花粉症で孤独死しそう。
汚い描写注意です。
目を開ければ、またあの鬼死女神コレーがいるだろうか?
私はあいつを1000発、殴らなくてはいけない。
その目標は、早くも達成できそうだが、できれば第2の人生を全うし、男に戻る方法を突き止めてからが良かったな。
ふわふわとした意識の中、私はそんなことを考えたいた。
そして死んだからだろうか、意識がはっきりしてきた。
死んだから意識がはっきりするとは、なんともおかしな考えだが、経験者は語るだ。
意識がはっきりするにつれ、感覚神経も目覚めてきた。
なんだか身に覚えのある柔らかい感触。
口を口で塞がれたあの夜と同じ感触……
……とは少し違うようだ。
口の中に吸引器を突っ込んで、吸われている感じ。
しかも鼻がつままれている。
そのうち肺が酸素を求め、悲鳴を上げた。
苦しさで目覚めた私はパチッと音がするほどの勢いで瞼を開くと、目の前には見覚えのある水色。
(チュチュ!?)
それは私と逸れたはずのチュチュだった。
チュチュが私の鼻をつまみ、口から空気を吸い出している。
驚きのあまり、私は一瞬固まったが、すぐに酸素を求めて暴れだし、チュチュの唇を引き剥がした。
「ぷはっ!ぜー……ぜー……ぜー………………ち、窒息死するかと思った……」
呼吸を整え落ち着くと、私は消えたはずのチュチュを確認する。
チュチュは何も言わず、相変わらずの無表情で座り込んでいた。
女嫌いの私は、チュチュと逸れ、迷宮の真ん中で孤独死しそうになり、そしてまたチュチュと生きて再会できたことに少なからず喜びを覚えた。
「おいチュチュ!勝手に私に触るなと言っただろ!しかもキスしてんじゃねーよ!っつーか、今までどこにいた?どうやって私を探した?あのオバケ食虫植物は何だ?」
安心した途端、自分でも驚くほどよく口が回った。
だが、口をついて出てくる言葉はやっぱり悪態ばかり。
さっきまでのネガティブ自己嫌悪はどこへやら。
気がつくと気分も回復していた。
「勝手にいなくなるしまったく。
ほんとーにお前はd……」
──パタ……
「え?」
私が気分よくペラペラと悪態を並べている目の前で、チュチュが青白い顔をさらに青くして倒れた。
「おい……どうした!?」
チュチュの肩を揺さぶり起こす。
「リリス……あれ……」
消え入りそうな声のチュチュは、細い指をヘルガーデンの壁に向ける。
そしてそこにあったのは、紫色の小さな花。
その花は鈴蘭の花のように傘の形をしており、傘の中から花粉だろうか?絶えず青紫色の粉が出ていた。
「げっ、私花粉症なんだよな。
持ってるのはブタ草のアレルギーだけど、あんなに花粉吸い込んだらあの花の花粉症にもなっちまいそうだぜ」
片手で鼻をつまみ、もう片方の手で降り注ぐ花粉を手のひらに載せた。
すると、チュチュがその花粉を叩き落とすように私の手のひらを払った。
「なんだ?お前も花粉症n……」
「孤独死草。花粉は毒。吸い込んだ者は気分が落ち込み、身動きが取れなくなっている間に毒が回る。直接的な致死性は無いが、放っておけば衰弱死する……」
「早くそれを言え!」
チュチュの「鑑定(3)」の結果を聞いた私は大慌てでその花から遠ざかろうとする。
が、2、3歩のところで急停止し、地面に倒れ込むチュチュの腕を自分の肩に回した。
「リリス……?」
「今だけだからな!
本当は3次元女とこんなに密着するなんて反吐が出そうなんだ」
考えてみれば自分からこんなにチュチュに接近したのは初めてだ。
いつもはチュチュの方から迫ってくるか物理的な不可抗力によるものばかりだったからな。
だがこうして担いでみると、チュチュの体の軽いこと軽いこと。
女だからだとか、まだ幼いからだとか、そんな話ではない。
つかんだ腕も、力加減を間違えればポキンといってしまいそうだ。
それはもうミズタマ戦で骨折しなかったのが不思議なくらいに。
だからこの12歳の幼女の体でも楽々、同い年の幼女を担いで走ることができた。
(にしても何でこんなにガリガリなんだ?
私と初めて会った時からだよな……
もしかしてこいつ、元々は超貧乏だったとかか?)
「なぁ、おまえってもしかしt……」
「……リリ、ス」
「あ?」
「吐きそう」
肩越しに振り返ると、その言葉に青ざめた私よりも青い顔がそこにはあった。
「ちょっ!おまっ、ここではヤメろ!まて、すぐ降ろすから!」
「うっ……うえぇっ」
「やめてぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!」




