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百合ってロリって迷宮攻略!~女嫌いリリスの苦難~  作者: いおり
第三章 シャローム地下都市
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ただの通りすがりの余所者だ。


 心はどのようにして強くなるのだろうか。

 砂漠の真ん中で生きる植物は、千切れるような砂嵐に襲われ、干からびるほどの日照りに苛まれ、土の中の、僅かに残された栄養分を必死で探し続ける。

 そうまでして、生きる意味がどうしてこの植物にはあるのだろうか?

 そうまでして、生きる価値がこの植物にあるのだろうか?


 砂漠の真ん中で何十年、ヘタしたら何百年に一度だけ、その植物は、乾いた心を癒やすそれはそれは美しい花を咲かせるのだという。

 この美しい花を咲かせた時、それだけできっとこの植物は、生きててよかったと思うのだろう。


 そしてそれは、心だって同じ。

 自分の置かれた運命の逆境に悩み、己の孤独さ儚さを恨み、無情に生み出される醜い感情を隠す何かを求めてもがき続ける。

 そんなもの無ければいいのに。

 そんな苦しいものは捨てて、楽に生きればいいのに。

 けれど、悩んだ先にしかない未来があるとしたなら?

 孤独に打ち勝ち、儚い命を全うして得られるものがあるとしたなら?

 誰にだって醜いところは沢山ある。

 怒りや恨みは、誰かを傷つけるためだけにあるんじゃない。

 怒りや憎しみは、何かを守り、貫き、強くなるために使えばいい。それらを上手く使って咲き誇る心の花は、強くて美しいものだから。


 「ケモノ族、私は英雄なんかじゃない。ユリ•リリスだ。ただの通りすがりの余所者だ。けどな、余所者だから分かる。感情の一部を捨てたお前たちは気持ち悪い! 怒りたいなら怒れ! 恨みたいなら恨め! 私は怒ってはいけません、恨んではいけませんなんて言わねぇ。そんなの絶対無理だからだ。怒り、恨み、憎しみ、悲しみを乗り越えて心は育つんだ。お前らもそろそろ成長しやがれ!」


 こんなロリっ子が偉そうに何言っちゃってんだか。

 それこそ、負の感情のいい的じゃねぇか。ま、それもこれもケモノ族が私の願いを叶えてくれるかどうかによるのだけれど。


 「いいよ!」


 ………?


 「みんなでリリスの願いを叶えよう!」


 「ゴーレム人形を解放しよう!」


 観客たちの中からそう言う声が聞こえた。


 「俺も、今日初めて怒りを感じたけれど、そのおかげでリリスさん達に協力できて、楽しかった!」


 リスくんが叫んだ。


 「けど、少し怖いかな……」


 そういう声も聞こえた。そこにカラパが、


 「あたしら踊り子は、怒りや恨みだって表現してきたんだ。全くの未知じゃない。なにも恐れることはない」


 「そうだ、自分の感情を取り戻しに行くだけだ。何も恐れることはない!」


 そして、本当に、ほんっとーに気のいいケモノ族はみんな私の願いを叶えることに賛同してくれた。


 「みんな……ありがとうな!」


 一体感に包まれた祭りの会場は、みんな心優しい種を持ったやつらばかりだ。


 「よーし、そうと決まったらゴーレム人形を解放しに行くぞー!」


 オー! と、ケモノ族が私を中心に感情を取り戻す狼煙をあげたその時、


 「待って!」


 舞台に上がり、震えながらもよく響く甲高い声で待ったをかけたのは、私達の案内人、乳白色の団子ヘアに鈴蘭の髪飾りを揺らしたケモノ族、ショシャナットだった。


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