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百合ってロリって迷宮攻略!~女嫌いリリスの苦難~  作者: いおり
第三章 シャローム地下都市
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我々ハ、この子を愛シている。


昨日、私とチュチュとシヴァとサル爺は、魔法文字を解読し、音読しあっていた。


長い長い、無駄に長い文章の冒頭はざっとまとめると、ゴーレム人形とは土で作られた人形で、魔法によって命を吹き込まれているという一般的なゴーレム人形について。といった感じの内容だった。

それからようやく、このシャローム地下都市のゴーレム人形についてだが、それも前半は私たちが歴史博物館で得た知識と同じようなものだった。

しかし、後半からは新たな発見があった。


「“そしてこのゴーレム人形誕生ヲ祝福すべく、シャローム地下都市全土でこの子の誕生日を祝い、踊ることとス。ゴーレム人形に捧げる舞をシャロームの舞と名付け、この日をメーデーと呼び、平和に感謝ノ意を示す”」


へぇー。本来、シャロームの舞はゴーレム人形の誕生日プレゼントだったってわけか。

……そんな情報どうでもいいわ!!

もっと実用的な内容プリーズ!


「“ゴーレム人形の外観を記ス。コレは見事な出来栄えデ、類まれなる我が才能とセンスの結晶と言えよう”」


しかもこの文章を書いた冒険者というのは、随所随所に自画自賛を散りばめていて鬱陶しいったらありゃしない。


「“陶器の肌ハ強くモ愛らしい。乳白色の長い髪はミルキークォーツで出来ている。ヨッテ、この子は愛情に満ち溢レタ優しい子になるであろう”」


ミルキークォーツは石の名前だ。

月の性質を受容する働きのある石で、愛情面に良い影響をもたらす乳白色の石だ。


「“スモーキークォーツの瞳ハ、この子とシャローム地下都市の大地を繋ゲ、土地がこの子ノよき理解者と成るダロウ”」


茶色の瞳もちゃんと意味がある石を使って作られている。


「“レムリアンシードの角は、この子の役目を支えル。高い浄化力を持つコノ石は、吸い上げた悪人ドモの悪い気を消し去る。争いの根源デアル“負の感情”、“魔力”、“少しの記憶”デ、この子が苦しむことがガありませんように”」


シャロームの舞でゴーレム人形達の歴史を踊ったとき、私は正直言って、このゴーレム人形を作った冒険者たちはなんて残忍で非道な奴らなんだと思った。

辛い感情を全部、自分達の作ったゴーレム人形に押し付けていて、本当にサイコパスだと思った。

けど、ゴーレム人形の髪や瞳、角に込められた意味を一つ一つ知る毎に、この冒険者たちのゴーレム人形に対する愛情を感じずにはいられなかった。


「“我々ハ、この子を愛シている。だかラいつか、こんな悲しい役割が終わりマスようにト願いヲ込めて、スズランの花をこの子のシンボルマークとして髪に飾り、”」


スズランの花言葉は、幸せが帰る。幸福の再来。平穏。など、美しく希望に満ち溢れたお手本のような花言葉が挙げられる。

だが、この花言葉には裏の意味というのもあり、例えば平穏と言うのは、いつか必ず終わりが来るというコインの表と裏の、切り離せない枕詞のような意味が隠されている。


「“この子ノ名を、ショシャナットとスル”」


シャローム地下都市の平和を守るゴーレム人形。その正体は、乳白色の長い髪を持ち、ウシの姿をした幼女。──ショシャナットだったのだ。

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