異世界転生2日目終了!
「あー、サッパリしたぁ」
チュチュの後、私も水浴びを終えて水車小屋の室内に戻る。
そこでハッとする。
(やべぇ……ジャンケンの件のせいでこの後どうするか考えるのすっかり忘れてたぁぁぁ!)
格子窓の隙間から漏れる青白い月明かり。
小麦色の藁さえも白く浮かび上がらせる妖しい光は私の記憶をありありと思い起こさせる。
(落ち着け私、考えろ)
まず、キスするパターン。
メリットは、私の胸の成長を食い止めることができる。
デメリットは、女とキスしなきゃならねぇという悪夢。
一方でキスしないパターン。
メリットとデメリットは、キスするパターンの真逆。
女とキスしなくて済むが、私の胸が成長してしまう。
(まてよ?
昨日仮にもキスしたんだし、今日しなくても大丈夫じゃねぇか?
そもそも1日サボったくらいでそこまで胸に影響ねぇだろ!)
ってことで今夜どうするか決まった。
今日はもうやめ!とっとと寝る。何があってもただ単に寝るだけだ!
チュチュに何言われようが襲われようが、今日の私の意思は固い!
妙に意気込んで水車小屋の室内に戻る。
が、私の決意は無駄だったようだ。
なぜなら、チュチュはもう既に藁の上でスヤスヤと寝息を立てていたからだ。
「ったく、勝手に先に寝るなよな」
まぁ、今日は仕方ないか。
なんせ、初依頼であれだけの死に目にあったんだ。
しかもチュチュにはかなり無理させた。
普通に飛び降りたなら、まず命は無い高さから金属チェーンを持って「ショック(1)」を発動させるという荒業。
「攻めの姿勢(1)」を発動させたのかさせていないのかは知らないが、どちらにしろ攻めすぎだ。
けれど、今回はそのおかげで助かった。
私ばかり攻撃してくるミズタマの目を自分に向けるため、黙って走り出した時は逃げたかと疑ったが……
「私、お前に酷ぇことばっか言ってたな」
眠るチュチュのそばで、起こさぬよう小声でつぶやく。
新しい服は安物で、ダボダボの袖は、激マズの晩メシを拭った汚れを洗い流したため濡れており、短いスカートからは、昼に私が見た、折れそうなほど細い足が傷だらけで放り出されている。
「ごめんな」
眠っているチュチュに、私の言葉は聞こえない。
だからこそ言えた、謝罪の言葉。
チュチュが起きていたなら、言えない言葉。
たった一言の謝罪すら、面と向かって言えねぇなんて、私ってほんとダメだな。
自分でも少し呆れる特性、女嫌い。
けど、私の信念は変わらない。
胸を張ってこれからも女嫌いを貫き通す。
それが私だから。女嫌いが私だから。
この世界に来てから、私は女嫌いの本領を発揮できていないと思う。
私の真骨頂を取り戻すためにも、はやく迷宮攻略してこんな世界とおさらばだ!
「よぉし!明日から迷宮攻略めざすぞ!
やってやらぁぁぁあ!」
私は心に固く誓って、深い深い眠りについた。