その一 第一作戦会議室にて
第一作戦会議室は左隣にある部屋で、内装は第二作戦会議室とほとんど変わりないようだった。唯一違うのはホワイトボードが黒板のように壁に張り付いていることだ。その前には今は布状のスクリーンが下り、卓上に置かれたプロジェクターがパソコンのデスクトップを投影している。
「――――これで全員だね? それじゃあ、始めようか」
本道君と加賀山さんの姿が見当たらなかったが、咎める人は誰もいなかった。今日はもう帰ったんだろうか? 所長は構わず話を進める。
「……すまないね、ちょっと、本部から急な要請が入ったんだ。このところ連戦続きだけど、もう少しだけ我慢してくれ」
言いながら、所長はスクリーンの脇に逸れた。背後の京子さんが素早くノートパソコンをいじると、スクリーンに何か見取り図らしきものが映し出された。
「五日前、付近のある中学校で、夜間警備にあたっていた五十代の男性が行方不明になり、翌朝、北館沿いの花壇で死体となって発見されたそうだ。死因は転落死。それも屋上からではなく、二つ下の三階から。しかし、花壇が面しているのは校舎の横側で、壁には人一人が潜れるような窓は無かったそうだ。屋上にも鍵がかかっていた。そこで本部が調査に当たったところ、北館及び南館への渡り廊下付近にて不特定多数の怪物が発見された。レーダーで調べただけらしいから正確ではないが、それによると北館一階及び渡り廊下付近が、平均推定危険度二.一、二階が二.四、四階が二.六、そして三階が、……四.〇〇二三」
「……それって、危険度五がいるってことですか?」
加奈子さんが、恐る恐る尋ねた。所長は平然と答える。
「……そういうことになるね」
「なっ――――」
所長の毅然とした態度とは裏腹に、一同は絶句した。
「四でもあれだけ強いのに、ですか?」
僕が尋ねると、所長はなぜか微笑を浮かべた。
「そうだ。当然、本部としても交戦は避けたいから、普段は地形的に不利な場合放置することもやぶさがじゃない。でも、何せ今回は場所が場所だからな。休みが明けてもこのまま休校にし続けるわけにはいかない。そこで、本部からもっとも近いこの尾張支部に応援要請が入ったわけだ。内容は、『雑魚敵の掃討及び危険度五の所在確認』。でもまぁ、所在確認なんてしようものならまず間違いなく襲われるから、本部としてはそのついでに討伐してほしいんだろう」
「……つまり厄介事を押し付けられたわけか」
隣に座る風間君が頬づえを突きながらぽつりと呟くと、所長はにっこりと笑った。
「そうじゃない、あくまで応援要請さ。本部の事前調査によって一階と二階はほとんど掃討済みみたいだし、今回の作戦でも本部から何人か派遣されてくる」
サングラスで隠れた目元には、蔭りこそなかったものの、どこか悪戯っぽい笑い方だった。
「作戦は本日の夜九時ごろから行われる。それまで、各自仮眠を取っておくように。それでは、今から詳しい作戦内容を説明していく――――」




