見られると、恥ずかしさって倍増する。
……本日3度目の気絶アンド目覚め。
あ、いや1回目は死んだのだから気絶とは言わないか。
じゃあ目覚めの数だけカウントして、本日3度目。
もう慣れたものである。
何が慣れたのかよく分からないし、こんな事に慣れたくもないのだが。
だがしかし、こんな不快な目覚めは初めてだ。
体じゅう、ワームツムリの粘液でネチャネチャ。
ヒンヤリとしたネバネバが、じっとりと纏わりついてくる。
……ってか、息ができねぇ!
粘っこい粘液が顔を覆っているせいだ!
死ぬっ、死ぬ死ぬ!
転生して、わずか3時間弱にて死ぬ!!!
くっ……ダメだ、手足にも粘液が絡みついて上手く動けねぇ。
あ……視界が暗くなっていく。
ん?でも待てよ、ここでもう1度死んだなら、またあの鬼死女神の所へ飛ばされて、あいつを殴れるんじゃないか?
それにこの厄介な体と早くも、おさらばできるのでは?
だったらもう1度死ぬのもありかも〜……
……いや、いやいや!やっぱダメだ!死ぬのはダメだ!怖い、苦しい!誰か、誰か助けて……!
「……ぷはっ!」
ぜぇー、ぜぇー、ぜぇー、……
し、死ぬかと思った。
チュチュが粘液の膜を剥ぎ取ってくれなかったらマジで死んでた。
が、
「おい、チュチュ!
何いきなり粘液に突っ込んでくれちゃってるんだ!
危うく死にかけたぞ!?」
そもそもこいつのせいで今、私は死にかけたんだ。
危うく騙されるところだった。危ねえ危ねえ。
やっぱり3次元女はダメだ!
「……」
「何か言えよ!お前のせいd……」
言い争いを起こしている場合ではない。
なぜなら、今私の視界に映っている景色には、私とチュチュ以外の人がいたのだ。
街だ。
やった、やったぞ!
王都まで歩いて1週間はかかる場所から一気にテレポーテーション。
チュチュの言い方だと、運が良くなければ人の姿は拝めなかっただろう。
ふっ、私は日頃の行いが良いからな。
え?そうは思えない?
まてまて忘れちまったのか?
私の1人称がまだ××だった頃、道を尋ねてきたラテン系ゴリマッチョに優しくしてやったことを。
情けは人の為ならず。だな!
え、その後で道を尋ねてきた 女の人には冷たかった?
だってあいつ、アイツだろ?
鬼死女神、自称女神コレー。
あいつに親切を働かなければならないなら、私は喜んで死を受け入れよう。
それに、これまでにしでかしてくれた事を差し引いても、私は今、あいつを1発殴らなければなるまい。
なぜなら今、私たちの周りに人がいるのだ。
ここは、どうも王都と呼ばれるにしては錆びているが、人もいるし、集落もある。
おそらくどこかの小さな街だろう。
私たちは今、その街道のど真ん中にテレポーテーションしたため、街人たちの注目の的となっている。
テレポーテーション大成功!わーい!
なんて、手放しで喜んでもいられない。
なぜなら、あの鬼死女神が寄こした私たちの服は、薄手のワンピース。
しかも私はパステルピンク、チュチュはパステルブルー。
そして今、二人は粘液まみれ。
……何が言いたいかわかるな?
「あんの変態鬼死女神ぃぃぃい!」
パステルカラーのヒラヒラワンピースは、粘液の水分を吸い込んでへその位置が分かるほど透け透け。
しかもピッタリと体に貼りついているため、私のAカップの体のラインがクッキリ分かる。
いくら中身は男とはいえ、今この体は自分のもの。
恥ずかしいものは恥ずかしい。
生理現象として顔が熱くなるのを感じる。
あぁー死にたい!いや!死にたくはない!
いやしかし、チュチュは本物の女だ。
粘液まみれになると分かっていても、あのまま1週間の内にのたれ死ぬより生きる確率にかけた。
恥ずかしいだろうが、生きるために即決した彼女は、なんとたくましいのだろう。
中身が男の私でも、粘液まみれで服が透けているのが恥ずかくて丸くなっているのに、人前でチュチュは堂々とした姿勢で立っている。
……うん。たくましい。すごくたくましい。たくましすぎる!!
やめろ!こっちが恥ずかしいだろ!
「チュチュ、一時退却だ!」
遂に私は、この恥ずかしさに耐えられなくなり、人気の無い路地の方へと走り出した。