影響で死なない為、アルマは全身全霊の力を用いて大和の体力だけを失わせた。


「くそっ!!」


だが大和はアルマを渾身の蹴りで吹き飛ばし、その場から逃走した。どうやら完全には体力を失わせる事が出来なかったらしい。


「あれま逃げられちった。まっ、後でやっつければいいか。チョーシにの「調子に乗ってるのはアルマさんですよ。」あっ?」


アルマが服に付いた汚れを払っていると、接近していた終作の拳が背中に当たっていた。


「『寸勁』!!」


アルマは終作の拳で前方に吹き飛ばされ、地面を数回転がる。


「っえほ!!えほっ!!痛えじゃねえかこの野郎!!」


「 隙を見せたからです。ここは横やりが何時入ってもおかしくないんですよ?」


「んなことわかって、あら?」


アルマは唾を吐き出して起き上がるが、起き上がった瞬間に胸が氷柱によって貫かれていた。


「桜ぁ!!流れ弾をこっちに飛ばすんじゃねえよ、冷てえじゃねえかよ!!」

















「うっさいわねアルマ、弾いた氷柱がたまたま胸を貫いただけじゃないの。」


アルマからの怒号を桜は無視してソードブレイカーを構える。対する帝は特に表情を変えずに桜を見ていた。


「意図的にも見えたのですが、どうでもいいですね。」


「あんた、結構辛辣よね?まあいいわ、あんたは私には勝てないんだから。」


桜はソードブレイカーを回しながら帝に向けて突っ込むが、下から現れた氷によって全身を凍らされた。


「勝手に勝敗を決めないで。」


「勝手になんか決めてないわよ。あんたの能力や実力を知った上で言ってんのよ。」


全身凍らされた桜だったが、すぐに体から炎を噴出させて氷を溶かす。


「私に能力頼りの戦法で挑もうとするなんて千年早いわ。」


「よく喋る人、醜いわね。」


桜の言葉を聞いても帝は特に動揺せず、自分の周りの気温を下げ、それによって出来た氷を弾丸の形にして桜に放つ。


「無駄よ、そんな攻撃喰らうわけないじゃない。」


ソードブレイカーで氷の弾丸を弾く桜、だがその様子を見た帝はそれでも氷の弾丸を飛ばすことは止めなかった。


「この回避方法にも飽きたわ。何時まで飛ばすつもり?」


「もう飛ばさない。『零天氷牙』!」


帝は氷の弾丸を飛ばすのを止めた瞬間に、桜の上下左右前後に20階程度のビル一つ分の極大サイズの氷柱を形成して飛ばした。


「意外と大きいわね。けどこんなもん虚仮威しに感じるわ。」


桜は鼻を鳴らし、上から迫ってくる氷柱の真ん中をソードブレイカーで斬って脱出しようとする。


だがその先にも同じ大きさの氷柱が迫っていた。帝は上下左右前後に一つではなく無数の氷柱を形成していた。


「虚仮威しなんてしない。殺るなら徹底的に殺る。」


桜は無数の氷柱によって押し潰され、帝は更に桜が押し潰されている位置の気温を下げ始める。


「この程度か、正直がっかりしたわ。」


桜の声が響いた瞬間、炎柱が燃え上がり無数の氷柱が全て蒸発した。


「貴方の位置の気温は-100℃まで下げているはず、なのに何故炎柱が出現出来るの!?」


「気温をいくら下げようが命術によって形成した炎は消せないわ。私の命が有る限り炎を問答無用で出せるもの。」


驚いている帝を見ながら桜は首を回してコキコキと骨を鳴らす。


「でも二回程死んだからね。普通の相手ならここで決着が付いていたわね。」


首を鳴らし終わった桜は一気に帝に近付く。それをさせまいと帝は氷柱を壁のようにして配置したり、桜の体を凍らせようとする。


だが壁のように配置した氷柱はソードブレイカーによって砕かれ、桜の体を凍らせようとしても何故か凍らなかった。


「あんたの能力はもう解析済みよ。」


「っ!!」


ソードブレイカーを帝に向けて振り下ろすが、帝は気温を下げて氷の密度を濃くした氷柱でソードブレイカーを受け止めた。


「へぇ、でもソードブレイカーを受け止めたからって私の攻撃は終わると思ったら大間違いね!」


桜はソードブレイカーを手離し、正拳突きを帝に喰らわす。それによって吹っ飛ぶ帝の背後に回って体を蹴り上げて宙に浮かし、ハンマーナックルで地面に体を叩き付けた。


「かふっ!!ごふっ!!」


「ふーん、接近戦は不得意みたいね。」


「っぅ!!『虚馮』!!」


口から流れる血を拭いて帝は立ち上がり、指先を桜に向けてそこから冷気を放つ。


「氷柱じゃない?一体何の技なのかしら?」


怪訝な表情で桜は帝の放った冷気に触れる。すると冷気に触れた桜の手が切断されていた。


原理としては、冷気で物体の強度に変化を齎らした後に冷気が離れた瞬時の温度変化で更なる強度変化を起こす。それにより脆い部分から綺麗に崩れて落ちる。


「なるほどねぇ、でも私にそれは悪手よ!」


桜は冷気に触れたらどうなるかわかった上で帝に突っ込む。突っ込んでいる最中に冷気が腕や足や体といったありとあらゆる部分に触れて崩れ落ちるが、すぐに再生するので気にもしなかった。


