この愉快なゴブリンたちをお食事に招待。
「よーし、全員いるな!」
はい居ますでしょうね、貴方が引っ張り出してきたんですから居ますよそりゃ。
「あのぉ……」
そこでようやく、黒いゴブリン……ドゥは私たちを思い出した。
「おっと、失礼お客さん。
うちの可愛い可愛い弟と妹たちがお邪魔しちゃって……」
そこで更にドゥは、私たちが食事中だったという事にも気がついた。
「あぁ、お食事中でしたか!
それは本当に申し訳ない!」
いや、別に大丈夫だけれども。
「リリスがチュチュに意地悪するの」
「うぉい!!」
と、普段、滅多に自分から他人と口を利かないチュチュが初対面のゴブリンに私の悪事を告げ口した。
「ん?なにか……」
「い、いえ!何でもないんです!!」
だが、幸いその声はに小さかったため、ドゥたちには聞こえなかったようだ。
私がチュチュを睨めつけると、チュチュはペロッと舌を出した。
「それでは、失礼しますお客さん。
ほら、お前たち挨拶して、行くぞ」
あぁ、もう行ってしまうのか。
それはそれで何か寂しい気もする。
ゴブリンの弟と妹たちは、「キィー」「お客さん、ごゆっくり〜」とか言いながらぞろぞろと部屋を出ていく。
こんな愉快な仲間たちともっと仲良くならない手はない。
「あの!」
気がつくと、私は彼らを呼び止めていた。
「夕飯、まだですか?」
20個の目玉が一斉にこちらを向き、パチクリさせていた。
うぉ……なんか一斉注目されると、転生してコミュ障とか言ってられなくなった今でも少し辛いな。
「まだだよ!」
ピンクの雌ゴブリン……確かユイ。
「キキキ」
橙色のツインテール、えーっと、サンク。
「なら、一緒に食べません?」
私は控えめに、食事に誘ってみた。
初対面の相手を食事に誘うなんて、なかなかしたことがなかった。
ソリが合わないかもしれないし、会話が続かなくなってしまうと、どうにも居づらくなってしまう。
けれど、その恐怖よりも私は彼らに対する興味の方を優先させた。
それほどまでに、なんと言うか……彼らは見ていて飽きなかった。
「キィー!」
「食べる食べる!」
「キーキキキキキー」
「サンクが、『私もそう思ってたわ♪』ですって」
「キッキキーーーキ!」
「けど、お邪魔しちゃあ悪いんじゃ……」
ドゥが気を遣ってそう言ったが、全くその必要など無い。
それに、
「いや、大勢で食べた方が楽しいし。
なっ、チュチュ」
それにチュチュに意地悪してしまって引っ込みがつかなくなっていた。
このまま2人きりの食事になるのは些か気まずいと踏んでの誘いだ。
チュチュもそのほうが良いと考えたのか、コクリと頷いた。
「それなら、俺たちの部屋にある分も持ってきて大宴会にしよう!」
「「「「キーイ!!!!」」」」
ドゥに部屋を他に用意しようかと言われたが、チュチュがベッドから動けないのでこの部屋でいいと言った。
料理を運ぶ途中、ちびっ子ゴブリンたちがキャーキャーと楽しそうにしているのはいいのだが、スープを溢したりしないかとヒヤヒヤした。
特に、ユイ!セプト!
そして、召使いさんたちの手伝いもあり、私たちのいる部屋は大宴会場となった。
「それでは、今宵の出会いに祝福を!」
「「「「キィー!!!」」」」
ドゥが乾杯の温度をとり、各々食事を始めた。
しかし、こうして改めて見ると、ゴブリンも10人10色だなぁ。
ってか、こいつらみんなあの長老の子供なんだよな……
上の子と下の子はいったい、何歳年が離れてるんだ?
下が多分あの黄緑のディスって子で2歳くらい。
上があの白い髪の……
「そう言えば、自己紹介がまだだったな!
みんな、お客さんに自己紹介してなかったじゃないか!」
いや、さっきの出欠で名前は分かってるし……ってか、むしろ自己紹介してないのって私たちの方じゃね?
そんな事はお構いなしにドゥは率先して自己紹介を始めた。




