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赤い月シリーズ

月待ちの滝

作者: イソジン

前に書いた【輝夜物語】と間接的ですが繋がってます。


https://ncode.syosetu.com/n2062eq/

5月。草木が萌えるこの季節。GWをつかい僕はある滝に来ていた。

朝のうちに来るはずだったのだが高速の渋滞にはまり、外はすっかり夜だった。空には赤い月が不気味に上っている。たしかラジオで赤い月になるのは空気中のゴミがどうとか言っていたが文系の僕にはよくわからない。



滝の近くにはオシャレなカフェがある。滝からのマイナスイオンのおかげか虫の声もあいまってとても清々しい気持ちになる。渋滞で疲れた体にはすごく心地が良かった。

「お客さん。ここら辺の人じゃないね?」

いつの間にか隣にたっている老婆が話しかけてくる。いつからいたのだろうか…

「ええ。まぁ」

「ここの伝説を知っているかい?」

老婆は少し笑ってそういう。話したいようだ。

「知りません。どのような話でしょうか…?」

「そうだね。話すと長くなるよ。かぐや姫って知ってるかい?」

「知ってますよ。それが?」

「ここにいたんだよ、かぐや姫が。伝わっていくにつれ、話が変わっていってしまってね。お客さんが知ってるかぐや姫とは少し違うかもしれないね。」

「そうなんですか。そういえば最近どっかの小説家…イソジンだっけな?がかぐや姫の違う話書いてましたね。」

「ああ、この前取材に来てた少年かね?あの人小説家だったのかい、若く見えたのに。じゃ、お客さんにはその続きの話をしようじゃないか。。。」

老婆はおもむろに話し始める。あたかも自分の目で見てきたかのように…


それはすごく昔のことだ…


この滝の近くには小さな村があった。

村には仲がいいと有名なミヤツコとオウナ。その娘、カグヤが住んでいた。

カグヤはまるで月のように美しく、日本中の貴族が我よ我よと結婚を求めやって来た。しかし全くカグヤはその貴族に興味を示さなかったのだ。なぜかって?それは幸せな結婚をしたかったからだ。権力や自分の見た目ではなく。心からの恋、愛をもった結婚を…


家の裏の祠にはある神様が奉られていた。その名をツクヨミ。月の神様だ。

カグヤのお父さんミヤツコは毎日この祠にお参りをしていたのでカグヤもお祈りをすることにした。

その日は赤い月の日だった。


「ツクヨミ様…、私、幸せな結婚がしたいです。させてください…」

すると祠が赤く光る。気づくと隣には女の人がたっていた

「カグヤじゃないか。大きくなったね…って覚えてないわよね。」

「誰ですかあなた…」

「ツクヨミよ。」

「ひぇ…ツクヨミ様…変なお願いしてすいません…」

「いやいや。そんな怖がらないでよ。やっとこっち来る口実ができたんだから。上で見てるだけじゃ暇なのよ」

「そ、そうなんですか」

「それより幸せな結婚をしたいのね。まぁあの親見てれば仕方ないと思うわ。」

「そうですね…それよりすごいラフな話し方されるんですね…」

「この前固くしすぎたかなって思って。」

「この前?」

「ああ、いいの気にしないで。それよりあなたの親にも会いたいわね」

「す、すぐに呼んできます!!」

カグヤは全速力でミヤツコとオウナを呼びに言った。

「そんなに急がなくてもいいんだけどなーww」


それからすぐ二人が到着する。

「あ、あなたがツクヨミ様…」

「会うの3度目だけどね。」

「毎日ここにお祈りに来ていますが…会うのは初めてだと」

ミヤツコは頭を掻きながらそう言う

「そういえば記憶消しちゃったんだったねw後でどうせ消すし思い出させるよ!」

そういうとツクヨミは3人の頭に順に手を当てる

「こんなことを忘れていたなんて…申し訳ありません…」

「消したの私だし気にしないで。」

「はい…」


「おねーちゃん?」

「しっ!、カグヤ外ではツクヨミ様って呼ぶよう教えたでしょ…」

「でもおねーちゃんって呼べっていったのは…」

「それ以上いうと今回の願いは叶えません」

「それは困ります…ツクヨミ様…」

「よろしい。じゃ、幸せな結婚をするためにいくつか手伝うけどあれだけ色んな人に結婚求められてどの人も嫌っていうならどうしようもないんじゃないの?」

「だって話したこともない人とは結婚できないですもん…」

「じゃ、お母さんみたいに自分から行かないとー。」

「そうですけど…」

「そうよ。カグヤ」

「お母さんまで…」

そうしてツクヨミとオウナによる恋愛指導がはじまったのでした。



それから2か月後、恋愛指導のおかげもあってカグヤには恋人ができました。名をタダツネ、隣村の青年である。

タダツネは農民ながら勉学にたけていて何より優しい男だった。そしてカグヤに一切なびくことがなかったのだ。今まで自分に気に入られようとしてくる人が多かったなか全くその様子を見せないタダツネにカグヤはひかれたのだった。


