貴方なしでは生きていけない体なの!
「チュチュにリリスのお世話をさせて!」
「………はいぃ?」
何が来るかと、構えていた私は、不意の攻撃に素っ頓狂な声を上げてしまった。
「チュチュ、リリスにもっと必要とされたい」
「いや、お前は充分必要d……」
「リリスのお世話をして、リリスの役に立って、リリスがチュチュ無しでは生きていけないようにしたい!」
「なんつー恐ろしい事をポーカーフェイスで生き生きと言うんだこの口は!!」
あまりの爆弾発言に思わす立ち上がり、チュチュの小さな唇を上下から指で封じた。
「ひひふ、ひはひ……(リリス、いたい)」
チュチュの唇を解放し、再び丸椅子に腰掛ける。
「何でも1ついうこと聞いてやるって言ってんだ、もっと自分のために使え」
「チュチュ、自分のためだよ?」
こいつはまた、ケロッとしやがって。
チュチュ無しでは生きられないようにしてやるだ?
私にヒモになれとでも言うのか!?
「お前は私をダメ人間にしたいのか?
違うだろ?」
「うん」
ちがうんかーい!
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ憧れのヒモ生活も悪くはないと思ってしまった自分がいたことを100パーセント否定できないだけあって少しガッカリした自分がいた事も否定はできない。
だけど、これでいいんだ。
うん、道を踏み外すな私。
ヒモ生活なんて、味気ないだけだぞ!
それに、女であるチュチュのヒモなんかになったら、人生全うした後であの鬼死女神を殴りにくくなるじゃねえか。
よしっ、心のケジメはしっかり着いた。
「だったら、もっと別のことを願え。
そもそも、お前に2人分の世話ができるほど体力は無いし、今お前は大怪我人だ」
ここまで言えばチュチュも諦めるだろう。
さっきのは聞かなかったことにしてやる。
私はあの鬼死女神と違って優しい優しい女神様……じゃなくて、神様だからな。
さっ、改めてお前の願いはなんじゃ?
言うてみぃ。
「じゃぁ……」
うんうん、じゃぁ?
「じゃぁ、リリスはチュチュのお世話をして。
チュチュはリリスのお世話をするから。
これなら、おあいこ」
「…………」
開いた口が塞がらない。
こりゃダメだ。
チュチュは、何がなんでも私のお世話をしたいらしい。
チュチュのポーカーフェイスが、これまで見てきた中で一番輝いている。
……諦めるしかない。
「あーもう、分かったよっ。
“チュチュは私の世話をする。私はチュチュの世話をする。”
それでいいんだな?」
「うん!」
とてもいい返事でチュチュは応え、なぜか包帯ぐるぐる巻きの両腕を私に向かってなんとか広げている。
「ん?どした?」
「リリス、チュチュのお世話。
チュチュを起こして」
はー。仕方ねぇな、1発目が私からチュチュへのお世話かよ。
「はいはい、よっこらしょっと……
けど、何のために起きるんだ?
喉でも乾いたのk……って、おい!」
ベッドに膝をつき、不安定な体勢だったのがいけなかった。
チュチュは軽いからと、油断した。
チュチュの両腕を私の肩にまわし、チュチュの体を起こそうとしたその瞬間、チュチュはワザと後にグイッと力をかけ、私もろともベッドに倒れ込んだ。
「……あっぶねぇ…………」
バキバキに折れたチュチュの骨を踏んづけないよう、なんとかスレスレで両腕を枕についたが、この体勢は……
「チュチュお前!はかったな!?」
チュチュとは、何度もこういう体勢になった事がある。
だからもう慣れたもの……になるはずねぇだろ!
「離せチュチュ!
この体勢キツイんだよっ!
ってか、お前今どこにそんな力がっ……う、腕が、腕が限界ぃぃい!」
それでもチュチュは私にしっかりと、まるでコアラの赤ちゃんのようにくっついて離れてはくれなかった。
「腕がぁぁあ!!!」




