いざ発動、ドレインタッチ!
私はカレンに揺すり起こされた。
「リリス!よかったぁー気がついた!
ごめんね、ちょっと吸いすぎたみたい。
リリスの魔力値はまだ聞いていなかったわ、リリスの魔力値はいくつ?」
起きがけにいきなり質問攻めをされた私の頭はまだボンヤリとしている。
「えっと……な、なに?」
「だぁから、リリスの魔力はどのくらいあるの?」
確か、私の魔力値は……
「100……けど、昨日使いまくったから残りは42」
「そうだったの!ごめんなさい。
私てっきり……」
そこまで言いかけると、カレンは言葉を呑み込んだ。
いや、最後まで言ってもらって構わないよ。
むしろ気を遣われると逆に悲しくなる。
「えっと、とにかく!今のが『ドレインタッチ』よ。
やってみて!」
いや、やってみて!
って言われても……
私は初心者だし、魔法の扱いに長けているダークエルフとは違ってそんないきなりホイホイできるようになるものではない。
「カレン、初心者はまだ魔法の扱いに慣れていない。
だから無詠唱は無理だ。
まずは『ドレインタッチ』の呪文から教えてやれ」
アーティ、ナイスフォロー。
そっかぁ!って、カレン先生……大丈夫か?
「じゃあ、『ドレインタッチ』の呪文を唱えてやってみるわね」
そう言ってまた私の肩に手を乗せたカレン。
「まってまって!」
「どうしたの?そんなに慌てて」
いや、どうしたの?じゃなくて。
「また魔力吸われたら私もう保たないし!」
「それもそうね!」
あ……この先生、ハズレなやつだ。
生徒の身の安全を第一に考えて教育を施すという教育者の心得を全く理解していない。
今更気がついても遅いのだけれど……
「じゃあ、私の魔力を分け与える方をやってみるわね!」
「え、そんなこともできるの?」
「ええ、だけどLv5からね」
さらりと当たり前のように答えるカレン。
なんだか、質問したこっちが恥ずかしくなる。
そしてまたカレンは私の肩に手を乗せた。
そして、自分の魔力を相手に分け与える方向の「ドレインタッチ」を発動させる。
「“我のもつもの 分かちたまえ 吸収せよ 我のものは彼のもの”」
するとどうだろうか。
先程までぼーっとしていた頭がみるみるうちに冴え渡り、力が漲ってきた。
今ならどんな魔物とでもやり合える気がする。
「これが分け与える方の『ドレインタッチ』よ。
逆にさっきみたいに、相手から魔力を吸い取りたい時は、“彼”と“我”を逆に唱えればいいわ」
適当なところでカレンは私の肩から手を離す。
「今のでリリスは、『ドレインタッチ』を学習したはずよ
冒険者カードをみてみて!」
カレンに言われるまま、冒険者カードを見てみると、“このスキルを習得しますか?”の欄に、「ドレインタッチ(1)」とあった。
「おぉ!すげぇ!
カレン、サンキューな!」
私に感謝を述べられ、カレンはとても満足そうだ。
私はもちろん、「ドレインタッチ(1)」を習得した。
「『ドレインタッチ(1)』は魔力の吸収しかできないけれど、(5)になれば与えることもできるようになるし、もっとスキルレベルを上げれば体力も吸収したり与えたりできるようになるから!」
「まじか!『ドレインタッチ』すげー!」
「それに、アーティくらいの使い手になってくると、離れた相手にも『ドレインタッチ』ができるようになるわ。
だから離れた敵を攻撃することだってできるのよ」
「それだけじゃない」
さっきまで噴水の段差に腰掛けて私たちの特訓を傍観していたアーティが入ってきた。
「スキルレベルが上がれば上がるほど強力な吸収力や供与力を得る。
だから物体を隔てたドレインタッチができたり、一時的に自分の限界魔力値を越えて魔力を保持することだってできる」
「な、なんですとぉ!?
ドレインタッチ、チートスキルじゃねぇか……!」
一時的な限界魔力値の突破。
それは、魔力値の低い私には朗報だ。
「まぁ、スキルレベルの低いうちは使いにくいかもしれないけど、可愛がってあげれば大器晩成する子だから。
と、いうわけで私たちが今のリリスに教えてあげられるのはここまでよ。
あとは実践あるのみ!
というわけで、さぁリリス!
私の魔力をぐんぐん吸い取っちゃいなさい!」
「おうよ!」
なんだか一気にテンションあがってきた!
この勢いのように、私の「ドレインタッチ」でカレンの魔力を吸いとっちまうぜ!
「“彼のもつもの 分かちたまえ 吸収せよ 彼のものは我のもの”!」
すると……




