くっそ、あいつ足速っ!!
「い、イヤだ!!」
キィィィンと、シヴァの悲鳴にも似た叫びに、私は耳を塞いだ。
「ショシャナットのハカイ? 破壊って、壊すってことだよね!? ゴーレム人形さんだからそんな言い方してるみたいだけど、ショシャナットは生きてるんだよ! 壊すなんて言い方もしてほしくないし、殺したくもない!」
「落ち着けシヴァ!」
シヴァを正気に戻すため、強い口調で窘める。が、私は選択を誤ったらしい。
シヴァは一歩一歩後退り、私達から距離を置きはじめた。
「ボ……ボク、」
声が震えている。
「ショシャナットに、言ってくる……!」
ぱっ、とシヴァは私達に背を向けて、一目散にどこかへ駆け出した。
「待てシヴァ!」
今の内容をショシャナットに知られてはマズいというよりも、このままシヴァを放置してはいけないという気がしてならなかった。
魔法の暴走うんぬんではなく、もっと何か、私の中の道徳的要素が私にシヴァを引き止めろと警告していた。
「シヴァ!!」
早くシヴァを捕まえなければ。だが、シヴァと私達の距離は遠のくばかり。
くっそ、あいつ足速っ!!
確かシヴァの俊敏値って、私たち三人の中で一番高かったか?
このままじゃ、追いつけない!
「ふぎゃっ!!」
「あっ……」
シヴァは……筋力値が確か4だったシヴァは、自分の速さ分にかかる負荷を脚が支えきれず、崩れるようにして土煙をあげながら盛大に転んだ。
「……えっぐ……けほっ…ふぇっ………ふぇっ………」
そして、泣き出した。
ああー、余計に面倒なことになりそうだ。だがまぁ、取り敢えずは確保だな。
シヴァもあの様子じゃあ、しばらく動かないだろう。
ため息混じりにのそのそシヴァに歩み寄っていく途中、私より先にシヴァの傍らにたどり着き、手を差し伸べた幼女がいた。
「シヴァ、大丈夫?」
「………ふぇ?」
涙と土で、ドロドロになった顔を上げたシヴァ。その目の前には、屈んでシヴァの顔を心配そうな面持ちでのぞき込む、ショシャナットがいた。




