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起死回生と仲直り。


 そよ風に当たれば消えてしまいそうなほど小さくて、霞がかったチュチュの声を、私は聞き逃さなかった。


 慌てて耳をチュチュの胸に当てる。




 ──トク……トク……トク……


 


 「生き……返った……」


 嘘だろ?

 さっきまで心臓は止まっていたし、私は何もしていないのに……なんでだ?



 「チュチュ、平気なのか!?

 生きてるのか?それとも、ゾンビになったのか?」


 後から思えば恥ずかしいのだが、私は本気でチュチュがゾンビにでもなったんじゃないかと考えたのだ。


 案の定チュチュは「リリス何言ってるの?」という感じでキョトンとしている。



 「だって、お前の冒険者カードの体力値が0に……

 孤独死草の毒にやられた時でも4で死にかけてたなら、0は死ぬだろ!!?」


 「リリス、私は生きてる。体力まだある」


 「嘘つけ!冒険者カードを見てみろ!」


 私はチュチュに、チュチュの冒険者カードを見せる。


 「リリス、よく見て」


 「あ?」




【※※※※※】

 ※ 0歳

 LV0

 魔法適性:※※※※※

 体力:0/0

 魔力:0/0

 筋力:0

 敏捷:0

 物防:0

 免疫:0

 魔耐:0

 幸運:0

 スキル:【※※※※※】

 このスキルを習得しますか?

《※※※※※》

チーム所持金:※※※※※コレイ






 えっ、なんじゃ?

 カードがめちゃチカチカしてるんですけど!!?

 えっ、なに?怖!

 あっ、そうか……


 「……感電してバグってるだけか……」


 私はあの時、とんでもなくパニックになっていた。

 だから、冒険者カードが感電して壊れてしまっていたことに気が付かなかったのだ。

 心臓も電気のせいで一時的に停止していたと考え……ても!


 「けど待てよ、なんで感電死してないんだよ!

 お前のアホみたいな魔力で『ショック』に撃たれれば死ぬだろ!?」


 いやいや、なんで死んでないんだよ!

 とは物騒な質問だが、いたしかたあるまい。

 だって本当に疑問だったのだから。


 その疑問に応えるべく、チュチュが口を開きかけた時、感電した方のウロコ蛇の呻く声が聞こえた。


 そっち死んでなかったのか。

 まぁ、それはどうでもいいが。

 え、死んでなかったの?


 

 「ウロコ蛇のウロコを鑑定した」


 「だからなんだ?」


 「ウロコ蛇のウロコ。物防:200。電気伝導率5%。熱にとても弱いが、物理的強度と低い電気伝導率が特徴」


 

 ……

 

 これまた淡々と鑑定結果のご報告をサンキューな。だがな、いきなりそんなタネ明かしされるこっちの身にもなってくれ……



 「つまり、その……なんだ?

 お前はそれを知ったうえで『ショック』を?」


 「うん」


 「感電しても助かる方に賭けたと?」


 「うん」



 うん。じゃねぇだろ……


 「けど1回お前の心臓止まったんだぞ」


 「うん」



 「感電死する可能性も考えたよな?」


 「うん」


 「バカか!」

 

 「?」


 そこも、?。じゃねぇだろ!!

 このポーカーフェイス女め!


 「無茶ばっかしやがって!

 命を粗末に扱うな!

 攻めの姿勢にも程があるぞ!」


 「……そうするしかなかったから」


 「バカ!」


 私はまた声を荒げた。

 これが荒げずにいられるかってんだ!


 「私がいただろーが!

 1人だけで何とかしようとするな!

 お前は助けても言えねぇのか!

 それとも何か?私がお前を助けないとでも思ったのか!」


 あまりの私の剣幕に、蘇生したばかりのチュチュは目を白黒させている。



 「だってリリスは女嫌いd……」


 「バカ!!!」


 こんな穏和で優しくて心の広い私がここまで怒りを覚えるなんてことは無いぞ!


 あの鬼死女神にだって、ここまでの怒りは感じなかったというのに!


 「そうだよ私は女が嫌いだよ!

 だがな、私は女は嫌いでも目の前で死なせようとは思わねぇ!

 私をそんな薄情な人間にするんじゃねぇ!」


 そこまで言い切ると、チュチュはもう何も言わなかった。

 最近よーやくこいつの考えていることが少し分かり出してきたのだが、今はさっぱりだ。


 どこか遠くで、ギャーギャー鳥のなく声が聞こえる。

 その他のジャングルの音は全て消えてしまったようだった。


 「だからお前はもっと私を信用しろ!」 

 


 あぁ、私何言ってんだ。


 これは私のワガママなのかもしれない。

 他人を信用するということは、とても勇気がいることなのだ。


 それを私は強制したのだから、もしかしたらチュチュは私を拒絶するかもしれない。




 チュチュは何も言わなかった。

 ただ黙ってゆっくりと体を起こし、そして……



 「リリス、だっこ」


 ──ぎゅっ


 「え……」



 そんな心配は無駄だったらしい。

 チュチュは私に全体重を預けてしがみついてきた。


 いや、信用しろとは言ったけどちょっと何か違うような……


 しかし、私を信用しろ!なんて言った手前、拒むに拒めない……

 うぅ……墓穴掘った。


 まぁどのみち、チュチュが1人じゃ動けないこの状態では、私がチュチュを運ぶのは必然なのだろうけれども……けれども……






 「はぁ……はぁ……はぁ……………しんど!!!」



 背中には食料が入ったリュックに木製盾、前には歩く体力が無くなったチュチュをだっこし、私はヒィコラヒィコラいいながらヘルガーデン第2フロア、荒れたジャングルの中を進んでいく羽目になったのだった。



 「あぁしんど!」


 「………………………」


 「あ?なんか言ったか?」



 ──ぎゅぅぅぅぅぅ


 わざとらしく息を切らす私に、チュチュがなにか言ったような気がしたので聞き返したのだが、言葉の返事の代わりに弱々しい腕の力を最大限に使われただけだった。


 「暑いからやめろ!!!」


 


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