占って進ぜよう。
相変わらず無駄に高い塔。
そして昼間に見ると余計にしわクチャの顔が目立つサル爺さん。
「こんにちは、爺さん。ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「ワシは知っていること以外言わざる。ゆえ、お主はワシの知らぬことを聞かざるべし」
「ショシャナットの事だよ。爺さん仲いいんだろ?」
むむ? っと、片眉を上げて重い瞼を開ける爺さん。
反応があるし、聞いていいよな?
「爺さんがショシャナットについて知っていることを教えてほしいんだ。カーテン屋の店主に聞いたら、爺さんがよくショシャナットと話しているところを見るって言ってたからよ」
「ふむ。確かにワシはあの子とよく話す。なぜならあの子はよくこの上に上るからである」
「え? ショシャナットがこの塔をよく上るだって?」
「同じことを言わざるべし」
「けど、私がこの塔の階段を上って天辺まであと少しって時にこの階段、急に平らになって上れたもんじゃなかったぜ? 下にいたチュチュも巻き込んで転がっちまって、危ない階段じゃねえか。それこそ行かざるべしって言えってんだ」
三十分も長い長い大きな段差を気が狂いそうなほど上り続け、あと少しという所で落とされたことを思い出して今さらながら腹が立ってきた。
もうこんな無駄な階段、二度と上らねえ。
「だがショシャナットは上る。ほぼ毎日のように上る。夜になるとやって来て、ワシと少し世間話をした後、意気揚々と上る。そして朝方まで下りて来ん」
夜に上って、朝まで下りてこないということは、ショシャナットはこの塔の天辺までたどり着けているということだ。
けどどうして? 私がいけないのか? それとも、ショシャナットが特別なのか?
「それで、爺さんはこの塔の天辺まで上れるのか?」
「ワシは足腰が弱いゆえ上らざるべし。しかし、若い頃はよく上った。頂上には、それはそれは……はて? どんなゴーレム人形が祀られておったかのぉ?」
ガクッ。っと体を傾けたくなるオチだった。
まぁ、爺さんだし、昔の記憶が曖昧になるのも仕方ねぇか。
「一度ワシの孫にも見せてやりたいと思うのじゃが、どういうわけか半年前からこの塔に上らなくなってしまったと観光者から聞く。ゆえ、ここ最近ではショシャナット以外にこの塔へ足を運ぶ者はいなくなってしまったと言うわけだ」
半年前──それは私達にとっては重大なキーワードだった。
「ありがとな、爺さん。おかげで色々と気になることが出てきた。私はそれを調べに行く」
階段の段差に腰掛けているサル爺さんの隣から立ち上がり、別れようとしたときだ。
「待ちなさい、冒険者よ」
サル爺さんが私を引き止めた。
「ワシは占いが趣味での。ちょいとお主の調べモノとやらを占って進ぜよう」
占い師と聞いて、なるほど。なかなか雰囲気が出ている。
私は素直に占ってもらうことにした。
爺さんは階段に置いていた壺を前に置き、続いてガラガラ蛇の笛を取り出した。
「サラマンダブラアダブラカタブラアブラブラブラ〜」
──ビィ〜ピョロロロロロ〜……♪
「フォォァッ!!!」
アラブの蛇使いがやるソレのようなメロディーを奏でると、壺の中に頭を突っ込んだ。
だ、大丈夫だろうか……?
暫くして、爺さんが壺を被ったまま頭を上げた。
「※☆えた¶♯∋Ⅶし⑬いは♂……」
「はいはいはい、爺さん。頼むから壺を外してから喋ってくれ」
と、私が爺さんの頭から壺を引っこ抜く。
「プハッ!」
息苦しかったのかよ! ゼェゼェ言ってるじゃねぇか。マジで大丈夫かよ。
「お主、一週間後の祭りの日に踊るな?」
想定外の言葉に、驚いた。
私はこの爺さんに、祭りの日にショシャナットに誘われ、優勝賞品目当てで踊りの大会に出ることを言ってはいない。
「その日に何か手掛かりが掴める。必ず優勝するべし。さもなくば、チャンスは二度と訪れぬ」
「………」
ま、まさかな。まさかまさか、たかが占いだ。
女が何故か好き好む、なんの根拠も信用も無い占いだ。
魔法の力があれば、少しは信じたかもしれないが、このシャローム地下都市では魔法が使えない。
こんな占い、ハッタリだ。
じゃあ何で私はこんなにも焦っている?
「分かったよ爺さん。ありがとな」
「うむ。健闘を祈る」
そして私はサル爺さんと別れた。
なぜだか無性に踊りの練習をしなければならないという使命感に駆られながら、もう宿へ戻ったであろうショシャナットを探して、宿へもどった。
ちょっとだけ気合の入れたイラスト描きました!
近々挿絵として載せるのでお楽しみにしててくださると嬉しいです♪
見るだけ見たいという方は本日のtweetに公開してありますのでご覧ください♪
https://twitter.com/cPd3MIrvIF3iM9D/status/933362147559555072




