あったかバスタイム。
大宴会の後、ゴブリン10兄弟たちはきちんとお片づけをして自分たちの部屋へ帰っていった。
あんなに騒がしかった部屋は静まり返り、反動で寂しさすら感じた。
「んじゃ、風呂にでも行きますかー」
ベットから勢い良く飛び降りる。
「リリス……」
やっぱりだ。
予想はしていたが、やはりチュチュが私を呼び止めた。
「なんだよ、お前は回復の光でその怪我治してから入ればいいだろ」
「やだ。
チュチュがリリスの背中を流す」
何とまあ強情な。
無視無視。
どうせ、こいつはここから動けやしないんだ。
そう思って私がチュチュを置き去りにしようとドアの方へ颯爽と向かった時だった。
──バタッ
「って、お前なぁ!」
チュチュは自らベッドから転がり落ち、こちらを見つめている。
なんか、すっごい罪悪感。
「あぁもう!
わかった、わかった!
一緒に入ればいいんだな?
それでお前は満足なんだな?」
チュチュのポーカーフェイスがパァッと輝いたのが分かるようになるとは、私も相当ヤラれてるな。
で、
「なんでこうなるんだよ!!!」
甘かった。
私の考えは甘すぎた。
一緒に入るだけで放置プレイだなんて、大怪我して動けないチュチュにそんなむごい事はさすがに出来なかった。
「リリス、脱がせて」
脱衣所の床にペタリと座り込み、壁にもたれるチュチュはまるで糸の切れた操り人形。
そんな手足も上がらないやつに、ワンピースを脱ぐ術はなかった。
「無理だって!
お前、私に何をさせようとしてんだよ!」
それでもチュチュはしつこく私の目を見て訴える。
ああもう!こうなりゃヤケだ!
私はチュチュの背中側に回り込み、ワンピースに付いている背中のチャックを引っ張り下げた。
なにやってんだ、私は……
そして、その辺にあるタオルをチュチュの体に巻くと、チュチュの体の前側を見なくて済むようになった。
「リリスの臆病者」
「うるさいぞ」
そしてタオルを巻いたままのチュチュをお姫様抱っこして、私は湯船に直行した。
湯船の中なら、水の浮力で多少ならチュチュも自分一人で動けるだろうという判断だ。
そしてその作戦は見事成功した。
チュチュも広い風呂にはしゃいで、私が手を離しても何も言わなかった。
「いいか、溺れるなよ。
私はシャワーをしてくるからな」
そして私はシャワーを浴びた。
久々の温かい風呂だ。
水車小屋の水浴びとは雲泥の差だぜ。
はぁ〜癒やされる……
と、私の癒やしタイムは強制終了させられた。
シャワーの音とは違う、わずかに水面をパシャパシャ叩く音が聞こえた。
チュチュの方に目をやると、チュチュの手だけが水面から見えていた。
あいつ!
あれほど溺れるなと言ったのに!
私は慌ててチュチュを救出する。
チュチュの顔は、まるで茹でダコみたいに真っ赤だった。
いつも青白い顔してやがるから、赤い顔は新鮮だな……
だなんて言ってる場合じゃねぇ!
「だれか!誰か来てくれー!」
私の声に呼び寄せられ、数匹の召使ゴブリンたちが風呂場に侵入してきた。
「どうされました、お客様!」
「まぁ、メシア様がのぼせていらっしゃる!」
「たいへん!
氷を持ってきてちょうだい!」
よし。
あとのことはこの召使ゴブリンたちに任せて私は風呂の続きを……
「お連れ様ももうお上がりになられたほうがよろしいです!」
「そうでございます、お連れ様までのぼせてしまいます!」
「いや、私は入ったところでまだ全然……」
「さぁさぁ、お連れ様も早くこちらへ!」
「あぁやめろー!
私はのぼせてなんかいない!
ってか、女の分際で私の裸に触れるな!やめ、やめろぉぉぉー!」
叫び虚しく、私はチュチュと一緒にもとの部屋へ強制送還され、召使ゴブリンたちに氷まくら漬けにされてしまった。
……ってか、風邪ひくっつーの!
書き溜めデータがぶっとんでしまったため、しばらく不定期になってしまいます…。悲しい。。




