怪奇二 ドリームキャッスル(その一)
ミラーハウスの出口までたどり着いた紗耶香は、その場で水沢を待つことにした。
それ以外、やりようがないともいう。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
「水沢さんっ!?」
ミラーハウスの中から聞こえてきた悲鳴に、紗耶香はその場を動きそうになった。
また迷ったら?
ごくり、喉が鳴った。
「水沢さんっ! 一ツ谷です! 私の声、聞こえますか!!」
何度か声を張り上げると、近くに人の気配がした。
「一ツ谷さん?」
「はいっ! 今出口のところにいます。ゆっくりでいいです。待ってますから」
「わ、分かった」
それから十分後、二人は合流した。
「……ご、ごめんね」
「いえ。出口かもって思ったら行くの普通ですし」
「それ、本当?」
「? それ以外何が?」
「だって、やけに落ち着いてるじゃん。俺がいなくてよかったとか思ってない?」
初めて水沢に違和感を覚えた。ただ、おそらくはこれが素なのだろう、そう思っただけだった。
「焦った時こそ落ち着け、というのが母の実家に伝わる家訓でして」
「実用的な家訓だね」
「そういう家なもんで」
「それだけ?」
「はい。まぁ、趣味でこれよりもっと複雑な迷路作って、庭先で私含む子供たち十数人を迷子にさせて、教育施した非常識人も親戚にいますから」
「……慣れ、ということ?」
「ぶっちゃけ。一人クリアするたびに複雑怪奇にして、数年苦労しましたが」
おかげで変な悪知恵だけは付いた自信はある。
「まだ、上部から出口見つけられただけよかったです。水沢さん見つけられなかったんで、一人だけ出口に来ました」
「そういうことか……なら仕方ないね」
「水、沢、さん?」
「何でもないよ。さぁ、出ようか」
「そう、ですね」
そういえばどうして見つけられなかった? 今更その疑問が出てきた。
出ると、そこには既に渋沢達はいなかった。他にミラーハウスに入ろうとしている連中はいたが。
「結構肝試しに来てる人、多いんですね」
「……そう、だね」
ここで三人を待つべきか、動くべきか。未だ「圏外」の携帯に嫌気がさした。連絡一つとれない。
「多分、あの姉妹ならドリームキャッスルにでも行ってるんじゃないかな。ああ見えて夢見がちなところあるし」
夢見がちなのは、関係ないと思います。それは口に出さなかった。紗耶香と水沢。どちらが渋沢のことを知っているか、となったら間違いなく渋沢だ。
それに、ミラーハウスからドリームキャッスルまではかなり近い。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
時折人とすれ違いながら、少し先のドリームキャッスルまで向かった。
そこにいたのは、真っ青な顔をした大内だった。