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日本じゃないって、異世界かよ!

 

 再び目が覚めると、目の前には青い空が広がっていた。


 そうか、やっぱりあれは夢だったんだ。


 空に太陽らしきものが何個か見える気がするがまだ寝ぼけているのだろう。

 太陽は空に1つあれば充分だ。

 サンサンと降り注ぐ日差しは周りの草原を青々と……それはもう、青々と……


 ん?

 草って、こんなに青色だったか?

 いや、青々とは言うけれども、普通は緑色だろ?

 まぁ、この世にはまだ××の知らないことがたくさんあるから、きっと本当に青色の草原もあるのだろう。


 それにしても、こうして大自然の草原の中で寝そべるのは何年ぶりだろうか?


 頬を撫でる爽やかな風。

 遠くの方で水が流れる音がする。

 右手に触れる、土と草の感触。

 左手に触れる、柔らかな手の感触……ん?


 「うわぁ!女!」


 最悪だ。

 目が覚めたら隣に女が転がっていて、そいつと××が手を繋いでいる!

 ……って、こいつはあの時の水色女!


 ってことは、××はまだ夢を……

 ……って!やっぱり××って言えねー!

 ××××詐欺!××強ぇ!××ガイル!カフェオレ!

 あ、カフェオレは言えるのね。


 頬を抓っても……いでっ!痛え!

 ダメだ、こりゃ夢なんかじゃない。

 現実の世界だ。


 うぉぉぉお!

 なんてこったぁぁぁあ!


 ××がそうこうしている間に、水色女はムクリと体を起こし、冷ややかな視線を××に浴びせてきた。

 やめろ!××を見るなぁぁあ!


 落ち着け、落ち着け××。

 ああもう!

 ××って言えねぇ!鬱陶しい!


 まぁそれは一旦置いておこう。

 話が進まねぇ。


 まず、状況整理!

 ここはどこだ!?

 妙に青い草原の中ど真ん中。

 それ以外は分かんねぇ。

 

 なぜこんな所にいる!?

 ……って、そうだ!

 あんの鬼死女神のヤローのせいで××はこんなところに!


 ってことは待てよ?

 あの鬼死女神、なんて言ってた?

 あいつの言ってた事を思い出してみよう。

 とてつもなく嫌だが、思い出してみよう。

 


 ──これからあんたは、日本じゃない世界でその命を女の子として転生させ、女嫌い克服のための荒療治をしてもらおうじゃないの!



 ……

 なんてこったぁぁぁあ!!!

 あいつ、本当にやりやがったぁぁあ!

 となると、ここは日本じゃない。

 アフリカか?ヨーロッパか?アジアか?

 クッソ、何にもわかんねぇ。


 あーもう!むしゃくしゃする!

 ……ん?髪長えな。

 長い間、散髪しなかったからな。

 まぁ、誰に会うでもないし金の無駄だと思って伸びっぱなしにしてたしな。

 

 掻きむしった頭から手を離すと、そこに絡みついてくるピンク色の細い束。

 ピンク色の……え?


 こ、これは!

 はっ……!

 

 腰に手を当てる。

 クビレ的なものがある。


 尻に手を当てる。

 丸みをおびている。

 

 両手を胸に手を当てる。

 や……やわらけぇ。


 「××、女になってやがるぅぅぅう!!!」

 

 って、なんだこの高い声!!!

 気持ちわりい!

 女の声だ。

 それもまだ幼い。


 「クソ!クソ!クソォー!あんの鬼死女神!!!1発殴らねぇと気がすまねぇ!!!」


 「どうしたの?」


 「どうしたもこうしたもあるか!あいつのせいで××の人生めちゃくちゃだ!」


 「そう」


 はっ……!

 絶望のあまり無意識に水色女と会話をしてしまった!

 なんたる不覚。


 だが待てよ?

 この水色女はあの鬼死女神の手先なら、ここがどこか知っているかもしれないし、あの鬼死女神の居場所も突き止められるかもしれない。


 「おい、水色女」


 「……」


 「ここはどこだ?」


 「……」


 「聞こえてんのか?ここはどこだ?あの鬼死女神はどこだ?」


 「……」


 ああん?

 こいつ、うんともすんとも言わないじゃねぇか。

 なんかボーッとしてるし、自分に話しかけられてるって分かってねぇのか?

 いや、流石に分かるだろ。

 ××とこいつしか周りに人いないし。

 

 ──この子は……そーね、リップ・チュチュ!チュチュって呼んであげて


 ……いや、まさかな。

 

 ××は、基本的に女の名前は覚えない。

 というより興味がないから覚えられない。

 だが、あの鬼死女神のネーミングセンスが無さすぎたおかげでインパクト大だ。

 不本意だが……本当は凄く不本意だが貴重な情報源だ。

 背に腹は替えられぬ。


 「チュチュ、ここはどこだ?」


 「ここはローリアビテ」


 はいビンゴー!

 まさか名前を呼ばないと返事しないとか、アンドロイドかこいつは。

 あと今、なんて言った?

 ローリアビテ?

 聞いたことないぞ?

 響き的にはヨーロッパ系な気がする。

 ヨーロッパ……日本は遠いな。

 どうやって帰ろうか?


 「はぁ……これからどうしたものか」


 いかんいかん。

 ため息をついたら幸せが逃げる。

 けど、こんな状況で、ため息の1つや2つ、つかなきゃやってられませんわ。

 

 「コレー様が言ってた。リリスは迷宮ダンジョン攻略を目指すって。それならまず、ここから1番近い街、王都へ行って冒険者登録するのがいいと思う」


 「へぇ〜」


 こいつは意外としっかりしてる子かもしれない。

 目的のために何をするべきかちゃんと分かっている。

 ……って、ん!?


 「まて、冒険者登録ってなんだ?」


 「冒険者登録は、冒険者たちが冒険者として生計を立てられるようにそれぞれの街や村で冒険者として登録すること。冒険者登録すると、依頼を効率よく受けられるようになったり、報酬が貰えたりする」


 うん、そういう答えを期待していたんじゃないのだが……


 「王都ってなんだ?」


 「ここから歩いて1週間くらいのところにある巨大都市。ローリアビテ最大級の商業都市でもあり、武具、防具、魔法道具、薬、服、食料、何でも揃う」


 うん、薄々感づいてはいた。

 だがスルーし続けていた。

 現実逃避し続けていた。


 ここは、地球じゃない。

 異世界だ。

 つまり、どんなに頑張っても××は日本へ帰れない!


 この際それはもういい。

 いや、良くないが。

 それよりも××にとっては聞き逃せない、確認しなくてはならない事がある。


 「リリスって誰だ?」


 「あなた」


 「……」


 ノォォォォォオ!!!

 

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