拘束されてアツいです。
ガラの悪い田舎のヤンキーみたいなウロコ蛇5匹。
フェルと同じ種族でありながらも、その中身はフェルとは大違い。
こいつらが誰かの何かを荒らしたらしいということしか分からなかった5匹の会話を聞き、どうでもいいのでスルーしようとした矢先、耳に飛び込んできた5匹の会話のつづき……
「全く、フェルのヤロー、惨めだなwww」
「それなwww」
「やめてあげろよ、お庭のお花はフェルの唯一のオトモダチなんだぜ?www」
「それをグチャグチャにしたのはどこのどいつだよwww」
「ハイハーイ、俺で〜すwww」
──プツンっ
私の中の何かが、音をたてて切れた。
「リリス……?」
私は勢いよく立ち上がり、ウロコ蛇たちの前へ姿を現した。
「おい、てめぇら……」
女の声で、思っていたよりは低い声にはならなかったが、それでも私は怒りに震えた低いトーンでそう言った。
「あ?」
「ぁあ?」
「んだこいつ?」
「なにって、カワイイ女の子だろ?www」
「それなwww」
しかし、そんな私の怒りなど微塵も感じとらず、耳障りな笑い声をあげている。
「てめぇら、さっき何つった?」
ウロコ蛇たちの態度に更に苛立ったが、1度ぐっと堪え、尋き返す。
「おいおい、てめぇらしずかにしろよ、カワイイ女の子が何か言ってるぜ?www」
「おじょーちゃん、何かなぁ?www」
「俺たちが遊んであげようか?www」
「って言っても、おじょーちゃんらが考えているようなお遊びじゃねぇぜ?www」
「それな、もっといいことだよwww」
クソがッ!
「てめぇらな!!!ふざけんな、私の友達フェr★△o!*இ?」
熱くなった私の中のマグマが噴火したが、思わぬ形で噴火口にフタをされてしまった。
またしてもチュチュが私の口を塞いだのだ。
はぁ!?チュチュ、何しやがる!?
私はモゴモゴ言いながら、背中に貼り付き、両足を腰に回してきたチュチュを振り払おうとした。
その様子がおかしかったのか、ウロコ蛇たちは涙を流して大笑いしている。
すっげぇムカつくし、うるせぇ!
ってか、離せチュチュ!!!
「→?✡✘♞※♂!!!」
「リリス、今ここでフェルの名前出したら、フェルが逆恨みされる」
チュチュが私の耳元で囁いた。
その言葉で私はハッとなり動きを止めたところで、チュチュは私を解放した。
そうだ、頭を冷やして冷静になれ。
ここで私がフェルの名前を出して暴れたら、こいつらは絶対フェルを逆恨みして、またフェルに危害が及ぶだけだ。
自己満足のために友を危険に晒すな。
落ち着け、私。
深呼吸、すーはー……よし。
「私ら、急ぐんで、じゃ」
そう言って私たちはウロコ蛇たちをやり過ごそうとしたが、やはりというべきか……
「まぁ待ちなって」
ウロコ蛇の1匹が私の体に巻き付いてきた。
「離せって」
私は巻き付いてきた蛇を振り払おうとするが、まるで縄で縛られてしまった時のように身動き取れない。
「へぇ〜なかなかいい面してんじゃねぇか」
ウロコ蛇は、細い舌を何度も出し入れして、悪寒のする顔を近づけてきた。
「リリス……」
隣でチュチュも、別のウロコ蛇に拘束されていた。
残りの3匹も、私たちをなめ回すような目つきで見てくる。
タラリとこめかみ辺りに汗が1筋流れた。
この暑さの中で、体からは汗が吹き出すが、ウロコ蛇と体が密着しているため、汗が上手く蒸発できず、ムレてきて気持ち悪い。
──しゅるるるっ
「ひっ……!!?」
耳元で蛇の舌なめずりの音がしたかと思うと、頬に何かペトリと一瞬だけ触れ、頬の狭い部分が濡れた。
そして、頬の湿りはすぐに蒸発し、気化熱によって熱を奪っていく。
体の熱さとは正反対に、頬にはヒンヤリとした気持ち悪さが残った。
「ほれほれ、だんだん体が熱くなってきただろ?
もっと熱くなれよ、ほれ、ほれ〜」
ウロコ蛇がぎゅうぅぅっと、私の体をさらに強く締め付ける。
「……んなに……」
「ん?なんだ、おじょーちゃん、やる気になってきたか?」
「そんなに熱いのがいいなら、てめぇだけ熱くなってろ!」
湧き上がる怒りを熱に変えるイメージで、ウロコ蛇の全身としっかり密着した私の体に神経を集中させた。
そして、Lv2になってから初めて使うあのスキルを、熱量マックスで発動させる!
「“我ここに望む 全てを我の手の中に この温度を上げよ”!!!」




