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地獄の庭のウロコ蛇。


 1週間分しかない貴重な水。

 およそ500ml入りペットボトル7本分。

 その1本目を使い果たした。


 3分の2は私とチュチュの飲料水として。

 水分を吐き出してしまった私たちには、その補給が必要だったからね。

 それでチュチュは助かったのかって?

 あぁ、水も飲ませたし大丈夫だろ。

 体力が大幅に減って、今はまるで死んだかのように眠っているがな。

 冒険者カードを確認したらただでさえ少ない体力値が7になってやがった。

 おかげで私が自動的に見まわり番ってわけ。

 

 それと、冒険者カードの魔力値も少し減っていた。

 これは恐らく、私を探すために「感知(2)」を使いまくったのだろう。



【リップ・チュチュ】

 女 12歳

 LV2

 魔法適性:水・雷

 体力:7/22

 魔力:6870/6890

 筋力:5

 敏捷:110

 物防:14

 免疫:13

 魔耐:29

 幸運:30

 スキル:【『鑑定(3)』『真顔』『攻めの姿勢(2)』『ショック(1)』『感知(2)』】

 このスキルを習得しますか?

《魔法力高めココアフロート系女子》

チーム所持金:500コレイ



 「さて、これからどうするかな」


 孤独死草の毒もすっかり抜けて(チュチュに吸い出され)、調子が戻った私としては、一刻も早く先へ進みたい。

 しかし、それにはまずチュチュの体力が回復してからだ。


 「ま、あいつの体力値マックスっつっても22しかないんだし、ちょっと寝てればすぐにm……」


【リップ・チュチュ】

 女 12歳

 LV2

 魔法適性:水・雷

 体力:4/22

 魔力:6870/6890

 筋力:5

 敏捷:110

 物防:14

 免疫:13

 魔耐:29

 幸運:30

 スキル:【『鑑定(3)』『真顔』『攻めの姿勢(2)』『ショック(1)』『感知(2)』】

 このスキルを習得しますか?

《魔法力高めココアフロート系女子》

チーム所持金:500コレイ



 「ん?」


 どうしたんだ、たしかさっき見た時、体力値は7だったはず。

 水も飲ませたし、寝かせていれば治るんじゃないのか!?


 「くそ!孤独死草の毒を解毒しなきゃダメなのかっ。

 私の時はすぐに吸い出したから良かったっぽいけど、あれから結構時間が経っている。

 吸い出すのは不可能……

 となれば、薬草!」 

 

 私はどこもかしこも同じような植物で作られた壁や地面をきょろきょろと見回す。


 「ああ!全ッ然わかんねぇ!全部同じに見えるっ!薬草ってどんな形してるんだ!?」


 髪の毛をかきむしるが、持っていない知識をいくら引っ張りだそうとしても無いものは無い。


 「あの……」


 「なに!」


 打つ手がなくて苛ついていた私は、声のした方向を睨みつけてしまった。

 するとそこには、黒帽子に蝶ネクタイ、ジャケットの裾からのぞかせた尻尾は魚のようなウロコをもった蛇が申し訳なさそうにとぐろを巻いていた。


 「いっ、いえ……」


 「今忙しいんだ、用なら後にしてくれ!」


 なんとまぁ弱そうな奴だ。

 弱肉強食の迷宮においてまさしく弱肉の方に分類される、私にとってもかっこうの獲物と言ったところだろうが、今は相手をしている場合ではない。


 見逃してやったにも関わらず、蛇はまだ何か言いたそうにこちらの様子をうかがっている。


 「あの……」


 「ああもう、なに!」


 「ヒィッ……あの、お困りの様ですが……」


 「ああ見てわかるだろ」


 「薬草をお探しのようで……」


 「そうだよ!」


 「どういった薬草をお探しでしょうか……」


 「孤独死草の毒を解毒する薬草だよ!どこにあんのか、知らなさそうだ。知らねえよな、知ってるか?」


 「ええ、知っています」


 「だよなぁ……蛇が薬草に詳しいわけn……って、知ってんのかよ!」


 私が蛇にその蛇の両肩に掴みかかると、蛇は肩がないのでちょうど首を絞めるかたちとなってしまった。


 「どこだ!その薬草は!」


 「うぐるしゅぅぅぅ……」


 「あぁ、悪い」


 蛇が今にも泡を吹きそうだったので、私は慌てて両手を離した。


 蛇はぜーぜーいって呼吸を整えてからふぅ、っと落ち着きを取り戻した。


 「わ、わたくしの拠点にございます。

 その薬草は、“乗り切れ草”と言いまして、それはそれは鮮やかなオレンジ色の花を咲かせ、花言葉は、希望、鋼の精神力、不撓不屈。孤独死草の毒の他にも自殺死草、投げ出し草、泣き草にも効果があr……」


 「そんな事はいいから案内しろ!」


 「は、はいぃぃ〜!!」


 私は一旦、チュチュの元へと戻るとその細腕を肩に回し、言葉を話す蛇のあとへと続いていった。


 「ん?お前、人間の言葉がしゃべれるのか!?」


 「え、えぇ。ここらではそんな事は珍しくもありませんよ」


 今さら驚く私に、蛇はヘルガーデンの入り組んだ狭い道をスイスイ進みながら平然と答える。

 地図もなくこんな複雑で似たような道を進むのに何の迷いも無いなんて、こいつ何者だ……?

 

 そんな私の不審に思う気持ちを察したのか、


 「申し遅れました、私はフェルと申します。代々ここの迷宮、第1フロアの庭を守るものとして妹と家を継いでまいりました」


 「ふーん。だから薬草にも、この迷宮の道にも詳しいってわけか」


 「さようでございます。

 さぁ、ここが私の拠点です」



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