ダークエルフと闇系統魔法と。
【カレン】
ダークエルフ。
アーティと一緒にいるとても元気な女の子。
「んもう、アーティったら、私を置いて行っちゃうなんて、ひどぉーい」
「カレン!羽と耳は隠せとあれだけいっt……」
「だってアーティったら、急に走り出しちゃうんですもの。こんな入り組んだ道で見失ったら、追いつけないわ」
えっとぉ……
この子、本当にダークエルフか?
私の中のダークエルフのイメージとかなり違うのだが。
私のダークエルフは、こんな明るいキャラクターではなく、クールで、エルフと対立するどちらかと言えば悪役キャラ。
強力な闇系統魔法で呪いや禁断の魔法を操り、その存在自体が危険視される。
「とにかく、ちゃんとフードを被れ」
「どうせならもっと可愛いマントが良かったわ」
しかし今、目の前にいるこの子はキャピキャピと言葉を連射し、弾ける笑顔が親しみと愛嬌を感じさせる愛されキャラ。
うーん。もしかしたら、この子はダークエルフじゃないのかもしれない。
「ところで、こっちの女の子はだぁれ?
私はカレン。ダークエルフよ。
こっちはアーティ、可愛いでしょう」
「カレン!」
はいっ、自分で名乗ってくれちゃいましたよ間違いないこの子はダークエルフだ。
そして、私を助けてくれたこの少年はアーティという名前らしい。
「わ、私はユリ・リリス。駆け出し冒険者です」
「よろしくね、リリス!」
カレンは私の両手を掴むと、大きく上下に振りながら私と握手した。
そして次に、私はアーティと握手するのかと思った。
カレンと入れ替わるようにしてアーティが私に近づいてきたからだ。
しかし、アーティは握手の距離を通り越して、私の体をグイッと引き、顔を私の耳元に近づけた。
「カレンがダークエルフだという事は誰にも言うな。
もし誰かに言ったなら、お前の命は無いと思え」
小声でとんでもない威圧感。
私は黙って首を縦に振ることしかできなかった。
「まぁ、アーティったら。
ご挨拶にハグなんて、ふふっ、可愛い〜」
ハグではなく、脅されたのだが……
「ねぇ、リリスはこんな所で何をしているの?
もしかして依頼の最中だったかしら?」
「いや、ここへは考え事をしていたら迷い込んでしまっただけで、人さらいに捕まって危ないところをアーティに助けてもらったんだ」
「そうだったの!大変だったわね。
あっ、それがここに伸びている人たちってわけね。
アーティは私と同じ闇系統魔法の使い手で、とーっても強かったでしょ?」
本当に、よく回る舌だ。
私は麻袋に詰められていたので、アーティの戦いは直接目にすることはできなかったのだが、一瞬で人さらいを伸びさせているこの状況からしてその強さは明白だ。
「けど、うっかりこんな所に迷い込んでしまうほどの考え事なんて、タダ事じゃないわ。
いったい何をそんなに考え込んでいたの?」
「あぁ、それはスキル習得についt……」
「いっててて……」
その時、道の上に伸びていたゴリラが目を覚ました。
そして私たちに気がつくと、闘志を燃やした野生の目を向けてきた。
「てめー、よくもやってくれたなクソガキ!」
ゴリラの怒りがこもった低い声に怯む私。
だが、ゴリラの敵意は明らかにアーティに向けられている。
「まだ痛い目を見たいようだな。
無様に転がっている仲間二人を連れて逃げるのが得策だとは思うが」
「ナメんなよ!クソガキィィイ!」
そしてゴリラは、腰に下げていた短刀を抜き、アーティめがけて……ではなく、カレンに襲いかかってきた。
「きゃーっ!」
アーティに挑発されたゴリラは、卑怯にもカレンめがけて短刀を振りかざした。
体の肉に穴があき、赤い血液が路上に模様を描く。
だが、その血液は、カレンのものではなかった。
「貴様、カレンに手を出して生きていられるとでも思ったのか」
ゴリラの腹から黒いものが膨れ上がって破裂したのだ。
おそらく、これは闇系統の魔法。
そして、その闇系統魔法を発動させたのは、
「アーティ……私のために!」
獅子をも失神させる威圧感を放ち、冷たい双眸を光らせるアーティ。
その横で、カレンがアーティにメロメロしているが、私はその場の凍りついた空気に生唾を呑んだ。
今回のイラスト、時間がなくて超雑になり、もうしわけありません!