「特に痛がる様子も見せないなんて、貴方は出鱈目です!!化け物ですか!!」


「ええそうよ、私は化け物よ。」


驚く帝を見ながら桜は顔面にライダーキックを入れ、宙に浮いて吹っ飛ぶ帝の足を掴みジャイアントスウィングで壁に激突させる。


「はぁ、ふぅ、ふぅ。」


「攻撃が当たる瞬間に体に氷を纏わせ、鎧のようにして攻撃の威力を軽減したのね。」


桜は攻撃の感触がいまいちだった理由を解析し、ソードブレイカーを拾いに行く。


「次からは能力に頼らないで戦闘出来る術を身に付けることね。」


「勝手に、終わらせないで!」


帝はこれまでよりも大きい氷柱を複数形成して桜に放つが、桜はそれを見てため息をつく。


「そんな氷柱無意味よ。白霊『 無想天生~斬~』!!」


ソードブレイカーを構えた桜は一瞬で氷柱全てを細切れに切り刻む。


「これも駄目!?」


「これで終わりよ!!」


桜は気配を極限まで薄くして帝に近付き、体を一刀両断しようとするがソードブレイカーが帝の体に触れる寸前でいきなり止まった。


「どういうこって両手に氷柱が突き刺さっている!?」


「『冷蒼の花園(ブルー・ローズ)』、私の周りに霜を配置した事に気付いてなかったみたいね。いえ、気付いていたけど無視したのよね?」


帝が説明している間にも桜の体から氷柱が自動で出現し、ついには体全体が氷柱によって貫かれていた。


『冷蒼の花園』は特殊能力『氷帝』でまず一定空間に寒気を齎らす。その寒気の中で降る大量の雹に触れたら最後、触れた瞬間から自動で瞬時に氷柱に変化し、体に触れた雹が氷柱として改めて体に突き刺さるという技。


「私の能力は解析済みと言ってたけど、まだまだ見せてないものがたくさんあるの。」


「みたいね、でも観測さえ出来れば!!」


不死の影響で体が再生した桜は氷柱を砕こうとするが、何故か今までみたく氷柱を砕くことが出来なかった。


「どう、して!?」


「貴方の周りの気温をある温度以下(・・・・・・)まで下げているの。絶対零度の時の温度は知ってるかしら?」


「馬鹿に、してんの!?それくらい、知ってるわよ!!」


体を再生させながら桜は帝の問いに答える。絶対零度の時の温度は-273℃である。


「そう、なら教えて上げる。今の貴方の周りの気温は絶対零度よりも更に低い温度なの。」


「そんなこと、あり得るのかしら!?」


絶対にあり得ない事だが、帝の能力だけは例外である。帝の能力は氷系能力の中では最高に位置し、威力も支配範囲も桁外れである。


なので彼女が本気を出すと絶対零度の定義である-273℃を遥かに凌駕した気温を出すことができ、その温度実に-6000℃である。今回は能力が弱体化しているため、そこまではいかないが。


「あり得ます。今はそうですね、-2000℃くらいですよ。」


「そ、ん、な。」


帝が桜の周りの温度の説明をし終わった時、桜は力なく項垂れた。本来なら体の再生による体力の消費は微々たるものだが、何時もより3倍の体力を消費するため、底を付いてしまった。


