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ミズタマ戦裏切り


 「甘かった。

 あいつの力量を考慮に入れていなかった……」


 私達の作戦はシンプルだった。

 幸運が著しく低い私が囮となり巨体ミズタマの注意を引き付け、その隙にチュチュが遠隔攻撃をしかける。


 こんなシンプルな作戦に、こんな落とし穴があったなんて……


 チュチュの仕掛ける攻撃は、金属チェーンに雷魔法『ショック(1)』を流し込み、巨大ミズタマの水部分に投げ込むこと。

 それにより、巨大ミズタマと距離を置ける。

 そのメリットは2つ。

 1つは、ミズタマにチュチュの接近を気づかれず、レーザービームによる反撃を免れられる。

 もう1つは、魔法元素を乱した直後の大爆発からも距離を置けるという事。あれだけの巨体ミズタマの大爆発に巻き込まれたらただじゃ済まないからな。

 そうった面でチュチュの雷魔法を金属チェーンで伝導させるメリットがある。

 むしろその必要があるとも言える。

 

 そうしてミズタマの水部分に電気を流すことで広範囲的に魔法元素を乱すことが可能と考えたのだが、心配は初心者スキルの弱小スキルが通用するかだけだった。

 だけだったはずが……


 「どーすんだよ!

 そもそも金属チェーンを投げ込めるだけの筋力が無いとか、攻撃が決まるかどうか以前の問題じゃねーか!

 くっそやっぱ女は使えねぇ!

 ってか今はそんなことこより、潰されるぅ〜!」


 作戦が破綻し、混乱する私は死物狂いで巨体ミズタマから逃げ惑うしかなかった。


 (落ち着け私、考えるんだ。

 まだ何があるはずだ。

 この魔法元素の塊に私たちの魔法を叩き込む手段が!)


 「リリス!」


 そう呼ぶ声に振り向くと、金属チェーンを片手に掛け、チュチュは先ほど私がふっ飛ばされた崖下の砂浜を指差している。

 そして私に頷くと、金属チェーンを引きずりながら崖の上へと続く坂を駆け足で上りだした。


 (あいつ馬鹿か?

 どう考えても金属チェーンの長さが足りねえだろ?)


 おそらく、チュチュが伝えたいことはこうだ。

 金属チェーンを引きずる筋力がある自分には、金属チェーンを崖から突き落とすだけの筋力はある。

 だから私に巨体ミズタマを崖下まで誘い込んでくれと。


 だが、それにはどう見たって金属チェーンの長さが足りない。

 チェーンを継ぎ足そうにも、もうチェーンは見当たらなかった。

 いったい何を考えているんだ?


 「チュチュ!やめろ、無理だって!

 崖下まで誘き寄せるってことは、私の逃げ道も塞がれるってことだ!

 私を無駄死にさせるつもりかぁ!」


 私の声は絶対に聞こえているはずだが、チュチュは足を止めない。

 ジャラジャラと金属チェーンを肩に担ぎ、時折あしを滑らせながらも坂を上っていく。


 「くっそ……どうなっても知らねぇからな!」


 覚悟を決めた私は、90度方向転換。

 私に差し迫る巨体ミズタマを、あの崖下まで誘き寄せる。


 巨体ミズタマの特大レーザービームに当てられ、半分ほど崩れた崖を見上げると、高さおよそ350メートル。

 えっと、確かスカイツリーの展望デッキがそのくらいの高さだった気が。

 


 崖の壁に追い込まれた形となった私は立ち止まるしかない。

 振り返ると、顔の無い巨体ミズタマが私をどうもてあそぼうかと怪しげな笑みでも浮かべているような感じがした。


 こっからどうすりゃいいんだよ!


 見上げた崖っぷちにチュチュが私に手を振っている。

 一体全体、どういうことだ?


 そんなことを考える間もなく、巨体ミズタマが白く光りだしたのが嫌でも目に入った。


 やばい!もう、本当にダメだ!

 逃げ場がない!

 ……はっ!もしかして、チュチュは何か作戦があるようなフリをして実は私を始末しようとしているだけなのでは……?

 くっそ!

 やっぱり、女なんて信用するんじゃなかった!

 私はハメられたんだ、あのずる賢いペテン師に!

 

 「恨むぞぉぉお!ちゅちゅぅぅぅうううーーー!」


 罠にはめられたという怒り、後悔、屈辱、恐怖……

 震える声で私は崖上の悪魔に最後の雄叫びをあげた。


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