どっちから殺られたい?
「やったか!?」
魔力およそ15といったところか。
チュチュの“雷鳴”がショシャナットにクリーンヒット。
強烈なフラッシュに目がまだ痛い。
……殺っただろう。
私たちは、シャローム地下都市の偽せ平和の守護者、ゴーレム人形ショシャナットの破壊に成功した。
かに思えた。
「チッ……フラグなんて建てるんじゃなかった」
放射状に黒焦げとなった地面の真ん中は凹み、その中心から乳白色の髪が輝いた。
「もう、危ないなぁ。あたしが土で出来てたから良かったものの、あんな破壊力のある雷をマトモな人間がくらったら、ひとたまりもないよ」
そうだ、ぬかった。
土属性は雷属性に強い。戦闘において属性による効果を考えるなんて、基本中の基本じゃねぇか!
「さてと、そろそろ決着をつけないとね。あたしは平和主義者なんだから」
ええっと、土に強い属性ってなんだっけ!? 水か!? ああでもその法則ってローリアビテの魔法にも通用するのか!?
ってかそもそも水属性の魔法が使える奴なんて、私たちのチームにはいねぇし! (適性ある奴は二人もいるのに!)
「そっちはもう魔力スッカラカンなんだよね? だったらあんまり一方的になるのも可哀想だしなぁ。苦しいのは嫌だもんね? 分かる分かる。じゃあ、一瞬で終わらせよっか。大丈夫、痛くしないから」
どうする!?
ショシャナットの言う通り、もう私もチュチュも、魔力は0。
肉弾戦をするにしても苦しい。
チュチュはパワーブースターも使えないから、逃げも隠れもできない。
「えっとぉー……それで、どっちから殺られたい?」
どちらにしようかな、と私とチュチュを交互に指差しながら舌なめずりをする捕食者。
ケモノの本能的に、こういった場面では確実にモノにできる方を狩る。
「よしっ、決めた」
そう言ってショシャナットの静止した指先が示した先には、チュチュが両脚をぐにゃりと曲げてへたり込んでいた。
「やめろ!」
気がつくと私は走り出していた。
精一杯、渾身の力を込めて地面を蹴る。
「だめだ、やめろ、ショシャナット!」
だが、無情なショシャナットは片手を高く掲げると、その周りにナイフのような石を無数に出現させる。
「せめて一瞬で終わらせてあげるから」
ショシャナットとチュチュの距離はわずか三メートルほど。
駆け出した私とチュチュの距離はまだある。
「くっそ!」
防御のための盾を捨て、走る。
そして、飛び込んだ。
だが、
(くっそ、間に合わねぇ!!)
私とチュチュの距離は、明らかに遠く、ショシャナットの、魂のこもっていない石の瞳が鈍く光ったのが分かるだけだった。




