ミズタマ戦失敗
まだか?
何をやっているんだ、チュチュ!
私の魔力はマックスで100。
ただでさえ少なめだというのに、「温度操作(1)」を連発しまくって底を突きかけている。
その証拠に、「温度操作(1)」を発動させる毎にその威力は弱くなり、頭痛までしてきやがった。
(チュチュは何してる?
ミズタマに金属チェーン投げ込んでスキル発動させるだけだろーが!)
巨体ミズタマの特大レーザービームをかわしながらでは、チュチュに目を配る余裕はない。
余裕はないのだが、そうも言っていられない。
「うわっ!」
近づき過ぎるとこれだ。
巨体ミズタマがゴロゴロと回転を加速し、私を踏みつぶそうとしてくる。
そしてここぞとばかりに私を追い回す。
「チュチュ!何やってんだ、早く投げろって!私が死んでしまうぅぅっ!」
その時、巨体ミズタマから必死で逃げる私の目の片隅に、ちょうどチュチュが金属チェーンを投げ込もうと構える姿が映った。
(よしっ!完璧なタイミング。今だ!!)
そしてチュチュが巨体ミズタマめがけて振りかぶった時、私は巨体ミズタマの大爆発に備えて、海へ飛び込んだ。
1、2、3、4、5、6……
……ん?
爆発、しない?
──ザバババババァァァァッ
「っぷは!」
私が水面へ浮上すると、目の前には巨体ミズタマが、漫画の世界でなら“ゴゴゴゴゴッ”と描かれていそうな出で立ちで迫っていた。
「やっべ……」
なぜ爆発しない?
チュチュがしくじったか?
いや、今はそんなことより目の前の巨体ミズタマだ。
私は慌てて海からあがる。
海だとうまく動けないからな。
向こうに有利なフィールドは避けるべきだ。
海に『ショック(1)』を流し込むという手も考えたが、海は面積が広すぎて、電流が上手くミズタマに流れない可能性がある。
もし失敗してミズタマに警戒をされれば次はもう無いだろう。
だから細くて電流が流れやすい金属チェーンで『ショック(1)』を直接叩き込むはずなのだが……
「まじかよ……」
再びチュチュに視線を移した私の目に飛び込んできた光景は、私の頭を抱えさせた。
「そーだよな、アイツ金属チェーン引きずってたわ……」
はじめ海の家で金属チェーンを持ってきたチュチュは、腕を曲げることもかなわず、ただチェーンの端を握りしめて私に渡してきた。
それもそのはず。
チュチュの筋力値は5。
重たい金属製のジャラジャラしたチェーンなど、真っ直ぐ投げ込めるはずは無い。
私の目に映ったのは、金属チェーンを投げ込もうとしているのか、チェーンと戯れているのか見紛うチュチュの姿、
砂浜にチェーン跡で絵を描くだけで奮闘している下着姿のチュチュだった。




