表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/264

ジャンケンってどうやって身につけたっけ?

 食べた気にならないまま夜は更け、私たちは例の水車小屋に帰ってきた。


 帰る場所があるというだけマシか。

 

 少ない妥協点を見つけながら、私は藁の上にドサリと倒れ込んだ。

 そして格子窓の隙間から漏れる月の青白い光に当たっていると、嫌な記憶が蘇る。


 そう、きっと私はこのあとチュチュとキスをする。

 前回はチュチュが殆ど不意打ちで襲ってきたから私は心の準備をしている暇がなかった。

 いや、心の準備とかそういう問題じゃないんだけど……


 とにかく!

 前回のように、チュチュにやられっぱなしなのは、なんかダメだ!

 かと言って今回はどうしようとか全然分かんないのだが……


 あぁもう!私はどうするのが正解なんだぁぁぁあ!

 

 「とりあえず、風呂だ!

 風呂って言っても、そこの水で体流すだけだが、何もしないよりマシだ。衛生面重要!

 というわけで、どっちが先に風呂行くか、ジャンケンすっぞ!」


 考えがまとまらないのは体がサッパリしていないせいだ。

 という結論にいったん逃げておき、私はチュチュにジャンケンをけしかける。


 「いくぞ、最初はg……」


 不思議そうに目を見開き、棒立ちのチュチュ。


 そうか、こいつ地球人じゃなかったな。

 ってことはジャンケンなんて知るわけねぇか。


 「よし。今後、風呂の順番などを決めるときには、私の文化であるジャンケンによって公平に勝負し、決定権を得ることとする。

 それにあたって、お前はジャンケンを習得する必要がある。

 って言っても、冒険者スキルとして獲得するものではない。

 今から私がジャンケンをレクチャーしてやるから1発で覚えろよ!いいな?」


 そうして私は、ジャンケンを教えることになった。


 「最初はグーから始めて、ポンの合図で以下3つのうち1つの手を出す。

 指を1本も立てず、拳にするのがグー。これは石を表す。

 んで、こうやって指を2本立てるとチョキ。これはハサミ。ハサミは……まぁ剣とかそういう類のもんだ。

 で、全部の指を開くこれがパー。これは紙。

 石は剣には強いけど、紙には丸め込まれてしまって何も見えなくなってしまう。

 けど、紙は剣によって切られるから、この三すくみが成立する。

 ジャンケンポイっ!の掛け声でこのうち1つの手を出し、相手より強いものが出たら勝ちとなり、お互い同じもが出たらあいこ。

 もう1度決着がつくまでジャンケンを続ける。

 わかったか?」


 我ながらなかなかわかりやすい説明だ。

 グーはチョキに勝ちパーには負ける。

 チョキとパーではチョキが強い。

 これさえ分かれば幼稚園児でもジャンケンポンっ!してる。

 

 「1度、紙に捕まった石はどうなっちゃうの?」


 知らねぇよそんな事。

 ジャンケンにそれ以上の詮索は不要だぞ。


 「それは、あれだ。捕まったままでないとな。

 負けは負け。石は紙には勝てない運命なんだよ」


 「ふーん」


 ふーん。て……

 口を尖らせるようなことか?


 「そんなことより、ジャンケンのルールは分かったな?

 それじゃあ、ジャーンケーン……」


 お先に水浴びをする権利を勝ち取るため、最初はグーをすっ飛ばす戦略でパーを出した私は……




 見事にチュチュのチョキに1発負けした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