それこそどう責任を取ってくださるの!?
目下の都市は、カオスだった。
地下都市の地はたびたび波打つように揺れ、その波が市場の屋台をドミノ式に倒していく。
こんな逃げ場のない洞穴都市に閉じ込められての大災害。地震大国日本出身の私でも、パニクること間違いなしだ。
だがそこはケモノ族というべきか。持ち前の身体能力を個々に発揮して助け合う様子も見て取れた。
だが、長くはもたないだろう。
それに、この揺れの原因は間違い無くチュチュとショシャナット。
……私が止めなければ。
「リリス、あそこです!」
私を背中に乗せて飛ぶクジャトが真っ直ぐ向かったのは、れいの塔。
その時ちょうど、塔を中心に巨大な土柱が、まるで剣山のように生成された。
そしてその剣山を駆け上がるようにして更なる剣山をかわし、身を翻す水色の人影。
「見えた、チュチュだ!」
パワーブースターを履き、ショートソードを振りながら土柱に応戦するチュチュの姿が見えた。
そして、ショシャナットの姿も…
「ああクジャト!」
空を飛ぶ私たちと同じ高さで声をかけてきたのは、ショシャナットを見張っていたクジャナだ。
「 今報告しに行こうとしていたところなのよ。大変なの、突然チュチュが現れて、ショシャナットといきなり戦いを始めてしまったの! チュチュは“壊す”を連呼して凄い力で剣を振っているし、ショシャナットだって……私、魔法なんて見るの初めてでビックリ腰を抜かしてしまいましてよ! それと、シヴァは塔の入り口で震えてますわ。可哀想に、私が助けに行きたいところですけれど、戦闘が激しすぎて近寄れませんの。いったいどうしたら……」
まぁ、女の口の速さはこういう時には役立つな。クジャナは全部状況を瞬時に説明してくれた。余計な言葉も多いが、とりあえず状況は呑み込めた。
「クジャナとクジャトは避難してくれ。あとは私が責任を取る」
この騒動は私が与えたヒントでチュチュが暴走したもの。だとしたら私の監督不行届。責任は私にある。
「む、無茶ですわ! リリス、貴方の玉のような肌に傷でもついたらそれこそどう責任を取ってくださるの!?」
「知るかそんなの! いいから、お前らはちゃんと逃げるんだぞ!」
私は冒険者カードから愛用の“黒焦げの盾”を取り出す。
「ここまでありがとな、クジャナ、クジャト。逃げ遅れんじゃねぇぞ」
そして私は地面を蹴った。
進む事に砂煙が濃くなり、土の匂いが鼻をかすめる。
凸凹で走りにくくなった地面を足の裏に感じ、私は真っ直ぐとシヴァのもとへ走った。




