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ヘルガーデン行き、お願いしまーす!


「お1人様500コレイ頂戴いたします」


 にこやかに告げる職員のお姉さん。


 「ん?」


 「ヘルガーデンまでの転送料、お1人様につき500コレイ頂戴いたします」


 もう1度、職員のお姉さんはそう告げた。


 まじか、依頼を受けて転送されるのに金取るのか。

 まぁ、仕事行くのに電車乗ったりバスに乗ったりすると運賃取られるもんな、考えてみれば当たり前だ。


 「あ、はい……じゃあ2人分で1000コレイ、これでお願いします」


 「はい。確かに、頂戴いたしました。

 ところでリリスさん、本当によろしいのですか?」


 「え、何がですか?」


 「リリスさんたちのLvではまだヘルガーデンは……」


 「あぁ、それはなんとかなると思うんで大丈夫です」


 呪いのことがあって先を急ぐ私には、Lvがどうとか言ってられないのだからね。


 「それにもしかして、ご存知ありませんか?」


 ん、なんのことだ?

 依頼のことだろうか?

 私たちが受けた依頼クエストは、“ヘルガーデン迷宮、最奥のブドウを1房採取願い。お礼金5000コレイ以上”。

 ただの果物狩りだ。

 いや待てよ、もしかしてこの世界においても今はブドウの時期じゃないとか!?


 「あの、もしかして今ってブドウは季節外れとかですか……?」


 「いえ、ヘルガーデンは四季折々、ありとあらゆる草花や果物が生育しておりますので、その点は問題ないかと。

 私が心配しているのは、迷宮のシステムについてです」


 「迷宮のシステム?」


 「はい。

 ローリアビテの8つの迷宮に生息する魔獣たちは、冒険者のLvが高ければ高いほど襲い掛かってきます。

 それにヘルガーデンの第3フロアからは道が変化するので地図が無く、その変化は冒険者のLvが高いほど難しい道になるそうです。

 なので、Lvが高ければ高いほど、迷宮は難解となるシステムとなっています」


 「だったら、逆に好都合じゃないですか?

 だって私たちのLvはまだ2だし。

 Lvの低い方が攻略しやすいとか、なんだか矛盾している気がしますけど、そういうことでしょ?」


 しかし、職員さんは首を縦には振らなかった。


 「いいえ、もちろん迷宮については様々な難易度の依頼が集まりますから、様々なLvの冒険者さんたちも迷宮に向かいます。

 その中にはもちろんLvの低い冒険者さんたちもいて、その中には、マグレでも最奥まで辿り着いた冒険者さん方もいらっしゃいます」


 「それなら……」


 「ですが、迷宮の最奥にたどり着いて生きて帰ってきた冒険者さんはいらっしゃいません。

 みなさん、半年ほど前から迷宮の最奥に住み着いたモンスターによって殺されてしまうのです。

 運良く命からがら最奥から脱出できた冒険者さんたちも、迷宮の途中で力尽き、戻ってきた人はいません」


 伏目がちに語っていた職員さんは、さらに声まで低くしてそう語った。

 ギルド内に、重苦しい空気が流れた。


 ……って、おい!

 今それ言うか!?


 その“Lvの低い冒険者”に該当する私たちに“たどり着いたら殺される、迷宮の最奥”の情報を今入れるのか!?


 なんつー女だ。

 どうしてくれんだよ、この空気!

 向こうの方に座っている見知らぬ冒険者さんたちの哀れみの視線が痛いよ!


 「けど……」


 けど、そうだ。

 それでも私は行かなければならない。

 

 なぜなら、私の呪いを解くカギは迷宮の最奥にのみ存在し、それゆえ私はそこへ向かう運命からは逃れられないのだから。


 それに、迷宮のモンスターはロリっ娘だ。

 もともと女が野蛮なことは百も承知。

 今さらそのロリモンスターが冒険者を喰らおうが殺そうが、驚くことはない。


 「大丈夫です。

 必ず生きて迷宮最奥のブドウ、採取してきます!」


 半分は職員さんに、残り半分は自分のために、私はギルドにいる冒険者全員に聞こえるように高々と、ヘルガーデン出発の意気込みを宣言したのだった。


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