ちなみに帝と会話している最中に100回以上体を再生させていた。


「能力に頼らない術で戦闘出来るようにしろですか、頭の片隅に置いておきますよ。」


そう言い帝は歩き出そうとするが、その瞬間に胴体に十文字の切り傷が現れた。


「刀で、斬りかかれる、前に、止めたと、思ってましたが、少し遅かった、みたいで、すね。」


桜が帝に近付き、体を一刀両断する前に気付かれない程の速さで帝の胴体を十文字の形で斬っていたらしい。


「相討ち、でしたか。」


「安倍桜選手、黒峯帝選手、脱落です!!」

























桜と帝が脱落した後、反対側の場所では凄まじい混戦状態になっていた。


「だぁぁぁぁぁ!!何でアルマはこっちに来んだよ!?」


「仕方無いじゃぁん、いい身代わりがそこにいたんだから。」


「おい、今俺の事を身代わりと言ったか?えぇおい!?」


磔は自分に向かってくるお札弾幕を弓で弾きながら、アルマは闘気で出来た弾幕を大百足で弾きながら会話する。


「ちょっと終作さん!?こっちに弾幕を飛ばさないでください!!」


「その台詞をそっくりそのままお返ししますよ霊乃さん!!」


「何て言うか、カオスだなぁ。」


磔、アルマ、霊乃、終作、ティアーシャが入り交じって戦う五つ巴状態になっていた。


「もう!!まとめて相手してあげます!!龍符『画竜点睛』!!」


霊乃が手を頭上に上げると、そこから禍々しい赤黒色に染まった槍が無数に出現し、ティアーシャ以外に降り注いだ。


「ちょっと待てちょっと待て霊乃ちゅぁわん!?ティアーシャちゃんには振り注がないのは何でかなぁ!?」


「貴方達が厄介極まりないからです!!」


「何てこった!?っていいこと思い付いちゃった♪」


アルマはオロオロと辺りを見渡すが、磔が近くにいた事に気付くと気配を消してスーツの襟を掴んだ。


「おいアルマ?お前一体なにす「行けぇ!!俺のA○フィールドォォォォ!!」アルマてめぇこの野郎ォォォォォォォ!!」


磔のスーツの襟を掴んだアルマは自分に降り注ぐ槍に向けて磔を投げ飛ばした。


「これが俺の新たな技、『異法 身代わり』だ!」


「「うわぁ……。」」


アルマのえげつない行為を見た霊乃とティアーシャはゴミを見るような目でアルマを見詰めていた。


「ああもう!!『桜火乱舞』!!」


磔は自分に向かってくる槍に無数の拳打の圧を放って全て弾き飛ばした。ちなみに磔が飛ばした拳打の圧は摂氏200℃の温度になっている。


「ひゅう~♪流石磔だねぇ。やれば出来る子だって信じてたよ。」


「……極符 『エンドエボルバー(終わりなき成長)』」


磔は地面に着地した後、緑色、銀色、蒼色の3種類の闘気を体から噴出させ、スーツの上着と弓矢を放り投げた。


磔が発動させた『エンドエボルバー』という技は自身の身体能力を極限まで上げる技である。


「アルマがふざけるなら俺にだって考えがあるんだぞ。」


「へぇー、あの真面目な磔がふざけられんのかなぁ?」


「『林』!」


磔がそう言うと、いつの間にかアルマの背後に回っており、羽交い締めでアルマを拘束する。


『林』という技は一瞬にして相手の背後に回ることが出来る技術。ただし、背後にしか回ることが出来ないという欠点もある。


「えっ?ちょっ、何してんの磔?えっ、マジ?」


「皆ァ!!俺の体ごとアルマの体を吹き飛ばすんだァ!!」


「「「了解!!」」」


「あれちょっと!?何か俺の知ってる流れと違うんだけど!?」


アルマはジタバタと暴れて磔の羽交い締めから逃れようとするが、それを磔は必死に抑える。


「霊符『夢想霊砲〈群〉』!!」


「俺流天破活殺!!」


「『爆炎』!!」


磔とアルマに向けて虹色の巨大レーザーや大量の光線型の弾幕。闘気でできている衝撃波、炎の群れが襲い掛かった。


「磔ゥゥゥゥゥゥ!!覚えてろよォォォォォォ!!」


アルマの絶叫後、辺り一面に衝撃波が発生して煙が上がった。


「やったか!?」


「磔さんそれはフラグってどうして無傷なんですか!?」


一息つく霊乃の横に腕を組みながら煙が上がっている場所を見ている磔がいた。しかも体には傷一つ付いていなかった。


「攻撃が当たる瞬間に『林』で霊乃の後ろに回って回避したんだよ。」


「なるほど、ではアルマさんは?」


「あぁ、アルマはいいやつだったよ。」


「あの人は話を聞きませんからね。」


「まだ生きてるよ!勝手に殺さないでくれるかなぁ?いや2回ほど死んだけどさ!」


煙が晴れると、上半身裸のアルマが立っていた。それと同時にアラームみたいな音が鳴った。


「えっと、開始から5分経ちました。ここから封印されていた技や能力を使うことが出来ますよ!」


「もう怒ったもんね!お前らが泣くまで絶対いたぶってやるからな!『怠惰を超えし(ツァトグァ・)不浄の神々( アブホース・イデア)』!!」


アルマがそう叫ぶと、髪と眼の色が紫色になった。それを見た磔と霊乃は身構えたが、終作とティアーシャは2人を見て首を傾げていた。


『怠惰を超えし不浄の神々』は世界を越えし者の第1段階、『到達者』状態になる技である。


「磔と霊乃はこれを知ってるもんなぁ!!ならまずは終作からぶちのめしてやる!!」


アルマは異空間から双剣を取り出していた。この双剣は芥骨(あくたぼね)と言い、刃の部分が骨の様なデザインをしている。


更に刃らしき背骨の出っ張りのような部分が、確かめるように奇怪音を発しながら縦回転をしていた。


「この力は!!」


「行くぜ終作、神にお祈りは済ませたか?小便は済ませたか?ガタガタ震える準備はOK?」


アルマが双剣を手で弄びながら終作に向けて言った後、光速で終作に近付き肩を斬った。


「速すぎる!?」


「そうらそら!!どんどん行くぜぇ!!」


終作は攻撃を回避出来ないと察したらしく、両手を顔の前にクロスさせ、身を固めて防御するが、アルマの双剣によって体中切り刻まれていく。


「防御しているなら、この攻撃が最適だな!」


アルマは双剣を放り投げ、正拳突きを終作の顔面めがけて放つ。


「何をしぶっ!?」


終作は顔を手で防御していたが、アルマが放った正拳突きは防御をすり抜けて顔に当たって右頬が深くめり込んだ。


「これは空間飛躍攻撃でな、今の状態は防御をすり抜けて攻撃出来るんだぜ。『神魔の銃殺処刑(アルマーニクルーエル)!』」


前のめりに倒れそうになるのを堪え、前を向いた終作だったが視界の範囲内に大量の銃火器が発射されようとしていた。


「ここまでですか、中々に楽しかったですよ。」


終作は笑いながら言い、発射された銃弾の嵐に呑み込まれた。


「終始終作選手、脱落です!」

















アルマが終作の方へと向かった後、磔と霊乃とティアーシャは互いの様子を伺っていた。


「アルマはあれを使ったか。霊乃、ティアーシャ、2人纏めて相手してやる。」


磔は体から噴出していた3色の闘気を先程よりも更に大きく噴出させながら手招きをする。


