怪奇三 ジェットコースター(その一)
大内は必死になり、逃げていた。
本来なら、渋沢とともに水沢と紗耶香を驚かせ、いたぶるつもりだった。そのために都合のいい友人も呼び出していた。
友人は紗耶香をミラーハウスで驚かせ、ドリームキャッスルで水沢を驚かせるはず……だった。
それなのに。
水沢はミラーハウスの中に入っていき、計画変更を余儀なくされた。それで由衣が不機嫌になったのが痛かった。
メールで水沢に連絡を取り、ドリームキャッスルで待っていると伝えた。そこで驚かせるつもりだった。そして、それを見て笑い転げる予定だった。
ミラーハウスに行ったはずの水沢が、ドリームキャッスルの前で待っていた。
驚いたものの「先回りをしただけ」と言われた。
ならば、予定通り驚かせてやろう。そう思った。
蓋を開ければ。
上手く誘導され、三人は地下へ。そして大内の友人により、渋沢姉妹は拘束された。
捕まってたまるか。必死で逃げたものの、友人が飛びかかってきた。それを突き飛ばし、逃げた。おそらく怪我をしているだろう。知ったことではない。
「お前ら! どこにいる!?」
いつもつるむ仲間に連絡を入れれば、「ジェットコースターのところ」と返ってきた。あぁ、そうだ。「謎の事故があった」という話を元に、仲間と驚かせようとしていたんだった。そちらで、今度こそ後悔させるくらいに怖がらせてやる。
ジェットコースターの場所で、少しばかり生臭い匂いがした。見れば、その辺で捕まえた女を嬲っていた。
「おせーよ」
「わりぃ。ってか、ずりぃな」
やっと持ち直した大内が仲間に近寄った。その時だった。
「酷いじゃないか。僕を階段から突き落とすなんて」
「ひっ!?」
大内の後ろに視線を移した仲間が怯えた声をあげた。
後ろにいたのは、頭を血だらけにした男だった。
「酷いよねぇ。命令に従ったのにさ、階段から突き落とされたよ。首もおかしいし、頭もいたいんだよ」
首はあり得ないほどに曲がっており、頭は中身が見え隠れしてた。
「ばばばばばバケモノォォォ!!」
大内たちはわき目もふらずに逃げた。そこに何がある、というのを忘れて。
カンカン、そんな音が響きだした。
「え?」
気づけば、全員がジェットコースターの前に来ていた。
「う、動かせるみたいた!!」
囮にするべく、ジェットコースターを動かした。何故動かせたのか、そんな事どうでもよかった。
「酷いなぁ、僕を置いて乗るなんて。事故にあいたくないからいいけどさぁ」
そう言って男はそこから動く気配がした。
助かった。誰しもがそう思った。
「みぃつけた♪ 勝手にジェットコースター動かしちゃいけないんだよぉ。事故の原因だからさぁ」
悲鳴すらあげられぬまま、数人がその場から逃げる。
「大内君は逃げちゃだめぇ」
ゴォォォッ! 仲間が逃げた先にジェットコースターが入ってきた。
一人の首が、目の前に落ちた。