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百合ってロリって迷宮攻略!~女嫌いリリスの苦難~  作者: いおり
第三章 シャローム地下都市
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誰がロリっ子だァ!!!


 「はいっ、はいっ、はいっ、はいっ、はいそこでターン!」


 街の広場で私とショシャナットは踊り狂っていた。

 いや、断じて狂ってはない。


 「リリス、テンポが狂ってるよ。それと、もっと情熱的に!」


 体躯を激しく動かし、それから足を高く掲げる。

 ピッと両腕を水平に広げ、飛び上がり着地。

 クルッとターンして誘うように指を撓らせる。


 「いいよリリス、その調子。もっと激しく、荒々しく、エキゾチックに!」


 どこぞの熱血トレーナーのように声を張るショシャナット。

 ショシャナットが私に教える踊りは情熱的で闘志に満ち溢れる感じの踊りだ。



 そんな激しい運動を続け、私もショシャナットもクタクタになった。


 「いいね、リリス。前よりずっと良くなってるよ。初めはどうなることかと思ったけど」


 「当たり前だ。私を見くびるんじゃねぇよ」


 けれど、確かに踊り初めの私の動きは見るに耐えなかったと思う。

 自分でやっていても、これじゃあまるで動き出したカカシみたいだとかよく分かんねぇことを思うほど歪な動きだった。


 幸い、踊りは女の踊りの中でもマシな方で、つまり私が嫌いな女みてぇなクネクネした動きが少ないものだった。


 「これなら優勝も夢じゃないね。けど、今年は強敵がいるからな……」

 

 「強敵?」


 「そ。今回一番の優勝候補だって言われているペアがいて、大会委員会の委員長の孫、今回初出場なんだけど、姉弟だから息もぴったりだって噂されてるクジャクペアなの……って、噂をすれば影が射す」


 疲れて腕も上がらないショシャナットが顎で指した先に、キャーキャーとケモノ族が数人集まっていた。

 そして、その中心には噂のと思われるクジャクペアが優雅に歩いていた。


 確かに大人気スターだ。

 注目を浴びるにふさわしい華がある。その大きな要因がオスのあの見事な羽だ。あれはきらびやかな装飾が見栄えしそうだし、踊りにも活かせそうだ。


 けどなんだかなぁ。取り巻きをこれみよがしに引き連れて、お高く止まっている感じが気にいらねぇな。


 そんなことを思っていると、クジャクペアがショシャナットに気がついた。


 「おや? これはこれは、えーっと、どちらさまでしたかな? 毎年お祖父様の大会に出ているとはおもうのですが、あまりに華が無いから印象に残っていなくて」


 「当たり前よ。こんなチンチクリン、覚える価値もないわ」


 お高く止まっているように見えただけでなく、本当にお高く止まっていた。つーか、性格悪っ!


 「あたしの名前はショシャナット。覚える価値もないのなら別に声をかけてくれなくても良かったのに」


 おっ、珍しくイイぞショシャナット。

 クジャクの女は眉をひそめ、歯噛みしている。


 「まぁ、毎年出場する割にまんねん第二位ばっかりなんだけどねぇ〜」


 ガクッ!


 そう言ってケラケラ笑うショシャナットに、私は思わずつんのめり、クジャクペアはニンマリとした。


 「ええそうね。そして今年も貴方は良くて第二位でしょうね。なぜなら私達クジャクペアが初出場にして今年の王者になるからよ」


 「さすが噂のクジャクペア! 優勝宣言だなんて、意気込みがちがうね!」


 「………」


 ショシャナットの、なんというか、空気がズレた受け答えに沈黙するクジャクペアと私。

 こいつ、マジで平和ボケも甚だしいな。


 「けど、今年はあたし達も優勝狙いだよ」


 「私“たち”?」


 化粧の濃いメスクジャクが、つけまつ毛と思われるバサバサしたものを重たそうに動かすと、そのタイミングでショシャナットは私と肩を組んだ。って、


 「ギャーーー!」


 「そっ」


 「やめろぉぉぉぉぉ!」


 「この子があたしのペア、リリス!」


 「汗クセェ! 汚い! 離れろぉぉぉ!」


 ガッチリ組まれた肩を引き剥がそうと奮闘する。相変わらずの馬鹿力。

 ショシャナットは私をクジャクペアに見せつけるようにグイっと腕を上げ、私の顔を上に向けさせる。

 そんな対象的な私達を前に、クジャクペアは呆れて言葉も無いと言った様子だ。そして、


 「……プッ」


 吹いた。つか、私が笑われた気がする。


 「アハハハ! こーんな可愛らしいロリっ子がペアなんて、チンチクリンの貴方にはお似合いですこと!」


 「まったくだ! でもこれじゃあ歴史ある大会がお遊戯会になってしまうよ」


 笑い転げるクジャクペア。周りの取り巻きもクスクス私達を嘲笑う。


 「だ……」


 キンキンと頭に響く笑い声。

 それだけでもじゅうぶんアタマにくるが、それよりも私にはどうしたって聞き逃しちゃならない蔑称があった。


 「誰がロリっ子だァ!!!」


 ロリっ子。それは私を最低のところまで愚弄する、最低最悪な形容詞だった。

 残念なことに間違ってないのだが、言われると余計アタマにくる。


 「誰って、リリス以外いなくない?」


 「黙れバカナット! お前はこっち側だろーが!」


 「リリス! あたしの名前はショシャナット! 長い間生きてきてバカナットなんて呼ばれたのは生まれて初めて!」


 長い間って、お前も私とそんなに見た目変わんねぇ、それこそロリっ子じゃねぇか。

 それに、わかっているとは思うが私はわざとショシャナットの頭をバカに置き換えただけだからな? まさかそこまでバカナットじゃあるまいな?


 「そんなことよりだ」


 私はビシッとクジャクペアを真っ直ぐ指差し、


 「私はお前たちを許さねぇ。よって、大会ではみてろよ。お前らをコテンパンに打ち負かしてギャフンと言わせ、私達が優勝する!」


 ギリギリとケモノのように牙を剥き出し、今にも食ってかかりそうな鋭い目つきでそう言い終えると……


 あれ。なんだか怒りがスッと消えていく。


 「そうか。ゴーレム人形が私の怒りを吸い取ったのか」


 不思議な感覚に少々困惑していると今度は、なんで私はこんな敵を作るようなことを言っちまったんだという気持ちに苛まれた。

 だが、後悔先に立たず。


 「ま、このクジャクペアに勝負を挑もうだなんてロリっ子ちゃんには百年早いけど、今後のロリっ子ちゃんの教育のために受けて立ってあげましょう」


 「そうだね。大人の世界のことを何も知らないロリっ子ちゃんに現実を教えてさしあげましょう」

 

 ……いや、後悔なんか後にも先にも一切しねぇ。決めた。私はこのムカつくクジャクペアを必ず大会で打ち負かしてやる!


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