「なめてんのかおい?」


「いえ、磔さんは私達をなめている訳ではありませんよティアーシャさん。」


額に青筋を浮かばせるティアーシャを霊乃が落ち着かせる。だが納得していないのかティアーシャの青筋は浮かんだままだった。


「まあ、これから分かるさ。とにかくかかってこいよ。」


「ふん、『風刃』!!」


手招きする磔に対してティアーシャが風の刃を放つ。磔はそれを見て避けようとはせずに無防備の状態で全部受けた。


「んな攻撃効かねえぞティアーシャ?俺に遠慮なんかいらねえからさ、全力で来いよ!」


だが磔の体には傷一つ付かず、着ているYシャツでさえ切れていなかった。


「嘘だろ?これでも俺の全力の『風刃』なのによ!」


「『林』!!」


狼狽えるティアーシャに対して霊乃は相手の背後に一瞬で回る技術を使用して磔の背後に回った。


「おいおい、俺にその技術は通用しねえぞ霊乃?」


隠し持っていた棒を取り出し、先端から光を放ちビームソードの形状の武器で磔に攻撃しようとしたが、磔は後ろを見ずに裏拳で霊乃の顔を殴り飛ばす。


「かはっ!!ど、どうして!?」


「その技術は俺が編み出したからな。対処方法は分かってんだよ。」


磔に殴られて吹き飛んだ霊乃だが、地面を強く踏ん張り、『縮地』を使用して磔に近付く。


「『指鎧』!!」


指だけに霊力を集め、さらに筋肉の能力を高めた状態を作り出す技術を使用して磔の背中に攻撃する。


「投げ捨てられた弓がある。なら『変動』!!」


ティアーシャは近くにあった弓と矢を浮かし、磔の前と左右に放つ。前後左右から攻撃が迫る磔だが特に焦った様子は無かった。


「前後左右から挟み込むようにする攻撃は悪くないんだが、遅すぎる。」


磔は左右から来る矢を闘気だけで弾き、体を1回転させ、後ろから来る霊乃の攻撃を避ける。


「返すぜ、『百練自得の極み』!!」


磔は右手に蒼色の闘気を纏わせ、霊乃の背中を軽く殴る。すると霊乃の移動スピードが倍になり、指がティアーシャの肩に刺さった。


先程磔が使用した技術だが、物体や生物の移動スピード、攻撃力を倍にするという技術である。


「あがぁ!!」


「ご、ごめんなさいティアーシャさん!!」


「さて、これからどうするんだ霊乃?」


肩を回しながら磔は霊乃に問い掛けるが、霊乃はティアーシャに謝った後にビームソードを構えて磔に突撃する。


「はぁ、はぁ、体力がもう、でも最後の一撃くらい喰らわせてやる!!『業火』!!」


肩の傷から血が流れ、夏姫と戦った影響で体力がほとんど残ってないティアーシャは最後の足掻きとして、『爆炎』を放った時よりも更に大きい炎を磔に向けて放った。


「ん?えっ?誰だこんな大きい炎を放ったのは!?」


避けようとする磔だが、炎に気を取られた隙を狙って霊乃がローキックで磔を転ばせる。


「っと、あっ、これ避けきれないわ。」


すぐに起き上がった磔だが炎に呑み込まれた。だが数秒後には拳圧で炎を消した。


「これも駄目か、けど、火傷を負わせることが、出来た、ぜ。」


磔の露出している左腕が火傷を負い、それを確認したティアーシャは満足そうな笑みを浮かべて倒れた。


「ティアーシャ選手、脱落です!!」


「まさか『エンドエボルバー』状態で火傷を負わされるなんてな。火事場の馬鹿力ってやつか、ティアーシャはこれから伸びるな。」


磔は左腕を見ながらティアーシャの放った攻撃を称賛するが、その時に上空から霊乃が降りてくる。どうやら炎は飛んで回避したらしい。


「んで、タイマン勝負になったわけだが霊乃、勝負するか?」


「正直に言いますと、その状態の磔さんには私の今の実力では敵わないです。」


「けど諦めるつもりはないんだろ?」


霊乃はビームソードを磔に打ち付け、磔は霊乃の腕を弾いたり受け流したりして避ける。


数十、数百、数千、数万と霊乃はビームソードを磔に打ち付けるが、磔は全ての攻撃を弾いたり受け流す。


「当たり前です!天龍『インドラ』!!」


霊乃はそう叫んだ後、ビームソードを磔の顔目掛けて投げ付けて距離を取る。


「一体何が狙いってマジか?」


首を傾けて難なくビームソードを避ける磔だが、上を見上げると雷のようなレーザー弾幕が無数に広がっていた。


「更に『炎界』!!」


続けて霊乃は掌から霊弾を磔に向けて撃ち込む。ちなみにこの霊弾、着弾したところから即座に星一つを包み込むほどに巨大な炎を作り出し、炎の世界を出現させるという恐ろしい霊弾である。


「こりゃ、回避は無理だな。出来ないこともないが、霊弾がヤバそうだ。」


磔は何かを察したのか、降り注ぐレーザー弾幕と霊弾を避けずに直撃した。


「霊符 二重結界!!」


霊弾が当たったことを確認した霊乃は自分の周りに結界を張る。何故なら着弾したところから即座に星一つを包み込むほどに巨大な炎が発生するからだ。


「はぁ、はぁ、あれ?」


だが待っていても炎が広がることは無かった。不思議に感じた霊乃は息を整えながら結界を解き状況を確認しようとする。


「霊乃、この世界を炎の星にする気か?ええおい?」


「なっ!!あれほどの弾幕は磔さんでも避けられない筈、なのに何故傷一つ付いていないんですか!?」


霊乃の張った結界の前に磔が額に青筋を浮かばせながら立っていた。体を半透明にさせながら。


「まああの弾幕の量は俺でも完璧には避けられないな。何処かに傷が付いてもおかしくはない。」


「ですが、磔さんはどこも傷が付いていないじゃないですか!?しかも体が半透明、まさか!!」


霊乃は『斬脚』の技術を使って磔に斬撃を飛ばすが、斬撃は磔の体をすり抜けていった。


「極符『夢想添生(むそうてんせい)』、博麗一族ではない者は使うことが出来ないと思っていたのか霊乃?」


「くっ!!」


霊乃は磔の威圧に狼狽えた後、意識を磔に全集中させる。だがこの判断がいけなかった。


「『種子島煉砲』!!」


「えっ?あああぁぁぁぁぁぁ!!」


サナの放った飛炎球に霊乃は呑み込まれ、体が瞬く間に蒸発してしまった。


「博麗霊乃選手、脱落です!」


「一応3000℃近くまで温度を上げた飛炎球を喰らわせたが、やりすぎたか?」


「まあ霊乃は知を持って武を制す程度の能力を持っているからな。簡単に言うと自らの知識の限り力を支配することができるからやりすぎではないな。」


だが今回は能力が弱体化している事に加え、疲労、油断など様々な条件が重なってしまったため、やられてしまった。磔は『夢想添生』を解除しながらサナの飛炎球を回避していた。


「霊弾は異空間の中に放り込んだ。やり方は秘密だけどな。」


「そうか、では貴様が相手か。『鬼焔斬(きえんざん)』」


「そういうことだな、遠慮せず来い「ふんっ!!」とは言ったが遠慮無さすぎ!!」


サナは持っている刀に炎を灯し、磔に炎の斬撃を放つが、磔は両手を前に出し、円を描くように動かして斬撃を防いだ。手が熔けるほと高い温度の斬撃だが、磔は闘気で両手をコーティングして熱さを防いでいた。


