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私たちは既にヒモだった。


 あの後、私はチュチュに抱きつかれながらも、楽な体勢を上手く見つけ、かつチュチュの体に負担をかけないように頑張った。


 チュチュは眠るまで私を解放してくれなかった。


 おかげで腕が筋肉痛だぜ。

 ったく、地味なくせに強烈な仕打ちだな。

 一体私が何をした?

 

 うーん。心当たりあることは泣かせちまった事だが、あれはもう償いの契約を交わしたしな。

 

 となると、あとはなんだ……?

 うーん……わかんね。

 

 ま、いいや。

 多分これでチャラだろうからな。


 あともう1つ気になるのは、何でチュチュは互いの世話なんか望んだんだ?

 “互い”を付け足させたのは私だが、それ以前にチュチュは私のお世話がしたいと望んだ。


 普通、何でも1ついうこと聞いてやると言われたらもっとこう……普通じゃできないようなこと願うだろ!

 例えば、弁当のおかずをよこせっとか……これはチュチュには無さそうだな。

 ゲームのレアアイテム譲ってくれっとか……これも関係ねぇな。

 コンビニまでパン買ってこい!……これも無いな。ってか、弁当もゲームもコンビニもこの世界には無いんだよな。


 まず、この世界での娯楽が何かわかんねぇ。

 アニメもゲームも漫画も無い。

 一体、この世界の住人たちは何して遊んでんだ?

 大人なら、ギャンブルとか買い物とかか?

 けど、子供は?

 うーん。この世界にはジャンケンらしきものすら発足していなかったからな。

 ジャンケンが無かったらあっち向いてホイ!もかくれんぼ!も花いちもんめ!もだるまさんが転んだ!も始められないな。

 ……ってか、懐かしすぎるだろ私の子供遊び……


 それは置いといて、あとでゴブリンの誰かにでも聞いてみよう。

 あれだけ賢い賢い言ってる種族なんだ、子供遊びもモンスターにしちゃあ高等なものを期待できるかもしれない。

 まぁ、賢い賢い言ってるのは今のところあの長老だけなのだが。


 ──コンッコンッ


 「は、はい」


 ちょうどその時、扉をノックする音がしたので、慌ててベッドから降りて返事をした。

 

 失礼いたします。と言って扉の向こうから召使いゴブリンが現れた。

 

 「お連れ様、ご夕食のご用意ができました。

 食堂でお召し上がりになられますか?

 それともこちらにお運びいたしましょうか?」


 窓の外を見ると、空はすっかり藍色になり、小さな星がチラホラ見えていた。


 「あっ、じゃあこっちで。

 チュチュが起きたら一緒に食べます」


 「かしこまりました」


 そしてまた恭しくお辞儀をして部屋をあとにして行った。


 



 夕食はすぐに運ばれてきた。

 なかなかというか、とても豪華だった。

 花で飾られたオードブルに、木の実と野菜のスープ、デザートにチョコレートケーキっぽいスポンジケーキ。

 

 「すごいなこれ……まるで高級レストラン」


 ハッ!

 やべぇ……私らの持ち金、今500コレイしか無いじゃねぇか。

 リュックの中身も幾多の戦闘の最中に吹っ飛ばされたらしく、スッカラカン。

 お金に代わるようなものはあとはこの剣と盾だけど、これはあげられないし……


 「あの……私たちその、一文無しでして……」


 ここまで高級ホテルにいさせてもらって料理まで運ばせておいて今更何をっ!

 なーんて言われたらお終いだがここは正直に告白しておく以外道は無い。

 そう思い、私は召使いゴブリンに、自分たちは一文無しであることを告げた。


 もう、体で払うしか……


 「大丈夫ですよ、長老様からお話は伺っております。

 お2人はメシア様とそのお連れ様なのですから、どうぞ何日でもこちらでごゆっくりなさってください。

 お金をいただこうとか、体で払ってもらおうだとか、そんな事は申し上げませんから」


 ……最後のは私の心を読んだの?

 それは置いといて、えっ。じゃあタダでこんな高級ホテルに寝泊まりできて、タダで高級料理をご馳走になれるってこと?


 えっ、何それゴブリンってお人よしなの?バカなの?

 だが、一文無しの上この大怪我を抱えている私たちにはとてもありがたい天からさしのべられた救いの手だ。

 

 「それでは、安心してごゆっくりお食事をお楽しみ下さいませ。

 食器類はあとで取りに伺いますからそのままで。

 それから、5つある大浴場は長老様以外使いません。

 男女別れてありますので、女湯はお2人の貸し切りでございますのでお好きな時にお入りください。

 それから、お召し物はタンスの中や衣装部屋からお好きなのをお選びください。

 洗濯物はドレッサーの横にあるかごの中に入れていただければ私共が回収してお洗濯させていただきます。

 あと何かありましたら廊下にいる者にご遠慮無くお申し付けください。

 その他なにかございますでしょうか?」


 「い、いえとんでもねえことでございます……」


 「では、失礼させていただきます」

 

 はぁ……いたれりつくせりだな。

 思わずこっちもバカ丁寧な言葉遣いになっちまった。

 ちょっと最後、笑われてたし。


 「……いいにおい」


 夕食のにおいに釣られてか、チュチュも目を覚ました。

 まぁ、もともと私が来るまで寝てたんだから二度寝は浅かったのだろう。


 「おなか、へった」


 「だな」


 「ちゅちゅ、ぺこぺこ」


 「プッ、それキングの真似かよっ!」


 食べること以外…何も頭に無いまの抜けたキングの顔と、チュチュのポーカーフェイスが、妙にマッチしてウケた。


 

ゴブリンのイラスト描きました♪

これから登場予定(あと2話後?)の10兄弟です!

めちゃ頑張って描きました♪見てもらえたら嬉しいです!

https://twitter.com/cPd3MIrvIF3iM9D/status/867403296830509056

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