えっとね、ちょっと生々しかった。
宿へ到着し、部屋に入った私達。
部屋は質素だが200コレイなら十分すぎるくらいの広さと設備だ。
問題なのは、布団が一枚しかねぇことだな。
「リリス、シヴァを寝かすから布団を広げてくれる?」
部屋の隅に畳まれた布団一式の前に立つ、シヴァを背負ったままのショシャナット。
「あぁ、分かった」
布団を引きずり、まずは壁から離すと敷布団を広げ、掛け布団も広げようとした時、
「きゃっ!」
「え?」
ぼふっ、と畳まれたままの掛け布団に顔を突っ込んだ。
何が起こった?
身を捻り、息ができるまで上を向くと、シヴァを背負ったままのショシャナットが私の上に重なっていた。
「いっ!?」
「あはは、ごめーん。掛け布団を掛ける前にシヴァを寝かそうとしたら足を取られちゃった」
「……いいから早くどけ。流石に二人は重い……」
変な体勢で上を向いてしまったから胸が苦しくて上手く力が入らねぇ。
つーか、マジでどけ。
「……ねぇリリス」
「どけ」
「このままもう少し乗っててもいい?」
「やだ。どけ」
「もう少し、もう少しだけじっとしてて? ダメ?」
「ダメ。どけ。重い」
私とショシャナットの胸と胸が合さって伝わってくるショシャナットの鼓動。
よくよく感じてみると、ショシャナットの鼓動がだんだんと加速してきた。
「はぁ………はぁ………はぁ………」
さすがにシヴァを担いだからか、ショシャナットの息が切れている。えっ、さっきまで息、切れてなかったよな? なんで今更?
「えっ……?」
ふとショシャナットの顔を見ると、熱い吐息を吐く口からタラリとヨダレが垂れかけ、目は少し充血していた。
私の本能が警鐘を鳴らしていた。
な、なんかヤバイ!!
「ちょっ、ショシャナットまじでどけ! お前なんかヤバイ! 目がヤバイ! ヨダレ、ヨダレ垂れるぅぅぅ!!」
ジタバタした甲斐あって、なんとかショシャナットの下から這い出した私。
マジなんなんだ。ショシャナットに触れていた部分が汗ばむくらい熱くなって蒸れた。
「ちょい! いきなりなんだよ? どうしたんだよお前」
私が這い出しても尚、息を荒らげるショシャナット。
その蕩けるような目は上に重なるシヴァに向けられていた。
「どうしたのリリ……ス?」
トイレに行っていたチュチュが部屋に戻ってくると、ショシャナットとシヴァのなんだかヤバイ絵面が出来上がっていて、それを見たチュチュは言葉を失った。
「はぁ………はぁ………んんっ、あっ………」
眠るシヴァ。その下でハアハアしながら一人うつ伏せで身悶えるショシャナット。
その周りだけ、空気と世界が違って見えた。
「チュチュ、何となくだが私はシヴァをショシャナットから剥がす。その方がいいと思うんだがお前は?」
「……リリスがそう思うならチュチュもそう思う」
意見一致で私はショシャナットからシヴァを剥した。
とてつもなく緊急事態な気がしたから女に自ら触りに行くという愚行もとりあえずは良しとした。
シヴァの脇の下に両腕を回しているだけなので、端から見ると姪っ子が大きな人形を抱えているように見えるかもしれn………甥っ子が大きな人形を抱えているように見えるかもしれない。
「ん……んん?」
シヴァが目を覚ました。
「あれ、ボク寝てた? えっと、ここは? ……わわっ!?」
目を覚したからシヴァをショシャナットの上に放り投げた。起きたんだからあとは自分でなんとかしろ。
「えっと……」
シヴァは動かないながらもヤバイ感じのショシャナットから距離を取った。
うん。正しい判断だと思う。コイツも野生の本能が強いタイプだからな。
そしてチュチュの後ろに隠れてようやく体を起こすショシャナットを警戒する。
「えっと、ボク達どうなってたの?」
恐る恐るチュチュに尋ねるシヴァ。
チュチュも何かを感じたのか、表情こそ崩さなかったが少しためらってそれから、
「えっとね、ちょっと生々しかった」
意味ありげな言い方で事実を告げた。
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