「それは空手の技術の『廻し受け』だな?私の炎を防ぐとはな。」


「どうも、そっちは狼との戦いでロシア軍隊格闘術の『システマ』を使ってたよな?」


サナは自分の使っている格闘術を当てられ、感心した表情で磔を見詰める。


ちなみに『システマ』とは近代戦における様々な状況を想定した実戦的格闘術の事であり、徹底した脱力と柔らかな動作が特徴。


「そうだ、だが私の格闘術は『システマ』だけではない。」


サナは改めて刀を構え、磔に向かって斬り込むが、磔は刀の側面を弾いて避け、ハイキックを放ち顔面に当てる。


しかしサナは首を捻ることでハイキックの威力を受け流し、磔の軸足目掛けて刀を切り払う。


「危ね!!」


刀が軸足に当たる寸前で磔は軸足のみで跳躍し、その勢いで体を横回転させて浴びせ蹴りを放つ。


だがこれもサナは当たる寸前に肘を上にして浴びせ蹴りの軌道を上へ逸らし跳び膝蹴りを磔の腹に打ち込む。


「うぶえっ!!」


跳び膝蹴りを喰らった磔は地面に仰向けで倒れ込む。その隙にサナは磔の心臓に刀を突き刺そうとする。


心臓に刀が刺さる前に磔は後方倒立回転の要領で後ろに転がって避けた。


「この状態でも格闘じゃサナに勝てそうにないな。強えよ、本当に。」


「磔も中々だ、私の拳や蹴りは外部破壊と内部破壊を徹底的に鍛え上げ、攻撃を喰らった相手の部位を破壊するが、磔は寸での所で全て避けている。」


そう言いながらサナは足をぶらぶらさせ、脱力した状態でハイキックを放つ。


「っぐ!!ってこの傷の跡、鞭打まで使えんのかよ!!」


ハイキックを左腕で防いだ磔だが、防いだ部分の皮膚が剥がれ筋肉の繊維が丸見えの状態になっていた。


「さっきの膝蹴りといい、鞭打といい、中国武術やムエタイのわざまで使えるのか。」


「そこまで見抜くとは流石だ。しかも鞭打は喰らうと悶絶する程の痛みが走る筈だが、顔色を一切変えないとはな。」


「痩せ我慢してるだけだ。さて、そろそろ反撃しますか。サナの知らない武術を見せてやるよ。」


磔は右手首を回し、2回ほど軽くジャンプする。何か来ると感じたサナは刀を構えるが、気が付けば吐血していた。


「なん、だと!?」


吐血してからサナの認識は追い付き、目の前に磔が立っておらず懐に潜り込んで中段の前蹴りを喰らわせていた。


「『縮地』からの『桜星』、結構効いたろ?」


磔は『縮地』を使い、光速移動でサナの懐に潜り込み、その勢いを利用して各骨の部位を連動させて超神速の突きを放つ『桜花』の強化版である『桜星』を放った。


速すぎるが故に、サナは蹴りを受け流すことが出来ずまともに喰らってしまっていた。


「ああ、効いたさ。貴様はやろうと思えば私の認識できない速さで攻撃出来るんだろう?何故最初からそれをしない?」


「サナの使う格闘術に興味があったからだ。けど、そろそろ終わらせる。」


「そうか、このままでは私は負けるな。だが何も出来ずに負けるのは嫌でな?互いの一番強い技を放って決着を着けたい。」


「いいぜ、その提案受けてやるよ。」


サナの提案を磔は受け入れ、互いに距離を取る。提案を受け入れられたサナは何処か嬉しそうに笑う。


「これから放つ技はな、初めて使用した後に危険すぎて封印指定された技なんだ。」


サナはそう説明しながら手元に超巨大な火球を形成し始める。対する磔は3色の闘気を収め、深呼吸をしていた。


これからサナが放つ技は戦場で使用した際、100万もの敵兵が一瞬で消し飛んだのを特別観測機器にて記録し、火球はその熱で地球そのものに様々な異常をもたらしてしまった為、それ以降使われる事が無くなった封印指定技である。


「あの火球、生半可な技だと呑み込まれて終わりだな。避ければかなりまずい事にもなりそうだし、安請け合いしなければ良かったか。」


自分の持っているどの技を使えばいいか考えながら磔は提案を受け入れた事に少し後悔していた。


「この火球は計り知れない威力になっている。常識に囚われない技でこい!」


どの技で対抗しようか考えていた磔だが、サナの発言により磔はある戦いを思い出した。


それはどんなに自分が強くなろうとも、相手がそれを上回り、何度も負け続けた戦い。何度も死にかけた戦い。だが負け続け、死にかけた戦いだからこそ得られたものもあった!


「でも、一度言ったことは変えられないしな。あの巨大な火球に対抗できるといったらあれしかないよな!『回想する終焉の超騎士フラッシュバック・エンドナイト』!!」


磔は透明の闘気を全身から噴出させ、世界を越えし者の第2段階、『覇者』になり右腕を大きく振りかぶった。


誰かに教えられた技でもない、だが磔はその技の一挙手一投足を見ている。極限状態の戦いの中で見て、実際にその技を喰らったからこそ思い出せる!


「(今思えばあの技を喰らって良かった。腹部が3分の2消し飛んだのは嫌な思い出だけどな!)」


「準備は完了した、貴様の方も完了したか?」


「ああ、何時でもいいぜサナ!」


「では行くぞ!!『黄金大和大団炎(ブレイジングジパング)』!!」


サナは手元にある超巨大な火球を磔に超音速で投げつける。それを見た磔は全身から噴出する闘気を右腕に全集中し、半径数kmに渡って地面に亀裂が走り、陥没するほど地面を思いっきり踏み締めた!


「『超騎士の怒涛の一撃ガイアオブフォルテシモ』!!」


振りかぶった右腕をサナ目掛けて放ち、超巨大な打突の拳圧を火球にぶつけた。一瞬拮抗したが、すぐに拳圧が火球を呑み込み、サナの体を圧で押し潰した。


「いい戦いだったよ。」


巨大な爆音が辺りに鳴り響き、衝撃波も辺り一面に放たれた。


「サナ・ブルクハルト・ヒガシヤマ選手、脱落です!!」


「ロシア軍隊格闘術か、今度はそれを極めてみるか。」


新たな目標が出来た磔は笑みを浮かべるが、後ろからアルマの気配を感じ取り、表情をすぐに戻した。


「いやぁ、いい戦いだったんじゃないの磔?」


「アルマか、んでこれからタイマン勝負になるんだがやるか?」


「もちのろんよ、『何者も恐れぬ無想神アザートース・オーバーウェルム』!!」


その瞬間、アルマの髪と眼が紫から白く染まり、純白の衣を身に纏った。


「第3段階『踏破者』状態になったか。」


「来なよ磔、最終決戦といこうぜ!」


アルマがそう叫び1歩踏み出そうとした時、磔はアルマの目の前まで迫っていた。


磔が先程なった『回想する終焉の超騎士』状態の時には、ある技術が常時使用されている。


その名も『反則手・後出し』、本来はこれは発現や使用する事が禁じられる技法である反則手。古来より反則とされる動作、行動から名前を取って付けられた古の技術。


この反則手はジャンケンの後出しの名を冠する事から、先読み、先制に対して反則的な効力を発揮する。相手の次の動作が次弾装填される弾のようにハッキリクッキリと見え、そしてじっくりとっくりと視れるようになる。


