その三 廃工場内部3
その後しばらく続いたいろんな意味で重い空気を打ち破ったのは、耳障りな金属音だった。ふぉぉんという音叉のような音色が空気を震わせ、振り返ると、光を受けて輝きを放った棒状の物体が高速で飛んできた。
ここでも、真っ先に反応したのは柴崎さんだった。飛来した物体は光の扇に叩き落とされ、L字型に折れた棒状の金属片がリノリウムの床を跳ね転がる。
柴崎さんの右手に掲げられていたものは、照射させた極太のレーザーなんかではなく、目が痛くなるほど強烈な光を放つ、一本の蛍光灯だった。大きさも実物大――――百三十センチくらいだろうか。
両端の付け根が持ち手になっており、剥き出しの金属色に青いリングを幾層にも重ねた近未来的なデザインが施されている。一見するとビームサーベルのようだ。ふと視線を戻すと、奥に立つ加賀山さんが、柴崎さんの横顔をなぜかとろんとした瞳で見つめていた。気のせいか、顔を赤らめている。熱でもあるのかな?
「さっきのの二体目か?」
「その割にはやけに遠くから飛んできましたね」
「もしかして、別にいるとか……?」
加奈子さんがぽつりと呟くと、全員の視線が、自然と金属片が飛んできた後方の薄闇に集中した。直後、
『後方から敵一体が急速に接近中。推定危険度:四。距離、五十メートル……四十メートル、三十メートル、――――』
「速いっすね」
「でも、まだ何も聞こえてこない……」
加賀山さんが不安そうに身を固くする。
『……二十五メートル――――』
「……おかしい。そろそろ姿が見えても良い頃だろ」
『二十メートル』
「もしかして、誤報なんじゃ……」
「え、そんなことってあるんですか?」
「う、うん。たまに……」
尋ねると、加奈子さんは曖昧に返事をし、自信がなさそうに口を閉ざした。
『十メートル』
『ケケケッ、キキ……』
どこからか、微かに鳴き声が聞こえてきて、強張った背筋を、ぞくりと冷たい悪寒が撫でた。恐る恐る見上げると、薄暗い天井、砕けた裸電球の向こうで、赤い双眸が揺れていた。
「上です!!」
僕が慌てて叫ぶと、怪物は忽然と姿を消した。
『ガァァーーーーーーーー$&%%&?%&%%&!#&#“&)=~=~☆!!』
直後どす黒い影がコンマ数秒の内にゼロ距離まで迫った。
そのあまりの迫力に圧倒され、後ろに身を引いた刹那、
『避けて下さい』
少し遅れて回避システムが作動し、体がぐんと後ろに加速した。偶然タイミングが重なったからかこれまでの比ではないほど速度が増して、数秒後振るわれた一メートル超の腕を寸前で回避する。長細い黒塗りの指先が前髪をさらった。
「ぐはっ!」
背中を床に打ち付け、肺の空気が押し出される。途端に横から小気味の良い炸裂音が鳴り響き、黄色のメッキでコーティングされたような色の細かな筒を床にばらまきつつ無数の色濃い赤の弾道が瞬いた。




