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十四の夏

10年ほど前に書いたお話です。8月15日までに全話UPします。

「暑い!」

 本日何度目か、もはや判らない台詞を加藤は口にした。

「夏だからな」

 隣を歩く辻が言う。

「何で俺達この炎天下に、こんなに歩き回ってるんだ?」

 疲れたように言う加藤に、辻は実にあっさりと答えた。

「そりゃ、お前、学校のサマーキャンプのオリエンテーリングだからだろ」

「違う。そういうことじゃない。俺が言いたいのは、このクソ暑いのに、どうしてこういうことをさせるのかっていうこと!」

「心身の鍛錬のためだろ。イマドキの中学生は軟弱だから」

「どこのジジィだ、テメェは?」

 辻をじろりと見て加藤は言った。

「体力のないお前に言われなくないね」

 加藤を見下ろして辻は返した。

「お前は体力だけはあるよな、バカみたいに」

「鍛えてますからね」

 加藤の嫌味をスポーツ全般得意な辻はさらりと流した。

「…筋肉バカ。」

 ぼそりと加藤は呟いた。

 次の瞬間、両方のこめかみに拳を突きつけられた。

「言葉が過ぎるよ、加藤くん」

 こめかみに拳をグリグリと押し付けられて加藤は声を上げた。

「イテテテテ!」

 そんな二人の様子を見て、同じ班のクラスメイト達は笑っていた。

 班の構成は男女四人ずつで、キャンプの殆どをこの班で行動することになっている。現在は班ごとに分かれて、決められたコースをチェックポイントを回りながら歩くオリエンテーリングの最中だった。

「辻くん達と同じ班になって正解だったよね」

「退屈しねーもんな。お前等見てると飽きねーよ」

 女子の意見に男子の一人が賛成した。後半は辻と加藤に向けられた言葉である。

「見せモンじゃねえ!!」

 身長175センチの辻と152センチの加藤のデコボココンビは声を揃えて反論した。


「あ、あれ、チェックポイントじゃない?」

 女子の一人が前方を指差した。そこには目印の赤い旗が立っている。旗にはA4版のカードが掛けられており、そこにクイズの問題が書かれている。チェックポイントではその問題を解き、事前に渡されているチェックカードに回答を書く。それがチェックポイント通過の印となる。

 辻はカードに書かれた問題を読み上げた。

「この近くの海岸にある、ある動物の形に似ている岩の名前は?」

「クジラ岩だろ」

 加藤が即答した。

「よく知ってるな」

 班員が感心すると、加藤は事前に渡されていた「キャンプのしおり」を開いて、あるページを示した。

「ここに載ってる」

 そこにはキャンプ場周辺の地図と、いくつかの場所の説明があった。その中にクジラ岩についても絵付きで載っていた。それを加藤は何となく覚えていたのである。

「そういえば、私、変なウワサ聞いたんだけど」

 女子の一人が思い出したように言った。

「隣のクラスの子に聞いたんだけどね、そのクジラ岩って所に幽霊が出るって」

「幽霊?」

 班員達はうさんくさそうに聞き返した。

「あくまでウワサだけどね。でも、その子、キャンプの実行委員やってて、下見に来た時に地元の人に聞いたんだって」

 彼女はそう説明した。

「本当かどうかは別として、面白そうな話じゃん」

 いたずらっぽい笑顔を浮かべて辻は加藤を見やった。加藤は辻を見上げてニヤリと笑った。

 二人が何か企んでいるのは明白だったが、止めようとする班員は一人もいなかった。二人が止めて言うことを聞くような性格でないことを知っていたし、自分達もそのウワサの真相について興味があったからである。



 午前中はオリエンテーリング、午後は水泳教室。多少無理があると思われるスケジュールを、生徒達は疲れを見せながらも、キャンプという非日常の生むテンションの高さでこなしていた。

「いいか、岩場の方は潮の流れが速いから行くなよ。それから辻、」

 水泳教室の説明をしていた先生が急に辻を指名した。

「溺れてる者がいたら助けろよ」

「えー、何で俺?」

 不服そうな辻に一言。

「お前、水泳部だろ」

 周りから「よろしく、辻くん」という声を掛けられて、渋々辻は承諾した。

「辻くん、アタシが溺れたら助けてね」

 加藤がからかって可愛く首を傾げて言うと、辻は断言した。

「テメーだけは絶ッ対に助けねー!」


 辻は教師に水泳が苦手な生徒の指導を押し付けられていたが、折を見て抜け出してきた。

「おう、ご苦労、水泳部エース」

 適当に海に浸かっていた加藤が声を掛けた。

「お前も手伝えよ」

「俺ヤダ。だりィ」

 自分の苦労を人にも分かち与えようと辻は言ったが、加藤はあっさり拒否した。

「冷たいヤツだな」

「何とでも言え」

 二人が雑談していると、隣のクラスの小長井が近付いてきた。

「お前ら聞いた? クジラ岩のウワサ」

 小長井はクジラ岩を指し示した。砂浜の向こうの岩場にクジラ岩があった。

「聞いた聞いた。幽霊出るって?」

 二人が肯定の返事をすると、小長井はニヤリと笑った。

「キモダメシしない?」

「キモダメシ?」

「そう。例のクジラ岩のウワサ、真相確かめに」

 辻と加藤は顔を見合わせた。

「そんな面白いこと、俺らヌキでやんなよ」

 辻の言葉に加藤が続ける。

「他に誰来るって?」

 加藤の問いに小長井はメンバーを上げた。

「じゃ、お前等も参加ってことでいいよな?」

 小長井の確認に、二人は同時に答えた。

「モチロン!」

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