「悪いがアルマのその状態は厄介極まりないからな。手早く終わらせる!」


更に追加効果で、相手が動作を開始した直後"後出し"が成立するので、半自動的に体が反応する為、必ず相手より早く、速く、疾く行動出来る。


アルマが1歩踏み出した時、磔の拳がアルマの顔面に直撃、してはなく辛うじて反応したアルマが首を横に傾けて回避した。


「危ない危ない、下手に動けねえなこれ。」


「反射速度はそっちが上か。」


しかし、この反則手を上回るのが、単純な『無意識の動作』、つまり『肉体の反射反応』である。


「けど、んなこと関係ねえな!」


攻撃を避けられたことに驚く磔だったが、すぐに気持ちを切り替えてアルマに攻撃する。


そこから磔とアルマによる拳の打ち合いが始まった。数万数億数兆数京、観客には磔とアルマが何人にも分身して拳を打ち合っているように見えていた。


「おらぁ!!」


アルマの拳が磔の顔面に迫るが、磔は上半身を逸らして回避する。その勢いを利用して磔はサマーソルトをアルマに喰らわすが、両手を交差してアルマはサマーソルトを防ぐ。


「まだまだ行くぜぇ!!」


磔とアルマは再び拳の打ち合いに戻る。この攻防の間にも衝撃波が発生し、地面は亀裂が走って抉れたりし、闘技場の壁も衝撃波で吹き飛んでいく。


観客席にはパシェットが張っている特別な防護結界があるため、何の被害も出ていなかった。


「流石だな磔、俺とお前では1段階差があるのに互角の勝負になっている。」


「『反則手・後出し』の効果を最大限活用してギリギリ渡り合っているだけだアルマ。」


アルマと磔は互いの手を掴み、ギリギリと力を込めながら会話する。その時に力と力がぶつかり合う影響で地響きが発生し、瓦礫が吹き飛んでいく。


「けど、この『回想する終焉の超騎士』は時間制限があるんだよ。」


『反則手・後出し』という効果を常時使用しているため、磔は体力が最大の時で『回想する終焉の超騎士』は20分しか継続使用出来ない。


なので、今は体力がかなり減っているためあと7分しか使用出来ない状態になっている。


「なら、こっちも終わらせるか。憤怒『雷神と炎神の怒りボルテフレイムフューリー』!!」


アルマの背後から炎と雷を纏わせた弾幕が出現したのを確認した磔は力を緩め、前のめりになったアルマの脇腹を中段横蹴りで吹き飛ばす。


「ッチィ、面倒くせえ弾幕だな。」


追撃をかけようとした磔だったが、目の前の視界を覆い尽くす程の炎と雷を纏わせた弾幕が迫っていた。


だが磔はごくわずかにある弾幕の隙間を縫うようにして移動し、弾幕を全て回避した。


「やっぱり避けられるよな。でもあまり長くなるのもあれなので。」


磔が弾幕を全て回避した後に見た光景は、アルマが指を印を切る仕草をし終わっていた。


「これにて、決着とさせていただきます。」


アルマがそう言い終わった瞬間、磔の体が膨大な回数切り刻まれ、全身から血を吹き出した。


「マジ、かよ。」


アルマの今の状態、『何者も恐れぬ無想神』では元々持っている能力の『感情を弄ぶ程度の能力』に加え、『絶対を押し付ける』程度の能力が追加されている。


この能力は絶対を相手に押し付ける、つまりアルマは磔の体が絶対切り刻まれるというのを押し付けた。なのでこの能力に為せない事は何も無くなる。


「やっぱすげえな磔、絶対の宣言に抗ったか。」


磔は前のめりに倒れる寸前で足に力を込め、踏ん張って倒れるのを堪えた。


「アルマが、すげえ技を使ってくれたんだ。なら俺も、すげえ技でお返ししないとな。」


全身から血を大量に吹き出し、常人なら気絶している痛みを感じている磔だが、驚異的な意志力で意識を繋ぎ止めていた。


「いらんいらん。お返ししたいならとっととくたばってくれよ。」


「そう言うなってアルマ、ケチケチすんなよ。『輪廻の超騎士(エンドレスナイト)』!!」


透明な闘気が消え、代わりに白色の闘気を『回想する終焉の超騎士』状態の時よりも全身から強く速く噴出させる。


ちなみに『輪廻の超騎士』発動時は世界を越えし者の第3段階である『踏破者』状態になる。


この状態の時は『反則手・後出し』が進化して『禁忌手・後出し』という技術を常時使用している。


『反則手・後出し』の時は相手の次の動作を読み切り、相手の挙動瞬間に半自動で動作出来る技術だが、それに加えて完全自動状態となり、攻撃の回避を完璧に熟する。


更にこの半自動と完全自動は切り替えが出来るだけでなく両方同時に使用出来る為、隙は全く無くなり、飛び道具も躱せる。その為、接敵した相手には必ず勝てるというとても恐ろしい技術。


ただし、あまりに強すぎる為、『輪廻の超騎士』は磔の体力が最大の時で5分間しか使えない。しかも今の状態なら持って30秒もないだろう。


だが、半自動と完全自動は無駄の無い動きと力の使い方をする為、攻撃威力だけなら第4段階である『掌握者』にも匹敵する。


「ほーん、でもそれも時間制限があるんだろ?」


「まあな、けど一瞬ありゃ充分だ!!」


アルマは磔の気迫を感じ、嫌な予感がしたため逃げるかその前に倒すかの思考をした瞬間に磔がアルマの目の前に立っていた。


「『超騎士は雷炎を纏いて(イグニス・シャイニー)』!!」


磔は右手の拳をアルマの正中線に合わせ、額から丹田に向けて狙いを定めて瞬間に拳を正中線に打ち込み、音も無く全身全霊の1垓発を放ち終えた。


この技は正に『輪廻の超騎士』にしか出来ない究極絶技。自動と半自動を兼ね備え、常に最適な攻撃と回避を行う超自然体から放たれる無類の一撃の多段撃での急所一点集中連打の技。


更に1発毎に夏姫が使用していた『ネイルシュート』の要領で1万発追加で拳を打ち込む。1撃毎に1万×1垓で1秭発となる。


この技は高段階の相手にもダメージを与えることが出来る!


