ミズタマ戦希望
騙された騙された騙された!
あんなボーッとした貧弱女にこの私が騙されたなんて……!
今、私は追い詰められている。
目の前には、いつレーザービームを発射してもおかしくない、白く光り輝く巨体ミズタマ。
背後には崖の壁。
そしてその崖の壁をおよそ350メートル見上げると、悠々と私に手を振るチュチュ。
一生の不覚。
女の指図で崖下まで巨体ミズタマを誘い込んでしまい、私自身が追い詰められているなんて。
そしてその指図した女は高みの見物とはな。
ははっ、
ここからじゃ遠くてよく見えないが、チュチュは巨体ミズタマの特大レーザービームに焼かれる私を見下してほくそ笑んでいることだろうよ。
……あぁ私、また死ぬのか。
今度はレーザービームで焼かれるとか痛いんだろうな。
目は瞑っておく方がいいんだろうか?
息は吸いながら?吐きながら?それとも止める?
手の位置は?足の開き方は?体の向きは?
レーザービームだからな、私のちっぽけな体なんて跡形も無く消え去ってしまうんだろうな……
そう思うと、みぞおち辺りがヒヤッと嫌な感じがした。
「いや……だ」
口をついて出てしまっていた。
死ぬのは、いやだ。
1度声にしてしまうと、歯止めが効かない。
いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!
「いやだ!私は、死にたくねぇぇぇえええーーー!」
最後の空、青い、どこまでも澄み切った地球外の空。
その空に向かって、改めて私の“生きたい”という気持ちを轟かせる。
空が私の声の波動に波打った気がした。
青い空、空が青いのはもう見られないかもしれない。
最後の空になるかもしれない。
私の青い青いまっさらな空は、ちっぽけな私の、この願いを吸い込んでいき、そして
……不思議なことが起きた。
青いまっさらな空の1点に、私の叫びが収束し、白く輝いた。
まるで、私の堅い願いが空に突き刺さり、小さな穴を開けたかのように。




