ショシャナットを殺す魔法だ!
全部思い出した。
ショシャナットがゴーレム人形ということも、ショシャナットに襲われたことも。
そして、私がチュチュに託した私の記憶。それは私がまだ男だった頃、親父から教わったこと。部屋でゲームばかりしていた頃に得たゴーレムの知識。──そこから導き出した、解読できていない魔法文字の続きと思われる文章。
ショシャナットとの戦闘の最中、わずかな時間で伝えた短い言葉を、チュチュはいったいどれだけ理解しただろうか?
「それから僕とクジャナは、ボロボロになって道で倒れているチュチュさんを拾い、ショシャナットがゴーレム人形である事を聞かされました。そして、自分にはリリスに託された使命があると言って何やら熱心に巻物を見続けています。さぁリリス、チュチュさんが待っています」
記憶を取り戻しながら、私は再びクジャト達の家に戻ってきた。
「チュチュさんは僕の部屋にいます。何やらずっと魔法文字解読文書とにらめっこをしていました。何でも、リリス。貴方に託されたことを成し遂げるためだとか言って随分熱心ですよ」
そして、ゴージャスなクジャナの部屋の前を通り過ぎ、クジャトの部屋の前までたどり着く。
そして、クジャトが扉を開くと、そこはクジャナの部屋とは打って変わって、シンプルな内装だった。
うん、やっぱり男の部屋は落ち着くな。
「んで、チュチュはどこだ?」
ほとんど何も無いと言っていいほどシンプルなクジャトの部屋。一目見れば、人っ子一人いないことは瞬時に見て取れる。
「あれ……? チュチュさん? そんなはずは……」
先に部屋主であるクジャトが中に入り、部屋中を見回す。
私もあとに続くが、やはりそこには誰もいない。
あるのは、机の上に大量に丸まった紙と、そしてその真ん中に残された一枚の書き置き。
私はそれを手に取り、クジャトが覗き込む。
「あいつぅ……!!」
思わず書き置きの紙をグシャっと握りつぶす。
「リリス、これは……?」
ことをうまく繋げられていないクジャトは首を傾げる。
「止めに行くぞクジャト!」
私はぐしゃぐしゃになった紙を机に叩きつけ、元来た道を引き返す。
「待ってくださいリリス! これには、なにが書いてあるのですか?」
クジャトが広げ直した書き置きには、あの魔法文字と同じ類の文字列が並ぶ。
「ショシャナットを殺す魔法だ!」
שלגית