「お返し、しっかり、受け取ったぜ。」


アルマは何処か満足そうな笑みを浮かべながら後ろに倒れ、気絶した。


「桐月アルマ選手、脱落です!!」


「ふぅ、やっぱり、『輪廻の超騎士』は、体力を、大幅に、消費するな。」


「確かにその様子だと残り体力も少なそうだな磔?」


突然後ろから声が聞こえ背中に衝撃が走る。磔は地面を転がって倒れる。目線だけ声のした方向へ向けると、中段蹴りの構えをとっている大和の姿があった。


「脱落したかと思ったか?磔と戦うために隠れていたんだよ。」


「わざわざ、どうも。」


磔は息を整える為に深呼吸しながらゆっくりと立ち上がる。それを見た大和はニヤリと笑みを浮かべた。


「まだまだやる気充分だな磔、安心したぜ。これで心置きなく勝負出来るってもんだ!」


大和はそこまで言うと地面から一つの武器を取り出す。全長数十メートルはある巨大な剣を担ぎ、磔の方を見る。


この巨大な剣は『イガリマ』といい、大和が地面から創り出した武器である。


「もう一つの能力を使わせてもらうぜ。簡単には死んでくれるなよ磔!!」


大和は巨大な剣を磔のいる位置に振り下ろす。大和は運命に弄ばれる程度の能力の他に大地と縁を結ぶ程度の能力も持っている。


この能力は大地(バトルフィールドや建造物、宙に浮く物、生命体含む)を意のままに操ることができ、また大地やバトルフィールド、建造物からなら武器や防具を瞬時に創り出すことができる。


更に少し魔力を込めて能力の範囲を拡大すれば、生命体からも創り出すことが可能。そのため、敵の体内から串刺しにするなんてことも可能という最強クラスの能力。


「避けずに直撃したか、正直がっかりだな。そんなんだから大切な人を奪われる(・・・・・・・・・)んだよ。」


落胆した様子で大和は言葉を吐き捨てるが、その瞬間に『イガリマ』全体に亀裂が走り、粉々に砕けちった。


「大和、てめえはさっきの言葉を軽々しく言ったつもりだが、それを俺に言うってことはどういうことが分かってんだろうな?」


粉々に砕けちった『イガリマ』の破片を吹き飛ばしながら磔は大和に超重の威圧をかけながら歩み寄る。『輪廻の超騎士』を使用し、全身から白い闘気を噴出させながら


「俺は事実を言ったまでだぜ磔。別に否定するならしていいぜ?その場合はてめえは現実から目を背けている臆病者だけどな!」


「……もういい、大和は俺を本気にさせる為に挑発しているのは分かった。けどな、それ以上喋るんじゃねえよ。」


磔の放った殺気を感じ取った大和は目の前に巨大な隕石をも軽く壊せる土塊を出現させる。


「これでひとまずはあぶっ!!」


だが土塊は容易に消し飛ばされ、磔の蹴りを腹に喰らって大和は吹き飛ばされ壁に激突するが、その衝撃で壁が数kmに渡って崩れ去った。激突した壁が崩れ去った事をみると磔は相当な威力で蹴りを放った事になる。


「体力はもう残って無いんじゃなかったのか!?」


「念の為に付けているベルトに体力回復用の魔力や霊力を貯めてるんだよ。全快とまではいかないが3分の2くらいは回復できる。」


なので今の磔の『輪廻の超騎士』の使用時間は3分間になる。ただ、この体力回復は素の状態、しかも止まった状態でないと回復出来ないという致命的な欠点もある。


「てめえに『遠慮』はしねえからな?」


「俺は元よりそのつもりだぜ磔ゥ!!神鎖『人を律せし者(エンキドゥ)』」


大和は地面や磔の周りの空間から鎖を出現させ、磔を縛ろうとする。この鎖は人と神の双方を律し、それらの類であれば縛るだけで強大なダメージを与える。蘇生や回復などによって死なない敵に対して、魂と肉体を一つに縛り付けることで蘇生を不可能とする技。縛られた後は能力の発動や移動、攻撃も制限される。


あらゆる場所から鎖が出現して磔を縛ろうとするが、まるで透けているかのように鎖は磔の体をすり抜けていく。


「何で縛られねえんだよ!?鎖を全て避ける奴なんて初めてみたぞ!!」


「そうか、なら以降気を付けることだな!!そんな鎖、当たらなければどうってことねえんだよ!!」


磔は新たに鎖が出現するまえに大和の元へ時間の経過出来ない速さでの動作である『0秒移動』で大和の懐に潜り込んで100京発の殴打を大和の全身に喰らわせる。


『輪廻の超騎士』状態の磔は時間が1秒経過する間に、30分間行動出来る!


「がはおぶあげっ!!こ、これじゃ駄目か。だったら神剣『人を導きし者(ジャンヌダルク)』!!」


大和は鎖を消し、地面から普通の片手剣ほどの燃え盛る剣を創り出して切っ先を磔へ向ける。


「その場から動くな!!」


大和が磔に宣言すると磔の体は動かなくなった。大和が持っている剣は『人』に対してありとあらゆる命令権を付与する。相手が人であるならば無意識、意識を操って自分の思い通りに行動させるというもの。


「磔の回避能力は厄介だからな!!これでも喰らいやがれ!!」


大和の後ろの空間から杭や剣が大量に出現し、磔に向かって降り注ぐ。この杭や剣も大和の能力によって創り出されたものである。


「まだまだいく、ぜ?」


第二波を発射しようとした大和だったが、体が思うように動かず、何故か視線を上に向けていた。


「なあ大和、京や垓を越えた数値の連打を喰らったことがあるか?」


磔の言葉によって大和は現在の状況を理解する。体が思うように動かないのは磔の攻撃によるものだと、視線が上になっているのも磔の攻撃によるものだと!