「やればできるじゃないかカグヤ」

「おねーちゃ…ツクヨミ様のおかげです!」

「じゃぁお役目も果たしたし。私は帰るかね」

ツクヨミは浮かび上がる

「ツクヨミ様いつもありがとうございます…」

「いつもお祈りとお供え物も絶さないでくれるからね。ミヤツコ近いうちにお前には孫ができる。しっかりしろよ」

「はは…」

「孫…つまり子供…」

カグヤは頬を赤らめる。

そうしてツクヨミは帰っていってしまったのだ。

「あれ?記憶が消えない」


そしてツクヨミは記憶を消すことを忘れてしまったのだった。。。


ツクヨミが帰ってすぐカグヤとタダツネは結婚し、勉学に励んだタダツネは努力が実り1代貴族となった。

しかしタダツネは貴族になっても他に嫁をとることもなく、横暴になることもなく優しいままだった。

そんなタダツネカグヤはますますひかれていった。


タダツネが貴族になって1年後二人の間に念願の子供ができる。名をキヨ。二人に似た美しい女の子だ。


一方ツクヨミはと言うと子供が生まれてからというもの、赤い月になるたびに呼んでもないのに降りてきて子供を可愛がったそうだ。


ツクヨミは記憶を消すことを忘れてしまったのか、わざとしなかったのか。それはわからないが、そのおかげでツクヨミとカグヤの話はこの土地に残る伝説となって残っていくことになる。




老婆は話し終えると疲れてしまったのか近くのベンチに腰をかけ、にたっと笑う。

「すごい話しだろ?ついでに祠は今は移動されて滝の裏にあるぞ?」

「そうなんですか。確かに面白い話ですね。滝の裏にはどうやって?」

「そこから降りていけば行けるよ。」

「わかりました。ありがとうございます!あのおばあさんの名前は?」

「…だよ。」

「…?そ、そうですか。では行ってきます」

老婆の声はよく聞こえなかったが聞き返すのも悪いと思い滝の裏へと急ぐ。


滝の裏に入ると確かに祠があった。

手を合わせ自分も恋愛がうまく行くようにお願いをする。

滝の裏からでて、さっきいたカフェに戻る。

ここはコーヒーと団子がおいしいらしいので店員に頼む


出てきた団子とコーヒーに舌を楽しませながら、さっきの老婆のことを思いだし辺りを見渡す…がどこにもいないようだ。


「お客さん?どうしました?」

さっきの店員だ。よく見るとすごくかわいいなと思う

「ええ、さっきおばあさんにここの伝説を教えてもらったので、お礼をしようかと思ったのですが見当たらなくて…暗いですし心配です。」

店員は少し考えたあと何かに気づいたように話し始める

「今日は赤い月ですもんね。お客さんが話してたのはツクヨミ様ですよきっと!」

「ま、まさか…」

「私もここにバイトに入ったばっかの頃、一回会ったことがあるんです。私の時は小さい女の子だったのですが…きっとその人の話しやすい姿になるんでしょうね。」

「そうなんですか。確かに話しやすかったですが」

「で、祠でお願い事しました?」

「あ、しました!恥ずかしながら恋愛がうまく行くようにと…w」

「私もいい人に出会えますようにってお願いしたんですけど全然でww」

するとお店の裏の方から怒鳴り声が聞こえてくる。

「あぁ、店長が怒ってます…。あの仕事もう少しで終わるので待ってて貰えますか?話し途中でしたし」

「あ、全然大丈夫です!」

「じゃ、また!」

そういうとその子は走って去っていく。

早くもお祈りの効果が出たのだろうか…



「ふふ、うまく行きそうだね。さすが私。頑張れ少年少女!」


願いを叶え、幸せになっていく人をみて微笑むのだった。













ツクヨミはずっとこの場所で人々を幸せにしているんです。

ついでに月待ちの滝は茨城にあります。そこにはカフェもありますし滝の裏にも行けます。ですがかぐや姫伝説云々はご想像にお任せします!

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