キング戦はじまり。
「くそっ、急げチュチュ!」
「はぁ……はぁ……」
私は、もうあの光は宛にならないと、ヘルガーデン第2フロアの先も急ぐことにした。
チュチュが付いて行けてないが、あんな不機嫌な奴の事なんか知ったことか!
私も不機嫌なんだ!
「もうすぐ第3フロアの入り口なんだ。
急げ急げ、ゴールは目の前だっ」
Lvの低い私たちはモンスターに積極的に襲われることが無いためなかなか順調に第2フロアを進むことができた。
それに、私がめちゃくちゃ早歩きしたしね。
多分あと1日もあれば第3フロアへ行けるはずだ。
夜になる前に着いてやるぜ!
「リリス……t……」
「あ?なんか言ったか?」
私のペースに付いてこられず、チュチュはかなり後ろを歩いている。
「リリス……敵を、感知!」
「なに!?」
チュチュが叫んだ直後、突如として太陽の光が遮られ、次の瞬間には土煙とともに物凄い地鳴りがした。
「キング!コイツです、コイツが俺らの仲間を!」
「やっちまってくだせぇ、キング!」
「それな!お願いしやすっキング!」
どこか聞き覚えのある声に、目を開けると案の定そこにはあのチンピラウロコ蛇5匹組……のうちの3匹。
しかし、ザコの再登場キャラクターは、どうやらボスキャラを連れてきたようだ。
ウロコ蛇たちがソイツに道を譲るように後ろへ下がらなくともその巨体は丸見えだった。
それは、ウロコ蛇と同じ透明なウロコを持った、一戸建て程も大きさがあるカエルだった。
「きんぐ、はらぺこ」
こいつもしゃべる系モンスターか。
しかしまぁ、モッタリと響く声に、なんとも頭が悪そうなしゃべり方だ。
「おい、お前ら!何なんだよ、このデッケーカエルは!」
私はウロコ蛇たちに尋ねた。
「へっ、このお方は我ら第2フロアの王であられるお方よ!
第2フロアの物は全てキングの物!
つまり、お嬢ちゃんが俺らの仲間を殺っちまったからキングはお怒りなのさ!」
はぁ!?
「お前ら、仲間を見捨てて逃げたじゃねぇか!
今更他人頼みの復讐しに来たってことか!?」
「う、うるせえ!」
「それな!」
「俺たちに牙を立てたこと、後悔させてやるぜ!」
「きんぐ、ぺこぺこ」
ぐわっ、耳がいてぇ!
いきなりしゃべるな!このデカカエルめ!
「コイツら食っちまってくだせぇキング!」
「それな!人間のご馳走ですぜ!キング!」
「お、おい。俺らは危ないから早く隠れるぞ!」
ウロコ蛇たちは、さんざんギャーギャー言ったあとはこのキング任せらしい。
自分たちは安全な場所に隠れてしまった。
本当にザコだなこいつら。
ってか、今思ったけど蛇がカエルより立場下って……
「んあ?」
──バシンッ!!!
キングの口からツルのムチが炸裂した。
間一髪で私はそのムチをかわし、ムチ打った地面を見てみると、そこは大きくエグれ、そしてなにやらプスプスと湯気が立っている。
「まさか、ツタウルシ!?」
うわぁ……あの、触れたら1週間以上地獄の痛みに襲われ続け死ぬというツタウルシか。
あの紫と黄色の葉っぱ……うん。間違いねぇ。
あのヴァイン・フロックと同じだ。
「ぱくぱく、もぐもぐ、なにもない」
ぎえぇぇ!ジュルッとした目玉がまたこっち見た!
やめて、この変態!
私を食べても美味しくないよ!
……って、前世の私なら筋張った男だからそう言えたかもしれないけど、今の私は柔らかいロリっ娘だ。
一概に不味いとは言いがたい。
いや、だからってお味見どーぞなんて言わないけどな!?
むしろ、こっち側がお前を食料にしてやるくらいの勢いで行かねぇとな。
幸い、カエルは美味しいと聞く。
ご馳走の山が目の前にあると思えばやる気も出てくる。
1度ヴァイン・フロックとは戦ったことあるし、手の内は分かっているから楽勝だろ!
それとやっぱりコイツ知能が低いらしい。
しゃべり方が馬鹿っぽい。
もぐもぐとか言わなくたっていいだろ。
「きんぐ、はらぺこ」
あと、食べる以外頭にないらしい。
「わわっ!」
──バシンッ!
馬鹿なのはあれだが、攻撃力はハンパねぇ。
余計なことを考えていて、うっかり足元すくわれないようにはしねぇとな。
それに、通常サイズのヴァイン・フロックでは気が付かなかったが、カエルが口から出す唾液も毒を持っていて、ツルに付着し、鞭打つたびに毒の唾液が周りに飛び散って二次災害的に酸性雨を降らしてくる。
これはなかなか厄介だ。
「だが、的はデカイ!
的がデカけりゃ外さないぜ!」
温度操作(2)発動!!!
「“我ここに望む 全てを我の手の中に この温度を上げよ”!」




