怪奇二 ドリームキャッスル(その二)
話の流れ上、前話の二行消去しました。
満身創痍な大内は、でてきてほっとした、そんな顔をしていた。
「なっ!? なんでお前がここにいるんだ!!」
二人を見るなり、大内が騒いだ。しかし、周囲はそれを気にしない。
「何でって、先ほどやっとミラーハウスから出てきた……」
「お前は拷問部屋にいたはずだ!!」
大内は紗耶香を見ていない。見ているのは、水沢のみ。
「水沢さんは私を探しにミラー……」
「どうやって出てきた!? 俺をどうやって追い越した!?」
「?」
紗耶香が説明しようとするも、男は聞き入れない。
「水沢、さん?」
「何? 一ツ谷さん」
「どうして、笑って、いられるんですか?」
「だって、おかしいでしょう。さっきまで俺と一ツ谷さんは一緒にいた。その時点で、無理だよ」
「う……嘘だ、嘘だ、嘘だ!! そんなはずはないっ!!」
驚く大内の首を水沢は掴むと、残忍な笑顔を浮かべた。
「嘘言ってどうすんのさ。ねぇ、自分だけ逃げて知らないふり? 二人置いて逃げて来たんだろ」
それだけ言うと水沢は手を離した。そのすきに大内は逃げていく。
「あ~あ。逃げちゃった。ちょっと脅しただけなのに、ねぇ?」
それに紗耶香は同意できない。……何か、違う。本能的にそれを感じていた。
「とりあえず、二人探しに行くの手伝ってもらっていい?」
「う……うん。その代り、ミラーハウスの時みたいに、離れないで欲しい」
大内の言っていた、拷問部屋。噂では地下にあるとされている。行けるかどうかは知らないが、用心に越したことはない。
そして、落ちていた鍵を水沢が拾い、二人はドリームキャッスルへと足を運んだ。
水沢が出した懐中電灯だけが頼りだった。
「……こっちは電気ついていないんですね」
「みたいだね」
しかし、明かりがついていないと、どんなロマンチックな建物でも不気味になるものだ。
「地下なんてあるんですかね」
「あるよ」
ぽつりと呟いただけの言葉に、水沢から力強い肯定の言葉が返ってきた。
「なきゃおかしいでしょ」
「え?」
「だってここ、中世ヨーロッパの城を移築したんだもの。それを無理やり夢見る城に変えただけだし」
「よく、知ってますね」
にやり、そう笑う水沢の顔が影のせいか不気味に映った。
迷うことなく進んでいく水沢についていくのに、紗耶香は目印を覚えるだけで精一杯だった。
気が付けば、とある扉の前に来ていた。
「どうやら、大内が落としたのはこの扉の鍵みたいだね。さて、行こうか」
かちゃり。鍵の開く音がした。