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百合ってロリって迷宮攻略!~女嫌いリリスの苦難~  作者: いおり
第三章 シャローム地下都市
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そこでお前の出番ってわけだ。


翌日から私は、魔力バフとして間にシヴァを挟むことにした。

冒険者カードを見ると、私の魔力値は100が限界。これはつまり、私が持てる魔力量が100しかないことを表す。

対してチュチュの魔力値は7000と化け物級。わざわざ工事現場まで走って魔力を汲みに行ってもチュチュの70分の1しか汲めない。


だったらチュチュと工事現場に来て直接チュチュに魔力を注ぎ込めば一番いいかもしれねぇが、今チュチュは一人で歩けない。

私がいちいち背負ってたんじゃあ余計に効率が悪い。


「そこでお前の出番ってわけだ」


この問題を解決するために、シヴァを使うことにした。

シヴァの魔力量も流石はチュチュの姉妹というべきで、6900とモンスター級。

大容量の歩く魔力タンクだった。


「ね、ねぇ。ひとつ疑問に思ったんだけど聞いていい?」


「なんだ?」


「えっと、その、キミのドレインタッチは魔力元素を直接吸い取ってキミの中で魔力に変換しているんだよね?」


「ああそうだけど、それが?」


「けど、魔力元素はシャローム地下都市以外だったらどこにでもあるんでしょ? だったらキミはもう、魔力に困ることはないんじゃないかな?」


シヴァの考えは分かる。私もその可能性を考えたからな。だが、


「いや、それは違う」


「どうして?」


昨日、ドレインタッチで私の魔力を補給し、容量7000のチュチュに供給するというサイクルを無限ループしたかった私だったが、


「私の魔力を0から10まで溜めるのにおよそ半日かかった」


つまり、ドレインタッチで魔力元素から魔力をたった1溜めるのに約1時間弱かかるのだ。

これは実用的とは言い難い。


「昨日は二日分、私がレベル上げのために溜め込んだ魔力があった分と元々持ち合わせていた分があったから一気にチュチュに注げたが、いったんカラッポになっちまうと全然ダメ。とても文章を読むだけに足る『鑑定』が発動できなかった」


「そ、そっか。けど、それならボクに移したって効率は上がらないんじゃないかな?」


「だーかーらー、そこでお前出番って言ってるだろ?」


意味がわからないというように首を傾げるシヴァ。


「お前の木系統魔法に、『ヒール』ってのがあるだろ?」


「そっか。キミのドレインタッチとボクのヒールの両方から魔力を僕に集めるんだね」


「ちがう。人の話は最後まで聞け。それに、ヘルガーデンから戻ってきた時にお前のスキルについては水車小屋でいろいろ検証しただろ。

お前のヒールは、魔力や体力を対象物に渡すという私のドレインタッチ逆バージョンと違って、お前の魔力を使って対象物の治癒能力を劇的に上げる魔法だっただろ?」


回復系の魔法が欲しかった私達は、やっと手に入ったシヴァの回復系魔法、ヒールを徹底的に使いこなすためにシャローム地下都市に来る前、色々と試していた。

そこで分かったのが、ヒールの仕組みは、いわゆる自己免疫力や自然治癒力を高めることで体力と魔力を回復させているというものだった。


「つまり、今お前に渡した魔力はチュチュに使うためじゃなくて、私のドレインタッチのサイクルを高速化するために使うんだ」


「そっか。キミのドレインタッチはノロマだから、ボクのヒールで急がせるんだね!」


誰がノロマだコラァ。

と言うのは口に出したら“病み”が発動するかもしれねぇからグッと抑えた。


「けどやっぱり、キミは魔力に困ることは無くなるんじゃないかな? だって、ボクが高速化してあげればさっきキミが言った、時間がかかりすぎるっていう問題も解決するもん」


それももちろん、思いついた。だが、


「これはまだシャローム地下都市の外で実験してみねぇとハッキリしねぇが、やっぱり無理だと思う」


「どうして?」


「魔力元素の吹き出し口には、高濃度の魔力元素が次々に吹き出してきてるな。それは魔術道具で魔力元素を集めているからだ。普通の空中には数パーセントしか魔力元素は含まれていねぇだろうから、いくら作業を高速化したところで、周りに材料が少ないんじゃあ意味がない。だからこの方法はこのシャローム地下都市の工事現場限定の方法ってわけだ」


シャローム地下都市の工事現場、もっと狭くいえばこの吹き出し口の魔力元素は高濃度だから私の考えたドレインタッチ逆バージョンの高速化作戦が成立する。

通常の空気では魔力元素が薄すぎるのだ。


「そっか。なかなか上手くはいかないね」


「世の中そんなもんだ。さ、理屈はわかったところでサッサと私にヒールを発動させてくれ。詠唱は覚えているか?」


「うん。あれだけ冒険者ギルドでキミに叩き込まれれば忘れたくても忘れられないよ」


魔法のいくつかには、詠唱が公式化されたものがある。

公式化された詠唱を正しく唱えることで、魔法の発動が最も効率よく、正しく、安定的に発動できるのだ。

シヴァみてえな魔力コントロールがなって無い奴には、しっかりと詠唱を叩き込んでおく必要があった。

ヒールで魔法が暴走されたんじゃたまったもんじゃないからな。

ヒール系の魔法はポピュラーな魔法だから研究が進んでおり、詠唱もしっかり公式化されていて助かった。


「んじゃ、始めるぜ」


まずは私のドレインタッチ。吹き出し口の魔力元素を吸い取る。


「“彼のもつもの 分かちたまえ 吸収せよ 彼のものは我のもの”」


そこにシヴァのヒールで、魔力元素から魔力に変換するフローを高速化する。


「“巡るブラッド、エムザイムスエムザイムス、漲るフォース、トリート、ブースト、ヒール、ヒール……”」


一言一言、噛み締めるように詠唱を唱えるシヴァ。その度、私の中の体温が少し上がり、細胞内が活性化するような感じがした。


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