第3フロアは森でした。
緑の香りがする。
地面はフカフカ。
目を開けると、ぼんやりと光を帯びた黄昏時の空。
それを取り囲むように黒くも見える深緑の木が伸びていた。
ヘルガーデン第3フロアは、森だった。
それはそうと……
えーっと……何があったんだっけ?
やば……頭打った。記憶喪失……にはなっていない。
けれど、いろいろありすぎて頭の中はパニック。
いっそリセットってことで記憶喪失になってしまった方が良いかもしれないな。
「いっ……」
あぁ、はいはい思い出した。
脇腹の焼けるような痛み。
私たちは1度、ヘルガーデン第2フロアのボス、キングを倒したとヌカ喜びしていたところ、まさかまさかキング復活。
チュチュが沼へ吹っ飛ばされて私もキングに捕まって……
「って、そうだ!!!」
私は重大なことを思い出し、飛び起きる。
脇腹に痛みが走ったが、そんな事よりもだ。
「チュチュ!」
チュチュの姿を求め、周りを探す。
少し離れたところに、水色の女の子は転がっていた。
手足がおかしな方向へ折れ曲がり、頭の先から足の先まで血と泥にまみれたロリが。
言葉が出なかった。
傷つき、触れたら粉々になってしまいそうな細い線。
だが、恐る恐るその胸に耳を当てる。
──トク………トク………トク………
小さな音…
小さい。けれど、生きている。
とりあえず力が抜けた。
だが、まだ完全にホッとはできない。
なぜなら、チュチュが生きていたからだ。
いや、生きてていいんだけど、そうじゃなくて……
あの時、チュチュは沼へ吹っ飛ばされていた。
それは私もしっかり見た。
どうやって、一瞬にして私のそばに……?
あの時のチュチュは何だったんだ……?
キングと戦いの最中、沼へ沈んだはずのチュチュが一瞬にして私の目の前へ。
そして地面から第3フロアの入り口へ……
あれは瞬間移動か?
けど、それって風系統の魔法のはず。
チュチュの適性魔法は水魔法と雷魔法。
風系統に適性はない。
それに、キングの足を灰にしたあれは一体……?
チュチュにはいろいろ聞きたいことはある。
だが、今すぐというわけにはいくまい。
チュチュには休息が必要だ。
そして私も……
あぁ……やべぇ。
めちゃくちゃ体重い、瞼も重い……
もう一度、チュチュの鼓動をしっかりと確認だけする。
するとなんだか、ホッとひと息ついてしまった。
まだまだホッとはできないはずなのにな。
そして私は急に睡魔先輩に襲われ、眠りの国へと誘われていってしまったのだった。




