その二 加賀山
「自由な子だね」
加賀山さんが楽しそうに呟く。
「前から気になってたんですけど、あのパイプって、どこに繋がってるんですかね?」
「宇宙じゃないか?」
「えっ、そうなんすかぁ!?」
何食わぬ顔でさらりと言ってのける柴崎さんに素っ頓狂な声で問いかけたのは本道君だった。よっぽど驚いたのか、興奮気味に鼻息を荒げている。
「いや、……知らんが」
そのあまりの喰い付き振りは柴崎さんも予想外だったらしく、それだけ言うと気圧されたように押し黙ってしまった。
視線で問いかけると、加賀山さんも慌てた様子でぶんぶんと首を横に振った。
「――――ひょっとして、誰も知らないんですか?」
返ってきたのは、静寂だった。
「これだけ頻繁に使ってるのに? 位置がずれたら、命に関わるかもしれないのに?」
そして、しばしの沈黙。
「……面目ない」
柴崎さんの口から発せられた言葉は、この場の沈黙を打ち破るにはあまりにも弱々しかった。
『七十メートル北西にて破壊衝動検知。ステージ1、推定危険度:四』
ナビゲーターがそう告げた瞬間、三人の目つきががらりと変わり、どこか歯切れの悪かった空気が、途端にかちりと引き締まる。
「七十メートル? 嫌に近いな」
「北西、……というとあっちの方じゃないっすか?」
「そっちは確か入口だったはずよね? 行きましょう!」
場を取り繕うようにいそいそと話が進み、三人揃って走り出す。僕も慌て てその後を追う。
「待って下さいよ! 危険度四なら下手に近付かない方がいいんじゃないですか?」
「いや、あまりにも距離が近過ぎる。放って置くとあっちから向かって来て不意打ちされかねない。それに危険度四ともなると、他の仲間を引き連れてる可能性も高いし、リスクがデカい。ここは先手を取るべきだ」
「あ、あぁ……そうなんですか」
戦闘経験ほぼゼロの僕はすぐに口を挟んだことを後悔した。当たり前だけど、これはアニメや漫画とは違うんだ。ど素人な主人公の思いつきで大勝利なんて言うご都合展開はあり得ない。改めてそう思い知った。




