落下脚
ぽとりと落ちる音
家内で聞こえれば
大百足であることが
たまにある
その前には
木の上を
硬く細い物で
もがいている音がする
あの不気味な意図しない音が
寝室の天井近くから
聞こえてくるのだ
人によっては
血の気が引くのだろうが
何処かで
その程度と思えなければ
田舎では暮らせない
目の前に
横幅一センチ
縦の長さが筆箱ほどの
多脚の生物が
物陰に隠れながら
近づいてくる
床や畳の上では
足音などはしない
静かに静かに
生き物の近くに来るのである
一回、棒で触れると
予想以上に早くもなるのだ
スピードアップし
スイッチが切り替わるのだろう
だからといって
余程のことが無いと
噛むことはしない
寝ている時に噛まれるのは
寝ている時の動きを
自らが知らないからである
他の生物にとっては
大きな生物が寝返りをうつだけで
余程のことになるのだ
家が寝返りをうつ
小さな丘が転がって来る
想像してみると
かなりの事柄に思うだろう
人間の大きさとは
それと変わらないのだ
動物に逃げられる
虫に噛まれる
原因の一つは
自らの大きさでもある
人が、大きな生物を怖がるのと
何ら変わりない
僕等は予想よりも
他生物に警戒されている
仲良くなったりするのは
しっかりと
信頼を作る為に
努力をするからである
その形も
一度の失敗で
無に帰す場合がある
人と人も変わらないのかもしれない
しかし
人の場合は
そこに別の物を持ち込むのである