ヘルガーデン
第二章 ヘルガーデン編
ローリアビテ。
この世界は、王都を頂上とし、ピラミッドの下段にそれぞれの系統魔法に特化した8つの大迷宮を形どる。
すなわち、火・水・土・風・木・雷・光・闇。
半年前それぞれの大迷宮の最奥には、各迷宮の系統魔法と同じ魔法を操るモンスターが住み着き、迷宮を支配した。
ヘルガーデン大迷宮に住み着いたモンスターもその1つ。
そのモンスターの姿をハッキリと見た者はいない。
だが最奥まで辿り着いた冒険者がいない訳ではない。
最奥まで辿り着き、モンスターに出会った冒険者は、二度と生きては戻らない、それだけだ。
だからモンスターの姿を見た者はいない。
ただ、ハッキリとその姿を見ていなくとも、モンスターの声や影を見聞きし、命からがら戻ってきた冒険者たちもいる。
そしてその冒険者たちは皆、モンスターについて口を揃えるようにしてこう言う。
──迷宮のモンスターは、幼い女の子である。
と。
今ここに、無謀にも迷宮の最奥に住みつくモンスターに挑まんとせん2人の冒険者がいる。
その名も、ユリ・リリスとリップ・チュチュ。
始まりの街、デビュールから2人が踏み出す第1歩目、
向かう先は木系統魔法の迷宮、「ヘルガーデン迷宮」
「ヘルガーデン迷宮」はモンスターが住みつく前は冒険者たちによって開拓し尽くされた迷宮である。
薬草や果物、木の実などが多く採れ、挑む冒険者が多かったからだ。
だからといって、決して易しい迷宮ではない。
ヘルガーデンの魔獣は木魔法で冒険者に襲いかかり、薬草となかなか区別がつかない猛毒草も生育する。
さらに最奥にモンスターが住みついた頃から魔獣が凶暴化し、猛毒草がその分布を広げている。
まさに地獄の庭。
だが、ヘルガーデンの最奥は、まるで天国のような空間が広がっている。
色とりどりの花々が咲き誇り、熟れた果実の甘い香りが花をくすぐる。
魔獣も穏やかで、ひらひらと舞う蝶々が平和を物語る。
そんな天国のような最奥のどこかに、1房のブドウのなる木がある。
赤々と、今にも零れそうなほど大粒の実は、ヘルガーデンの生命エネルギーが結晶化したものだとか。




