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百合ってロリって迷宮攻略!~女嫌いリリスの苦難~  作者: いおり
第三章 シャローム地下都市
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スノードロップの花言葉。


それから私たちは、このシャローム地下都市の復興作業に手を貸していた。

土や石でできた建物の復興作業はなかなか大変だ。これは、あとでギルドから別途給料を貰わなければ。


「つーか、アピスの情報は何だったんだよ。これじゃあ依頼品の“アピスのスキムミルク”はどーすりゃいいんだ? チュチュの治療費もかかるだろうし、私たちまだ一文無しだぞ……」


私がブツブツ言いながら瓦礫の撤去作業をつづけていると、向こうからカラパがやって来た。


「おうおう、若いの。精が出るね」


「婆さんも、そんなに元気そうなら手伝ってくれよな」


「あたしゃもう歳だよ。あんたんとこのネコの面倒を見るので精一杯さね」


「ああ、それは悪ぅございました。つーか、あいつまだ目が覚めないのか?」


「半年も負の感情に侵され続けたんだ。そうそう目覚めるもんじゃないだろう」


「……確かに」


シュリギットとの戦いの最中、シヴァに“妖精の粉”を使わせ、ゴーレム人形の塔の最上階へ行かせた。

そして、シヴァは塔のシステムを破壊し、負の感情を吸収する核となっていた奴を救出した。それが、


「ねぇ、レアって子は本当にボク達と姉妹なの?」


へなちょこシヴァは、瓦礫の撤去作業に疲れきったのか、それなのに魔力だけは余っているらしく……あ、こいつの花咲かジジイ体質は種族、フェアリーによるものか。まぁ、とりあえず瓦礫に花を咲かせて寝転んでいた。


「おいシヴァ、サボるな。仕事しろ」


「早く目が覚めるといいんだけど」


「おいコラ無視すんな」


と、そこへ今日ももケバケバメイクのクジャナとその弟、クジャトがやって来た。


「リリス、大ニュースですわ!」


「おう、クジャト。元気か?」


「私には聞いてくださらないの!?」


「……いや、普通に元気そうだって分かるから。それより大ニュースって何だ?」


「それなんですけど、数年ぶりにアピスが現れたんですよ」


「なにぃ!?」


アピスは普通の牛に乗り移ると、その牛はスキムミルクを出すようになる。

かつてはシャローム地下都市に頻繁に現れ、平和と繁栄の神の使者とされてきた。

けれど、半年くらい前からその出現情報は途絶え、私たちの依頼である“アピスのスキムミルク”をどう入手しようかと頭を悩ませていたところだった。


「よし、シヴァ仕事だ。依頼品のスキムミルクを入手しに走るぞ!」


「ええー、走るの?」


「グズグズしてるとまたアピスがどこかへ行っちまうかもしれねぇからな。もし逃げられたら一ヶ月は食費も無いと思え!」


私たちはクジャナ達の案内で、アピスの元へと向かった。




途中でへばったシヴァをクジャトの背中に乗せて私たちは小さな牧場へとやって来た。


「やあ、リリスさん。ピタポケット食べるかい?」


「あれ? 屋台のとこの……なんでこんな所にいるんだ?」


「ここはうちの家畜牧場でね。アピスはうちの牛に乗り移ったんだよ」


タヌキが牛を飼っているとはなかなか異様な光景だが、ケモノ族とケモノは別物なのは見てわかる。


「そうなのか。じゃあちょっとお前に頼みたいことがあるんだけど……」


「分かっているよ。スキムミルクだろ? この瓶に入れて持って行くといい」


タヌキの店主は私に小瓶を渡してくれた。


「おう、サンキューな。んじゃ、ちょっと失礼して……」


「モー」


……ウシって顔の割に迫力あるよな。つーか、私、ウシの乳搾りなんかやった事ねーけど、どうやるんだ? テキトーに握ればいいのか?


「モーーー!」


「ええっ!? なんかこいつ、機嫌悪いぞ?」


「君がしかめっ面してるから嫌がってるんだよ」


「私のせいだって言うのかよ? だったらシヴァ、お前がやれ。お前、動物としゃべれるんだし」


「えー、ボク疲れたよ」


お前はクジャトの背中に乗っていただけだろーが。


「いいから、やれ!」


「モーーー」


シヴァを引きずり、ウシの下まで引っ張る。


「しかたないなぁ……」


シヴァは瓶を片手に、アピスのスキムミルクを搾り出した。


「………」


「………」


「………」


「………」


「………なぁ、アピスなんか言ってるか?」


「ん? なんで?」


「いや、なんかウシを見ているとついつい……」


おしゃべりな女を思い出す。


「あー……けど、この子は何も言わないね。ボクが通訳するから、お話してみる?」


「手を動かしながらなら通訳することを許可する」


「……なんでそんなに上から目線なの? まぁいいけど」


「じゃあ、なんで今まで姿を現さなかったのか聞いてくれ」


「だってさ」


「って、私の言葉はアピスに分かるのかよ!」


そう言えば、クマ子の時も、クマ子は人間の言葉が分かっていた。もしも声帯が発達していたなら、クマ子もウシも、ペラペラと言葉を話すようになるのかもしれない。

そうなると、ケモノ族とケモノの違いってどうなるんだ?

まぁ、そんな仮定の話はどうでもいいか。


「モーモーモー」


「えっとね、“あたしはずっとここにいたんだけどなぁ”。だって」


「は? どういうことだそれ」


「モーモーモーモー」


「半年前のアピスは死んじゃって、今このアピスは新しいアピスなんだって」


ん? つまり、こいつは二代目アピスということか?


「モーモーモーモーモー。モーモー」


「“春の訪れの名前をつけてくれたおかげであたしは生まれました。ありがとね”。だって」


「は? 意味わかんねぇぞ。シヴァお前、デタラメ言ってんじゃねーのか?」


「言ってないよぉ。あ、はいコレ。スキムミルク、とれたよ」


瓶には乳白色の、サラサラの粉が詰められた。


「よし。んじゃ一旦チュチュの所へ行ってコレを預けよう。そしたらまた瓦礫の撤去作業を手伝うぞ」


「えー、まだやるの? ボクもう疲れたよぉ」


こんの軟弱ロリめ。

つーか、チュチュは大怪我。レアは目覚めない。シヴァは軟弱。ほんと使えねぇー姉妹め!


「んじゃ分かったよ。お前はチュチュにこれを届けて一緒に寝てろ。夕方には帰るから」


「うん。分かった、気をつけてね」


お前に気をつけて言われると余計に心配になるんだが……




「モー」


「じゃあねー、アピス。スキムミルクありがとうー」


依頼品をあっさり入手出来た私たち。

私はシャローム地下都市の復興作業の手伝いへ。

シヴァはスキムミルクを持ってシヴァのもとへ。

クジャトとクジャナは自分の家へと帰っていった。



「モーモーモー」


スノードロップの花言葉は希望。

それは遥か昔、冬の寒さを知らなかった二人の冒険者たちが寒さで絶望を感じていた時に、女神が舞降る雪をスノードロップに変えて、“もうすぐ新しい命が生まれる春がやって来るから希望を持ってね”と言ったからだとか。



お絵描きしたい衝動に駆られて、シャローム地下都市のロリモン、レアたん描いたああああ!!!

Twitterにアップしてあるからぜひ見てみてください♪

Twitter垢▶

庵 仁娯@小説家になろう 「レア」

https://twitter.com/cPd3MIrvIF3iM9D/status/966164456483909632

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