チュチュの過去〜第3幕(ピンクの騎士)
そして、恐らくこれが最後。
ポッキーの残りはおよそ4センチ。
あと1幕でチュチュの過去上映会は終わる。
それに向かって、始まった第3幕……
これまで死体実験動物や汚水の王と、不気味で気持ち悪いものばかりだった。
だから、第3幕にも明るい劇は期待していなかった。
そして、やっぱり見覚えのある金魚鉢の中。
はー。またかよ。
正直、同じような映像ばっかだし、ぼんやり水の中だし、水から出ても白い部屋だし、つまんねぇよ。
ってか、このポッキーゲームの趣旨は“過去を見せあって互いの距離を縮めよう!”だよな?
いや、それはどーでもいいんだが、最後に私はチュチュにどう思われているか当てないと戻れないんだろ?
こんな頭おかしくなりそうな無機質映像をエンドレスで見させられても何も得るものねぇってーの!
せめてこの酔いそうな金魚鉢から出てくんないかな?
いくら金魚鉢の外が白い部屋に白衣を着た人たちばっかりだからって、ガラス越しに動かれちゃあ見させられてるこっちは堪んねぇんだってーの!
その時だ。
白ばかりだった金魚鉢の向こう側で何かが起こった。
誰かが壁をぶち破り、白衣を着た人影が赤く染まっていく。
見えるのは薄桃色の人影。
そして、銀色に光る長いもの、恐らく剣を持っていた。
その人影は金魚鉢に付いている操作ボタンを押すと、水位が下がった。
視界が水中から空気の世界へ。
ぼんやりと見えていた薄桃色の人影はやがて、薄桃色の髪をした男性になった。
銀色の剣には赤い魔石が埋め込まれており、たくましい体つきと紋章入りの鎧から、この人が王国騎士であることが分かった。
凛々しい顔立ちのその人は、さらにボタンを操作し、チュチュの入っていた金魚鉢のガラスを開ける。
そして、チュチュに手を差し伸べる。
チュチュは拳と拳を突き合わせ、ちょうど手首を縛られる時のようにして差し出していた。
いつもここから出る時はそうしていたのだろう。
癖が染み付いてやがる。
騎士はそんなチュチュの手をグイと引っ張ると、チュチュをお姫様抱っこして走り出した。
ヒビの入った壁を足でぶち破り、走り出す。
「かっけぇな、この人。
でもいきなりだな、誰だこの人?」
いきなり現れ、チュチュを拐った謎の王国騎士。
にしても、その長めの薄桃色の髪。男で桃色って珍しいな、けどこの世界に髪染めなんてもんは無さそうだから元々なんだろうな。
私もピンクの髪になっちまったけど、私は女だし……
けど待てよ、ピンク色の髪ってこの世界でも珍しい。
ってか、私以外1度も見た事ない。
まぁ、私はこのローリアビテについてまだ全然知らないことだらけだ。
もしかしたら、ピンク色の髪の人種が多い地域とかあるのかもしれない。
だとしたら、かなりインパクト大な人たちの集いだな。
ピンク色の髪って、かなり印象に残るもんな。
俺の2次嫁たちの中にもピンク色の髪をしたキャラがたくさんいたのを今でもありありとその姿形を髪の毛中心に思い出すことができる。
「けど、ピンク色の髪って印象強すぎて、ピンク髪って共通点だけで似たようなキャラに見えちまうんだよなー……」
チュチュを抱えて逃走する騎士。
チュチュのいた部屋は真っ白で小さな窓もない部屋だったが、1枚壁のぶち破れば、そこには何やら怪しげな薬品がある部屋やモンスターのハクセイが所狭しと賑やかに飾られていたりした。
それはそれは不気味だった。
そして遂に騎士は建物の外に出た。
そして、用意しておいた馬車に駆け寄る。
いや、逃げるならスピード重視で馬の背中に直接乗れよ!
馬車なんかじゃあ追いつかれてしまうかもしんないぜ!?
だが、なぜ馬車なのか理由はすぐに分かった。




