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怪物の通る歩道橋  作者: 羽川明
七章
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その二 バズーカ

 例によって鋼鉄の壁が取り払われると、朝日をちょうど遮るような形で青い建造物が現れた。なんだか随分遠回りをした気がするけど、とにかく僕らは無事目的地に辿り着いた。

「またここか……」

 中央分離帯付きの広い二車線を、橋の両端に階段を立て掛けただけのようなシンプルな作りの歩道橋が申し訳なさそうに(また)いでいる。逆光のせいで輪郭がくっきりと見えるせいか、その姿は昨夜と違って頼りなく、余計に肩身狭そうだ。

 それにしても、車の通りが全く無いな。考えてみれば昨日だって一応残業で遅くなった人達で混み合う時間帯なのに、一台も通らなかった。

「この通り、多田街道が広くなってから全然使われなくなっちゃったよネ」

「え? あそこは確か、スーパーが居座ってるせいで広くできないんじゃなかったでしたっけ」

「あん? 何言ってるの。そのスーパーなら去年潰れたじゃん」

 きょとんと目を丸くして、小首を傾げる薫さん。いい加減なことを言っている風ではない。

「――――そうでしたっけ」

「そのはずだヨ。……でも、わたしも何だか自信なくなってきちゃったナ」

 薫さんは気を取り直すようにこほんと小さく咳払いすると、芝居がかった動作でばっと白衣を翻しながら正面に向き直り、意気揚々と声を張り上げる。

「それはさておき、そろそろ始めまショータイムッ!!」

 一体どこから取り出したのか、いつの間にかその腕の中に一メートルはあろうかという特大バスーカが抱かれていた。薫さんはそれを膝立ちになって右の脇腹で挟み抱え込んでいる。

「ちょ、ちょっと待って下さいよ。これからどうするんですか?」

「言ってなかったっケ。このリンちゃん特製巨大バズーカを怪物の群れにぶちかますのサァ!!」

「は、はぁ?」

『敵三体、接近』

「ほら来るヨ! 援護シクヨロ!!」

「えぇ!?」

 薫さんはばっと片膝立ちになってバズーカを構えると、右目のレンズで狙いを定め、横腹に抱えたままトリガーを引き絞った。瞬間巻き起こる轟音。バズーカから伸びた太さ五十センチはあろうかという光の柱が空を貫き、前方から飛来した三体の手々悪魔たちを一呑みにした。

「おっと」

 華奢な体に反動を受け、一瞬後ろによろめくも、薫さんはバズーカを前に突き出してバランスを取り、器用に立て直す。

『敵一体の消滅を確認』

「一体?」

『イヒヒヒィッ!!』

「うわっ!」

 呑み込まれたかに思えた二体の手々悪魔が歩道橋にぶつかる寸前で左右にそれぞれ急旋回し、再びこちらに飛来する。咄嗟に右の一体に狙いを定め、赤のボタンを引き絞るも、風に(あお)られた紙切れのように翻り紙一重で(かわ)されてしまった。

「避けられた!?」

「当たり前じゃん!! 連射しなくちゃ当たんないよっ!」

「でも昨日は……」

 ボタンを二度押しすると、左の一体に向けて二つの赤い弾道が描かれる。しかし手々悪魔はそれを速度を緩めることなく半身になって翻り躱す。その距離はもはや十メートルもない。

「くそっ!」

 左手を突き出して壁を造り出し、襲い掛かって来た大蛇のような腕を弾き返す。後ろに居た二体目の攻撃も遅れて届き、どす黒い(やり)の連撃が展開される。

「はわわっ!!」

 半透明の壁は内側に(くぼ)み変形したが、その細腕がバリアを突き破ることは無く、手々悪魔たちは壁ぎりぎりで急旋回して歩道橋の裏に隠れた。

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