そもそもゴーレム人形とハ、……
私がチュチュを背負ってやって来たのは、れいの塔に彫られた魔法文字の前。
「よし、チュチュ。やってくれ」
階段に腰掛けたチュチュは、私の指示で魔法文字をロックオン。スキルレベル7で、雷系統の魔法『鑑定』を発動させる。
チュチュの、湖面のような瞳に浮かび上がるようにして魔法文字が映し出される。
「で、読めたか?」
私の狙いはコレだった。
チュチュの『鑑定』は、その名の通りありとあらゆるものを鑑定し、発動者に鑑定対象物の情報を与える。
つまり今回、『鑑定』を翻訳機として使おうってことだ。
チュチュの鑑定も雷系統の魔法。つまり魔力が必要なので、私のドレインタッチ逆バージョンは、その魔力をこの壁画の前まで運び、チュチュに渡すために必要だったのだ。
だけど、『鑑定』の効果範囲は私もチュチュも、今ひとつ把握しきれていない。
魔法文字の羅列に対して、それを“ただの魔法文字の羅列”と取られるだけに終わるのか、意味を成す“言葉の羅列”として翻訳できるのか、そこが最大の不安要素だった。
「ど、どうなんだ?」
もしここで私の読みが外れ、翻訳が上手くいかなかったら、また振り出しだ。
無口なチュチュの作り出す、微妙な間が私の不安を掻き立てる。
「情報取得。言語レベル調整。結果、解読可能」
「おおお!! やったやった、でかしたぞ! これでゴーレム人形について知ることが出来る。 それで、なんて書いてあるんだ?」
「『ココに示スは、我々の制作したゴーレム人形ノ概要、作成過程、搭載機能、プログラムについてデアル。そもそもゴーレム人形とハ、……』」
チュチュの言葉が止まった。
「ん? どした?」
「リリス、魔力切れた」
私たちがシャローム地下都市に来るまで満タンだった魔力は、魔力元素が吸い取られるのに少し影響を受けているのか、日に日に減っていた。
シャローム地下都市に来てから数日たって、魔力を生成できないとなると体内の魔力は減る一方。
もしかしたら、魔力をとどめておく力は、体力値や筋力値に比例するかもしれない。
そう考えれば、魔力モンスターであるチュチュが魔力切れを起こすのも大いに頷ける。
「んなっ! ま、まて。今チャージしてくるから大人しくそこで待ってろ」
そしてさっそく魔力切れを起こしてしまった。私は魔力の補給をするため、再び最果ての工事現場へと走る。
けど、こんなペースで魔力切れを起こされたんじゃあ時間がかかりすぎだ。次の課題は翻訳作業の効率化だな。なにか対策をしなくては。
その対策を考えながら、今日のところは普通に私が魔力を供給し、その間チュチュはサル爺さんと喋って仲良くなっていたそうな。