「行くぜ、これが最後の一撃の!」


磔は大和の全身にくまなく拳や蹴りの連打を喰らわせて、壁に体を叩き付け、最後の一撃を心臓目掛けて放つ。


「1秭発目!!」


この間僅か1秒の出来事である。大和の体は能力によって死にはしないが痛みは当然感じる。なので大和は今、何処が痛いのかわからない状態になっていた。


「ゲホッ!!カハッ!!ゴホッ!!何で、この剣の効果が効かないんだ磔!?てめえは人間じゃねえのか!?」


「俺は人間だぜ大和。けど、仁にも説明したが俺にはそういう『操作系』能力は無視出来るんだよ。」


「そういうことか、磔に小細工は通用しないって訳か。ならこいつで決めるぜ!!」


大和は口に溜まった血を吐き捨て、持っていた剣を放り投げる。代わりに異空間から一振の剣を取り出す。


「行くぜ磔!!これで決着を着けてやる!!『楽園之剣(ソードオブエデン)』!!」


大和は持っている剣に自分の全力を注ぎ込む。注ぎ込んでいる間、その剣は白く光輝いていた。


「そうか、大和が全力で向かってくる礼として俺も誰にも見せていない技を見せてやるよ!!」


『輪廻の超騎士』状態なら、大和が剣に力を込める前に倒すことが可能だが、磔は敢えてそうせずに真っ向から勝負することを選んだ。


「この剣には魔も、神も、力も、命も、強さも、弱さも、儚さも、鮮烈さも。それら全てが集う、厳しくも優しいとある惑星の力の髄を集めた。その一撃を受けられるか磔ゥ!!」


「ああ、受け止めてやるよ!!絆符『集いし願い』!!」


大和は力を込め終わったのか、白く光輝く剣を振りかぶる。対する磔は『輪廻の超騎士』状態で初めてスペルを使い、白色の闘気を左腕に纏わせる。


磔が先程使ったスペルはもう一つの能力である絆を繋ぐ程度の能力を解禁するスペル。


この能力は磔と知り合った人の技や技術を使用出来る他、知り合った人の数だけ膂力を上昇させる事が出来る。


願いとは想い、想いとは意志、意志とは力!!このスペルを使用した磔の今の膂力は計り知れないものとなる!!


「行くぜ磔!!これが俺の全力全快だァァァァァァァァ!!」


大和が剣を振り下ろす瞬間に磔は大和の目の前まで移動しており、白色と蒼色(・・・・・)の闘気を纏った左腕を振りかぶっていた。


「その想い、俺が受け止めてやるぜぇぇぇぇぇぇぇ!!」


磔が技名を言う前に左腕と剣が衝突し、パシェットの張った結界にヒビが入るほどの衝撃波と白い閃光が辺りを包み込んだ。


「こ、言葉に出来ないほどの戦いだね。生き残ったのはどっちかな?」


パシェットは白い閃光が無くなるのと同時に闘技場を見渡す。するとそこには、うつぶせで倒れており、満足そうな表情で気絶している大和と左肩から先が無くなっているが意識を残したまま立っている磔の姿があった。


「勝者 白谷磔選手!!」


そのアナウンスが流れた瞬間に観客席から割れんばかりの歓声が上がった。




















「というわけで、俺が勝ったわけだが正直勝敗なんてどうでもいいんだよな。」


あの後、宴会をしようという流れになったのだが、今回は皆を無理矢理連れてきたのもありすぐに帰る流れになった。


「宴会は出来ないけど、お弁当とお土産を渡すよ。」


パシェットが大乱闘している間に皆の分の弁当を作り、お土産も用意して皆に渡していた。


「ぬいぐるみが料理するって、とてもシュールですね。」


「一家に1つ欲しいかも。」


「パシェットは何でも出来ますからね狼さん。あと仁さん、パシェットはあげませんよ?」


パシェットが料理する姿を想像した狼はなんとも言えないような表情になり、仁は物欲しそうな表情でパシェットを見詰め、それを見た霊乃が苦笑いを浮かべる。


「さて、次元の穴も開けたからここを通れば元の世界へ戻れるよ。」


パシェットの横の空間に人一人入れる穴が出現する。


「まあ、そこそこ楽しかったわよ?次は無理矢理連れて行くんじゃないわよ磔?」


「あの人がよく参加する理由が分かりました。磔さん、また誘ってくださいね!」


桜と狼が笑みを浮かべながら磔と夏姫に手を振って穴の中へ入っていく。


「いやぁ暴れた暴れた。またな磔、夏姫。」


「この世界に来ていい経験が出来た。ありがとな磔、夏姫。」


アルマはニタニタと笑いながら、ティアーシャは一礼をして穴の中へ入っていく。


「それにしても、帝は痛い所を付かれて負けたんだってな?」


「うるさい、私はサナみたいな格闘バカじゃないの。」


「誰が格闘バカだペタンコ!」


「うっさいほっとけ!」


サナと帝はやいやいと喧嘩しながら穴の中へ入っていく。


「いやぁ、いい勝負が出来たぜ。磔、今度は俺が勝つからな?首を洗って待っとけよ?」


「大和が満足そうで良かったです。磔さん、夏姫さん、ありがとうございました!!」


大和は満足そうな表情を浮かべながら磔にリベンジの約束をし、それを見た霊乃が微笑みを浮かべながら一礼して穴の中へ入っていく。


「私もこれで失礼させていただきます。磔さん、本当にありがとうございました。」


「ボクも失礼するよ、磔、これからも頑張れよ。」


「磔さん、貴重な体験をありがとうございました!!」


終作とパシェットと仁が穴の中へ入っていくと同時に穴の大きさは小さくなり、やがて何もなくなった。


「お父様!!こっちに来てください、何か凄いものがありますよ!!」


「分かった分かった。さて、新たな目標も出来たしまた頑張りますかね!」


終わり

今回参加してくださった先生方、最後まで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございました!!

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