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怪物の通る歩道橋  作者: 羽川明
閑話1
39/87

姉と弟

 三人と別れ、二人だけで歩き始めてから十五分が経過していた。不意に、前を歩いていた加賀山が振り返り、にこやかに笑った。

「――――やっと二人きりになれたね」

「……そうですね」

「ごめん、一回言ってみたかっただけなの。怖い顔しないで」

「え? あぁ、いや、……すいません」

 やや距離を置いて歩く本道(ほんどう)(あきら)は、事実身を固くしていた。

 だが別に、怒っているわけではない。むしろその逆だ。


 ――――本道にとって加賀山は、もっとも身近な大人の女性であり、そういう意味でお姉さん的存在だった。だから先程も、『やっと二人きりになれたね』などと言われ、健全ないち青少年の一人として、中学生レベルの心が苦しいほど高なってしまい、どう反応すればいいのか分からなかっただけなのだ。


 しかし、一度流れてしまった気まずい沈黙は、そうそう破れる(たぐい)のものではなかった。

 加賀山とて別に、本道のことが嫌いなわけではない。むしろその逆だ。


 ――――加賀山にとって本道は、もっとも身近な年下の男の子であり、そういう意味で、弟とまではいかないものの、例えるなら、親友の女の子のたまに会う従兄(いとこ)ぐらいには彼を可愛がっていた。だから先程も、『やっと二人きりになれたね』などと言ったのは、親友の女の子のたまに会う従兄のもっとも身近なお姉さん的存在として、二人きりになってから途端に黙り込んでしまった本道の緊張をいい意味でほぐそうと冗談めかしに言ったのであって、だからそれが思いのほかすべり、しかもどうやら本道を怒らせてしまったのかもしれないとなると、加賀山としてはもはや打つ手がないのだった。


 そんなこんなで流れ出した重たい沈黙は、加賀山が通路の先に現れた銀の扉のドアノブに手をかけたことで、唐突に終わりを告げた。

『敵二体の反応を確認。推定危険度:ともに四』

 加賀山のナビゲーターには抑揚が設定されていたが、その中途半端な人間味が返って合成音声特有のぎこちなさを際立てており、その声はあまりにもちぐはぐだった。性別も不詳である。

 (ある)いは始めから設定されていないのかも知れないが、加賀山は何となく男して認識していた。

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