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最悪の晩餐。

汚い食事シーン注意です。


 私たちは買い物をすっかり終え、冒険者協同組合の支店を出た。


 私たちの今日の買い物リスト。


 ・軽量化魔術処方済みショートソード (60センチ)

 これに更にポンメルを付けた。

 5万コレイと1万コレイ


 ・木製バックラー (直径30センチ 丸型) 

 1万コレイ


 ・服1式(下着込み)、2人分で2万コレイ


 ・私たちの傷の治癒魔法料、4千コレイ


 ・冒険者登録料の借金返済に千コレイ


 よって、10万コレイからこれらを差し引いた私たちの手持ちは5千コレイ。


 5千円でこれからしばらく生活しなければならない。

 この先、思いやられる。

 

 「まっ、今日はいろいろ買うものあったし仕方ねぇな。

 今日のところは、晩メシ食ってさっさと帰ろうぜ」


 コクンと頷くチュチュ。

 なんか、あまりにもこいつが喋らないせいで、いつも私から話しかける感じになってしまっている。

 うーん、癪だ。

 

 それはそうと、夜ご飯。

 もうこれから作るのとか、やる気が起きねぇから軽食屋のような所で食べることにしよう。

 まぁ、そもそもあの水車小屋に調理器具やコンロなんかあるはずもないから調理なんかできないんだけどね。

 冒険者ギルドの奥のスペースが確か酒場みたいになっていたと思うから、今夜はそこでご馳走になるとしよう。




 「……まっず!」


 そして私の注文した何だかよく分からないパンは、セメントのような味がした。

 いや、セメントなんて噛じったことないから実際はわからないのだけれども、そんな感じがした。

 スープも、砂の入った海水に生魚を溶かしたみたいな味がする。


 「うぇぇ……こんなの食えるかよ。

 いくらこの酒場で1番安いメニューだからって、これは客に提供したらマズイだろ……」


 ぶつぶつ不満をたれながらも私は硬いパンにかぶりつく。


 チュチュも同じメニューを注文したが、パンが硬すぎて噛みきれないのか、テーブルにコツンコツンとパンを叩きつけている。


 「なぁ、そうやったら食えるか?」


 なんとなく、聞いてみた。


 叩き割った硬いパンの欠片をスープに浸し、シャリシャリとパンを食べ進めるチュチュは、私の質問に答える代わりに口を開けて咀嚼したパンだったものをボタリとこぼした。


 「汚えな!気持ちは分からんでもないが、だからって吐き出すな!」


 チュチュは買ったばかりの服の袖で口を拭うと、再びパンの欠片をスープに浸し、今度は鼻を摘みながらパンを呑み込んだ。


 異世界転生して、初めて食べた爺さんの丼ぶりは超絶美味かったが、2番目は最悪だな。

 しかも、これからはこういった食事になってしまうだろう。

 

 働かざるもの食うべからず。

 とは言うけれど、私たちちゃんと働いたぞ?

 いや、食ってるけど。もっとまともな食事にありついたって良いんじゃねぇか!?


 はぁ……

 日本にいた頃は、働かなくても美味い飯が出てきたし、腹が空かなくても時間になれば食べていたし、あの頃にもどりたい……


 それもこれも、全部あの鬼死女神のせいだ。

 ほんと、人を殺しておいて、しかも女に異世界転生させても尚飽き足らず、こんなひもじい思いまでさせるとは。

 

 硬いパンの欠片を激まずスープに浸し、鼻を摘んで、まだなお固い芯が残るパンを咀嚼しながら、涙目の瞳に強く強く、私の1つの目標を心で再確認した。


 ──あの鬼死女神を1000発殴る!


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