その四 予感
「うわぁっ、来たぁ!」
ようやく歩道橋の下から姿を現した手々悪魔の縮れ毛の生えたレモンみたいな背中(?)に向け、レーザービームを打ち込んだ。ついでに緑のボタンも押しておく。
『手々悪魔。危険度:三』
「アイツ、しぶといな……」
真下を通過して行った手々悪魔は、ここに上って来る前にレーザーを連射しておいたはずの大きい方だと思われた。さっき倒した小さい方や昨日の三体は全部一発で撃破できたのに、こいつだけは生き残っているなんて――――まさか、あの連射を全て躱したのか? いや、まさか。
『敵二体、撃破』
「二体……?」
なんとなく、嫌な予感がした。脳裏に、人ト非のあの、体の芯から震え上がるような不気味な叫びが蘇る。
「なんで一体増えてるんだ?」
なぜだろう。声が少し、震えていた。
『警告 全方向から複数体接近中。計十三体。平均推定危険度:三.一』
「なんだよ三.一って! 三より上が混じってるのかよ!! しかも、十三体って……」
「キミくん、落ち着いて! すぐそっちへ行くからサ」
「無理だ、こんなの……! できっこない」
この眼には、何も見えない。ただ、見慣れた景色があるだけだ。住み慣れた、いつもの街。いつもの朝。天気だって、なんてことは無い青空だ。
でもそれが、たまらなく怖い。
何が、ここに残って戦うだ。たった三体倒したくらいで、ヒーロー気取りかよ。しかもそれも、この保護メガネのおかげじゃないか。
この、残り三十パーセント以下もないエネルギーがゼロになったら、僕はただの役立たずだ。都合の良い的だ。あのどす黒い腕を、見さえできずに貫かれて、……貫かれて、どうなる?
あれに貫かれたら、僕はどうなる。死ぬのか? ちゃんと死ねるのか? それとも――――
――――あの人ト非みたいに――――




